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なぜ、一般投稿の「踊ってみた」「歌ってみた」が容認されるのか?

YouTube「Content ID」 非権利者の動画投稿を裏で支える技術とは

2019年07月24日 17時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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YouTubeの「Content ID」とはなにか

 Content IDとはなにか。鬼頭氏は次のように答える。「著作物を検出し、正しく権利者がその利用をコントロールするための仕組みです」

 YouTubeは他の映像配信や音楽配信とは違う存在だ。一般的な配信ビジネスは、著作権者が自らアップロードした権利をクリアーしたコンテンツだけを扱っているが、YouTubeはそうではないからだ。仕組み的には、消費者も自由に映像をアップロードできる。

 その中にはミュージッククリップなどもあれば、「歌ってみた」「演奏してみた」「MADビデオ」のようなUGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)も含まれる。

 過去には、そのようなコンテンツは一律に「著作権違反コンテンツ」であり、権利者にとって許されざるものだった。だが、YouTubeが巨大な存在になり、消費者にとっても欠かせない存在になった。単純な排除は難しく、権利者に理解を得た上でいかに収益化を進めるかが重要になった。

 そこで登場したのが「Content ID」である。この技術はアメリカでは2005年に、日本でも2007年に導入され、すでに10年以上に渡って利用されている。

Content IDで使う「フィンガープリント」の説明。動画を分析し、映像・音楽から特徴点の情報を抽出する。それが「フィンガープリント」だ

 Content IDは、YouTubeにアップロードされた映像が「権利者の著作物を含むのか」を判断するために使われている。映像や楽曲の特徴的な部分(通称、フィンガープリント)を判別し、フィンガープリントが「登録済みの映像・楽曲と一致するか」という点から、アップロードされた映像や音楽が「本来は誰が権利を持つものか」を判断する。

 Content IDがマッチして「コンテンツの権利者」がわかるとどうなるか? 基本的には3つの選択がある。

  1. ブロック
  2. トラック
  3. マネタイズ

 一つ目は「ブロック」。権利者の意向として、動画の公開を止めるものだ。

 二つ目は「トラック」。動画の公開は止めない上に、その動画がどこで見られているのか、いつ見られているのか、といったアナリティクス情報を権利者が見られるようにする。「主にマーケティングに動画を利用したい、という権利者が選ぶものです。あるアニメ会社では、特定の国でのUGC動画の盛り上がりをチェックし、そこからビジネス戦略を作る、という例がありました」と鬼頭氏は実例を挙げる。

 そして三つ目が「マネタイズ」。その動画から生まれる収益を、動画のアップロード者ではなく権利者に渡す仕組みだ。

 このパターンのもっとも有名な例は、2016年に大ヒットした、ピコ太郎の「PPAP」だろう。公式以外にも大量の関連動画がアップロードされたが、それらのほとんどはContent IDで処理され、YouTube上で生まれた収益が、権利者であるピコ太郎氏に、マネジメント会社であるエイベックスを通じて支払われた。「PPAP」での収益の多くは、このContent IDによるものだった、と言われている。

 ここでいう収益とは、一般的な広告収益だけを指すわけではない。「YouTube Music Premium」などの有料サービスから生まれた収益も、同様に還元される。ピコ太郎の成功とYouTube Musicの登場により、「権利者の方々の見方は変わってきた」と鬼頭氏は言う。

 「音楽業界も、3年から5年くらい前までは、ほぼ『ブロック』を選択しておられました。しかし、ピコ太郎の成功から、『活用していくべき』という風に見方が変わりました。もうひとつ大きな転換点となったのはYouTube Musicのスタートです。このタイミングから、音楽業界の皆様も『収益化をしない理由はない』と、確実に考え方が変わってきています」

 結果として我々は、「これは違法なものではないか」「アーティストに収益が渡らないのではないか」とビクビクすることなく、YouTubeで音楽を楽しめるようになっている。

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