世界的なスマートフォン不況、それに追い打ちをかけて米中の貿易戦争の影響が出始めているのだろうか? サムスンが7月初めに発表した2019年第2四半期の業績の暫定値は苦しい内情をうかがわせるものとなった。スマートフォン側では次のトレンドを切り開く折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」の予定も気になるところだ。
営業利益が56%減 最大の要因は半導体の供給過剰と値下がり
サムスンが7月5日に発表した第2四半期(2019年4~6月期)のガイダンスによると、合計の売上高は56兆ウォン(約5兆1500億円)、営業利益は6兆5000億ウォン(約6000億円)とのこと。前年同期は売上高が58兆4800億ウォン、営業利益が14兆8700億ウォンだったので、それぞれ約4%、約56%のマイナスとなる。
サムスンは半導体とディスプレーパネルを含むデバイスソリューション部門、IT&モバイルコミュニケーション部門、コンシューマーエレクトロニクス部門を持つが、ガイダンスでは内訳は明らかにしていない。
だが、苦しい業績の大きな要因が半導体だとする見方が多い。ファーウェイをはじめとした中国企業への半導体輸出が影響を受けており、供給過多の状況を招いている。これが価格の低下に繋がっており、inSpectrum Techによると32GBのDRAMサーバーモジュールの価格は、前四半期と比較して19.3%も下がっているとのこと。DRAMの価格低下はさらに今四半期、最大で15%の下げも予想されているとのことだ(Bloombergが報道)。今後は半導体材料の輸出規制強化も影響が加わるかも知れない。
なお、Bloombergが「ある顧客」による1回限りの支払いとして最大8億ドル相当の売り上げがあるという予想を出している(https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-07-04/samsung-beats-estimates-as-its-chips-prove-resilient-to-downturn)。「ある顧客」がどこかは明記していないものの、ここで考えられるのがライバルのアップルだ。サムスンはアップルに有機ELパネルを供給しているが、iPhoneの売り上げが振るわない結果、発注量が約束の数に到達せず、違約金が発生しているという憶測が生まれている。
スマホのシェアは3四半期ぶりに20%台に復活
サムスンのスマートフォンの動向はどうなのか
そのサムスンだが、実は第1四半期(1~3月期)の業績は悪くなかった。同期にスマートフォンの売り上げが前年を上回るという好業績を発表しているが、その最大の要因は「Galaxy S10」だ。10万円近くする高収益の価格帯に入る機種がよく売れたことが数字につながったようだ。実際にシェアも上向き傾向で、Counterportによるデータでは(https://www.counterpointresearch.com/global-smartphone-share/)、2018年Q3からQ4と10%台にまで下がったシェアが、久々に回復している。
2019年Q1決算時にサムスンは次の四半期について慎重な見方を示しながらも、今年後半には「Galaxy A」や「Galaxy Note」などのシリーズの新機種が売り上げに貢献するとの見方を示している。
なお、スマートフォンにおいては、トランプ大統領が進めるファーウェイ叩きの恩恵を受けるようにも見えるが、持ちつ持たれつのスマートフォンの複雑なサプライチェーンにより、ライバルのアップルもファーウェイもデバイスの供給では重要な顧客なのだ。そのファーウェイのスマートフォンのシェアだが、先のCounterpointのデータでは2018年Q1から11%、15%、14%、15%と徐々にシェアを増やしており、2019年Q1は17%、サムスンとの差を4ポイントにまで縮めている。
そのファーウェイが米中貿易戦争を”教訓“に、デバイスやOSの強化を進めることは、エコシステムのバランスをさらに偏らせることになるかもしれない。
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