■私立と公立で違いはあるの?
来年からの新学習指導要領実施のため、2018年度は「移行期間」として学校ごとに新しい学習指導要領に沿った取り組みをはじめています。もちろん、プログラミング教育もそのひとつです。ただし、移行期間から始めた学校と、すでに何年も前からプログラミング教育を取り入れている学校では、進め方や内容が大きく異なっているのも事実です。
●私立小学校の場合
私立では独自の教科書を作るなど、その学校ならではの工夫をこらした授業をしている学校が多いのが特徴です。そのため、プログラミング教育については、学校によって大きく差があり、まったく取り入れていない学校がある一方、先進的な取り組みをどんどん行っている学校も多数あります。
たとえば、東京の私立日本女子大学附属豊明小学校はコンピュータを早くから導入し、「情報科」という授業を設置しています。1年生から1年間で10時間情報科の時間を設け、コンピュータの操作やリテラシーを学び、6年間でプログラミングやプレゼンまでをするという一貫した教育をしています。

日本女子大学附属豊明小学校の2年生「情報科」の授業。iPadで授業支援アプリ『ロイロノート』を使い、児童がロボットとなり、「前に○マス進む」「右を向く」といった命令を組み合わせてマップを進んでいきます。最後に、アルゴリズムに関する絵本の読み聞かせを行うことで、楽しく学びながら、アルゴリズムの考え方を身に着けていくことができます。
●公立小学校の場合
公立の小学校は、私立のように独自の教材や教科を使わず、自治体の教育委員会のもとに足並みをそろえています。だからといってプログラミング教育を実践していないわけではなく、中には授業時間をやりくりして、プログラミングの授業を実施していたり、全学年で意欲的にプログラミングを取り入れたりしている小学校もたくさんあります。
また、近年では都道府県や区市町村単位で取り組む自治体も増えています。東京都の渋谷区では、区立の全小・中学校に1人1台のWindows端末を貸与しています。
アスキーキッズで紹介した石川県加賀市は、全国に先駆けて小学校でのプログラミング授業をしたりロボット大会を開催したりするなど、自治体をあげて取り組んでいます。

東京都府中市立府中第三小学校の図工の授業。ビジュアルプログラミング言語『ビスケット』を使い、子どもたちにプロジェクションマッピングを体験させました。図工専科の山内佑輔教諭は「プログラミング教材を活用し教科の目当てを達成するとともに、プログラミングって楽しいと感じてもらうことを目指しています」と話しています。
また、地元の企業と連携し、工場見学などを通じてものの仕組みを学ぶといった、地域ならではの授業をしている学校もあります。

渋谷区の小学校に導入された富士通のWindowsタブレット「ARROWS Tab Q507/PE」。ドコモの回線が入ったキャリア版で、夏休みなどに自宅へ持ち帰った際、ネット環境のない家庭でも利用できます。
このように、公立でもプログラミング教育に熱心に取り組んでいる学校はあります。逆に私立だからといって必ずしもプログラミング教育が進んでいるわけではありません。第1回でも述べたように、学校としての取り組み、さらには中心になって取り組んでいる先生によって、その内容は大きく異なります。

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第1回
アスキーキッズ
プログラミング教育とは? 誤解だらけの「必修化」 - この連載の一覧へ