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FIXER鈴木章太郎氏・MS平野和順氏・さとうなおき氏が語る、2019年のAzureの現在地

Azure 9周年鼎談!Azureは「第3形態」に入った

2019年02月08日 14時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 パブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」がGA(一般提供)してから、2019年2月で9周年を迎えた。WindowsベースのPaaSを中心とした「Windows Azure」としてスタートしたAzureは、9年間、絶え間なく進化を続けてきた。その間、パブリッククラウドは確固たる市場を形成し、多くの企業システムがクラウド化へ向かおうとしている。2019年、Azureはどのような段階にあり、どのような進化の過程にいるのか。

 今回は、「2019年 Azure 9周年鼎談」と題して、GA前から10年以上にわたってAzureに関わってきたFIXER エバンジェリスト 鈴木章太郎氏、日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 部長 平野和順氏、日本マイクロソフト パートナー事業本部 Azureテクノロジスト 佐藤直生氏の3人に、「Azureのこれまでと2019年の現在地」を語ってもらった。

 鈴木氏、平野氏、佐藤氏の3人は、もともと日本マイクロソフトのエバンジェリストチームの同僚であり、国内でのAzureの普及を黎明期から支えてきたメンバーだ。現在も、鈴木氏はAzure専業クラウドインテグレーターFIXERのエバンジェリストとして、平野氏はAzureの技術営業チームを統括するリーダーとして、佐藤氏はAzureテクノロジストとして、それぞれAzure界の第一線にいる。

左から、日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 部長 平野和順氏、FIXER エバンジェリスト 鈴木章太郎氏、日本マイクロソフト パートナー事業本部 Azureテクノロジスト 佐藤直生氏

サティア・ナデラではなくスコット・ガスリーがAzureを変えた

平野さん:この3人がそろったら、まずは昔話からですね。2008年にAzureが初披露されてからもう10年以上がたちました。GAした2010年当時、WindowsベースのPaaS(Azure Cloud Services)を中心として市場に出たAzureはデベロッパー向けの“特殊な”プラットフォームで、主にWindowsでパッケージを作っていたISVパートナーが使うものでした。「弥生会計」の弥生様、「勘定奉行」のOBC(オービックビジネスコンサルタント)様には、この頃からAzureを使ってもらっています。

その後、2012年にIaaS(Azure Virtual Machines)が登場し、2014年2月には東日本、西日本リージョンがGAして、それ以降、国内でもインフラとしてのAzureの利用が広まっていくようになりました。現在は、IaaSからよりを戻して、再びPaaSのマネージドサービスがAzureの本流になってきました。サーバーレスアプリケーション実行基盤の「Azure Functions」や、コンテナープラットフォームの「Azure Kubernetes Service (AKS)」などが加わり、今のAzureのPaaSはGA時のPaaSとはまったく違うものになりました。

9年を振り返って、GA時のWindowsベースのPaaSをAzureの第1世代、IaaSが加わった2012年以降をAzureの第2世代、そしてAzure Functionsやコンテナープラットフォームが利用できる今のAzureは第3世代に入ってきたと私は感じています。

2019年のAzureは「第3世代」に入った

鈴木さん:まさに今は第3世代ですね。平野さんの言う第2世代、つまり2012年にIaaSが出たころからAzureへのユーザーの期待値が変わり始めたという感覚があります。2014年に日本リージョンができて、その上にOracleやSAP HANAなどの他社製品がのるようになったのは、当時は衝撃でした。

一方で、Azureが一貫して変わらないのは、デベロッパー向けのツールがある点だと思います。Visual Studioファミリーなどのコードエディタからすべての機能が触れるクラウドは他にありません。

開発ツールから全機能をさわれるクラウドはAzure以外にない

平野さん:マイクロソフト自体やマイクロソフト製品は“サティア・ナデラのCEO就任を機に変わった”と言われますが、Azureにとっては、2014年にスコット・ガスリーが統括するようになったのが大きな転機でしたね。ガスリーがトップになってから、マイクロソフト全体がクラウドファースト、Azureファーストになりました。

そして、ガスリーはもともと.NETの開発チーム出身。彼の決断がすぐにAzureに反映されるようになって、.NET Coreがオープンソース化され、.NET Coreで開発したものがLinuxベースのAzure PaaS(Azure App Service on Linuxなど)にデプロイできるようになりました。Visual StudioやVisual Studio CodeからAzureのすべての機能が使えるというのも、彼の思いがあるのでしょうね。

ライトコーダーが牽引してきたAzure、これからはエンプラ開発者が使う

佐藤さん:私がマイクロソフトにジョインしたのは2010年9月でした。Javaやミドルウェア製品のエバンジェリスト、エンジニアとして働いていたオラクルからの転職です。Azureチームに加わった私の初仕事は、WindowsベースのPaaS(Azure Cloud Services)でGlassFish(Java EEアプリケーションサーバー)を動かすというもの。

