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Build/de:code 2019 総括座談会 ~AzureのMR、IoT、AI、ブロックチェーン~

クラウドはコモディティ化へ、技術屋は「クラウドを使う人を支える側」へ回ろう

2019年07月09日 13時00分更新

文● 阿久津良和 編集●羽野/TECH.ASCII.jp 写真●曾根田元

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よりビジネス向けになったCognitive Services

ASCII羽野:Cognitive ServicesからはBuild前後で「Anomaly Detector」「Personalizer」「Form Recognizer」「Ink Recognizer」などの新しいサービスが発表されました。このサービスラインナップの拡張にはどのような背景があるのでしょうか。

Cognitive ServicesのForm Recognizer

MS大森:実はCognitive Servicesが登場してまだ3年しか経っていません。Azureの歴史でみるとそれほど長く使われてきたサービスではないです。2015年に”Project Oxford”という名称で、Face、Vision (現在の Computer Vision)、Speech (音声認識)、Language Understanding Intelligent Service (自然言語処理、現在の Language Understanding) の4つからサービスから始まり、コカ・コーラのガラスボトル誕生100周年キャンペーンサイト、および年齢認識サイト「How-Old.net」でバズって話題になりました。その後、Vision、Speech、Language、Knowledge、Searchの5ジャンルで計20~30種類までサービスを増やしていき、コンテナ対応をしたのが去年2018年(関連記事)です。

2019年は“ビジネスシナリオをサービスに統合していきましょう”という年ですね。データの加工などの手間を省ける、ビジネスですぐに使えるサービスを揃えてきました。例えば、異常検知サービスのAnomaly Detectorはセンサーデータなどをそのまま投入するだけで、すぐ異常値を検出するようになっていて、これまでのデータ加工などの手間を省けます。また、画像解析サービスの一つである Form Recognizer には OCRから一歩進んだ機能が搭載されています。例えば、レシートから購入履歴を読み取るシステムを作ろうと思ったとき、これまではOCRで読み取った画像から、解析した数字とその印字場所の意味を紐付けする必要がありましたが、Form Recognizer ではそれを自動化できます。

そういう意味では、Azure Machine Learning StudioやAzure Data Science VMなどの他のAI/機械学習サービスはより精度を追求するAIの開発向けに、Cognitive Servicesはビジネス向けにと別れてきた気がします。

FIXER鈴木:精度99%を追求すると手間もコストもかかります。Cognitive Servicesは精度90%とか95%のAIがすぐに使える。ビジネスで使うことを考えたときのちょうどよいバランスを追求しています。

MS廣瀬:Anomaly DetectorもPersonalizerも、ゼロから自分で作ろうとすると非常に面倒ですね。それをサービスにWeb APIで投げるだけで済むのがすごいんです。

MS大森:実際に、Form Recognizerなどが登場して色々な方面からの問い合わせが増えました。ビジネスでAIの利用に関心を持つ間口が広がったのだと思います。ですので、あらためてAIの基本的なことや限界を伝えていかなければいけない時期かなと。ビジネスの現場でもAIが一般的になってきて、AIはなんでもできる、賢い、自分で勉強する、といった誤解も生じています。何ができるテクノロジーなのか、どのように利用するのが適切なのか、ユーザーが見極めていけるように情報発信をしていきたいと考えています。

「Cognitive Servicesの2019年は“ビジネスシナリオをサービスに統合していきましょう”という年」

姿を現したAzureブロックチェーン

ASCII羽野:次はブロックチェーンのお話をお願いします。

MS廣瀬:2015年にAzureからBlockchain as a Services(BaaS)が発表されて、「なんのこっちゃ」というのが始まりでした。当時のBaaSはパートナーと組んでブロックチェーンのテンプレート集を大量生産するという段階でしたが、大々的に発表されて世に出てしまうと、お客さんから問い合わせがくるわけですよ。サービス開発状況の把握に努めつつ、国内ではPoC(概念実証)したいというお客さん先へ平野と一緒に行っていました。

 ブロックチェーンがAzureの具体的なプロダクトとして登場したのが昨年2018年夏ごろ。それまでの3年間はあるようなないような曖昧な感じでしたが、初めて、ファーストパーティーのサービスとして「Blockchain WorkBench」をリリースしました。そして今年のBuildで「Azure Blockchain Service」をお披露目できました。

日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 テクノロジーソリューションプロフェッショナル 廣瀬一海氏(デプロイ王子)

ASCII羽野:Azureのブロックチェーンに関しては、毎年要素技術や構想がバラバラに発表されてきました。2015年にBaaSが発表され、2016年にコンソーシアムブロックチェーン構想「Bletchely」が発表され、2017年には「Coco Framework」というものが発表されています(関連記事)。これらはAzure Blockchain Serviceに集約された感じでしょうか?

MS廣瀬:Bletchelyは多数のノードを持つコンソーシアムブロックチェーンネットワークを素早くデプロイする構想でした。そしてCoco FrameworkはBletchelyのパーツの1つです。BletchelyはAzure Blockchain Serviceを構成するコンポーネントの1つとして製品に組み込まれています。

Bletchelyの各パーツは、Azureだけでなく他のパブリックやコンソーシアムのブロックチェーンで利用できるんですよ。例えば、Bletchelyのパーツとして、イーサリアムにコントラクトを投入するLogic Appsのコネクタが提供されていますが、パブリック向けのコネクタが先にリリースされて、あとからAzureのコンソーシアムブロックチェーン向けのコネクタが出ました。

FIXER鈴木:コンソーシアム型のブロックチェーンには、官公庁を含めて可能性を感じている組織が多いですね。

MS廣瀬:組織間でガバナンスを効かせて取引できるのがコンソーシアムブロックチェーンの一番の魅力です。Buildで発表されたスターバックスのトレーサビリティはよい事例です(関連ブログ)。日本の食品は安全なんですよ。今日飲んだ牛乳に何か混入しているとか、ちゃんと冷蔵された状態で運ばれてきたのか、あまり心配することがない。でも海外ではそうではないので、コンソーシアムブロックチェーンは海外で先行する傾向が強いです。

de:code 2019でのAzure Blockchain Serviceのデモ

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