AzureがIaaSでLinuxのサポートを開始したのは2012年で、この頃からオープンソースの言語やテクノロジーのサポートが強化されるようになっていきましたが、私のようなJavaエンジニアが在籍していたことからもわかるように、2010年当時からAzureは.NETに閉じるつもりはなかったようです。がっちりとしたエンタープライズ向けのシステムをLinux環境のJavaで開発してきたようなデベロッパーにも使ってほしいと考えていたのだと思います。

Azureは2010年当時からLinuxやJavaを意識していた

平野さん:10年前に、当時マイクロソフトのチーフソフトウェアアーキテクト(CSA)だったレイ・オジーがサービスメッシュのアーキテクチャの話をしていたりしたから、Azureはかなりシステム開発の未来をみていたと思う。

今のAzureは誰でも使えるクラウドになって、Azureのユーザーには、エンタープライズ向けにがっちりとJavaを書いてきたデベロッパーもいれば、PHPなどでライトにWebアプリを書いてきたデベロッパーもいます。ただ、この10年を振り返ると、Azureに限らずパブリッククラウドの普及を牽引してきたのは後者のライトコーダーだった。だからAzureは、Azure App Service(Webアプリケーションのホスティング)やAzure Cognitive Services(画像認識などのAI機能を利用できるAPIサービス)など、ライトなデベロッパーが簡単に使えるようなサービスを拡充してきました。

佐藤さん:そのような中で、今、エンタープライズシステムの開発のやり方が、Web開発のようなアジャイルなやり方に変わってきました。Web系のライトコーダー向けに拡充されてきたマネージドのアプリ開発環境やデータベースサービス、AI APIなどが、これからはエンタープライズのシステム開発にも使われていくようになると思います。

鈴木さん:オンプレミスのシステムをIaaSへのせたら思いのほか費用がかかってしまって、結局オンプレミスへ戻したり、あるいは運用負荷の低いPaaSのマネージドサービスへ移行したりする例が増えてきました。

Azureは誰でも使えるクラウドになった一方で、テクノロジーは複雑化しているので、今後はAzureを正しくつかうためのアーキテクチャを考えることや、投資として適切かを判断することが重要になってきます。Azureのスペシャリストの需要はこれからますます増えていくでしょうね。

その関連で、今注目なのはAngular、React・Redux、Vue.jsのようなSPA(Single Page Application)ですね。これとサーバーレスとの連携は、マイクロサービスでアプリ構築した場合の一つのドメインロジックとして今後非常に注目です。

佐藤さん:コンテナーやサーバーレス、自動化など、よりクラウドをクラウドらしく使っていくためのサービスが使いやすい形でそろってきましたしね。

平野さん:特にコンテナーは、デベロッパー(Dev)とインフラ系エンジニア(Ops)の双方にメリットがあるテクノロジー。コンテナーによって、クラウドテクノロジーが“DevOpsによるCI/CD”という経営の言葉に変換されます。日本のエンタープライズ企業は、システムを内製化していかないと、環境の変化に追従できるスピード感をもった経営ができません。多くの経営者はこの課題意識をもっていますので、内製化とDevOpsによる経営のスピードアップという文脈がとても響く。2019年は国内エンタープライズの経営層を“DevOps”の言葉でくどきつつ、Azureでムーブメントを起こしていきたいですね。

いま一度、「サーバーレス」を定義しよう

ASCII羽野:今回の鼎談の中で何度か「サーバーレス」の単語が出てきました。ここでいうサーバーレスは、Azure FunctionsやAWS LambdaのようなサーバーレスアーキテクチャのFaaS(関数サービス)を指していましたが、Azure以外のクラウドでは、PaaSのようなマネージドサービスを「サーバーレス」と呼んだりしますね。

佐藤さん:狭義にはサーバーレスはFaaSのことなんですが、広義にはサーバーリソース(CPUやメモリを備えたVMインスタンス)が抽象化されて見えないようなマネージドサービスもサーバーレスと呼ばれるようになってきました。

ASCII羽野:AWSやGCPでの定義なのかと思っていたら、Azureでも、2018年12月に開催された「Microsoft Connect 2018」でスコット・ガスリーがACI(Azure Container Instances)を指して「サーバーレス」と言っていました。新サイト「クラウドboost」がスタートするにあたり、このサイトでは「サーバーレス」をどの意味で使うかはっきりさせておきたいなと。

平野さん:うーん、公式見解ではなくてあくまで「平野ルール(2019年版)」なのだけど、今のところ、「サーバーレスといったらFaaS」、PaaSの中でも特にサーバーが抽象化されたサービスは「マネージドサービス」と呼ぶこととします。

ASCII羽野:それでは、新サイト「クラウドboost」では平野ルール(2019年版)に則り、今のところ、サーバーレスはFaaSの意味で記述し、広義のサーバーレスはマネージドサービスと記述することとします。