8K Labクリエイティブスタジオでは、8Kの映像制作を簡単に体験できる「8Kカメラの撮影エリア」、8K映像データを公衆インターネット回線経由で伝送させる「8K映像のIP伝送エリア」、8K映像の簡易編集を可能にする「8K映像の編集エリア」で構成。最新の8K関連機器や装置、アプリケーションを設置する。また、中央部に設置したテーブルを商談エリアとして活用する。
「8Kカメラの撮影エリア」には、シャープの8Kカムコーダー「8C-B60A」やアストロデザインのクロスコンバータ「SC8219」、ソシオネクストと共同開発中のエンコーダ、シャープが開発中のデコーダーなどを設置した撮影ブースで、屋内に設置された素材の撮影のほか、カムコーダーを移動させれば、屋外の風景も撮影可能となっている。8K Labクリエイティブスタジオの方向からは東京タワーや六本木ヒルズなど、都内の風景を撮影できる。撮影した映像は、圧縮処理や復元処理を経てライブ映像として8Kディスプレイに表示される。
「8K映像のIP伝送エリア」は、同社の堺事業所に設置されたクラウドサーバーと接続して、同サーバーに蓄積された8K映像を、公衆インターネット回線経由でストリーミング伝送するデモストレーションを体験できる。また、同社では、NTTドコモと5Gによる8K動画の伝送実験も行っており、この成果などもここで紹介することになる。
また、8K画像を4Kにダウンコンバートし、これをインターネット回線で伝送。再生時にはAIを活用して8Kにアップコンバードすることで、伝送する環境を最適化する一方で、高画質で再生できる同社独自の技術もデモストレーションできるようにしている。
「アップコンバートやダウンコンバートの技術や超解像度化技術、映像・静止画切り出し技術、定点観測技術などのAPIを提供することで、様々な配信サービスをクラウドサービスとして提供できる。こうしたシャープの強みも紹介できる」としている。
「8K映像の編集エリア」では、編集環境に加えて、編集した映像をその場でプレビューできる環境を用意。ブラックマジックの最新編集ユニット「Davinci Resolve 16」などを配置している。「ゲーム開発会社が若手エンジニアの育成のために、編集エリアを使わせてほしいといった声もある。学生に使ってもらうこともできる。簡易スタジオと簡易編集室により、8Kコンテンツを体験してもらったり、8Kコンテンツ制作に踏み出してもらう場にしたい」としている。
8K Labクリエイティブスタジオの機材は、貸し出しも可能であり、個別企業に持ち込んだ利用も行えるほか、奈良県天理と千葉県幕張の研究開発本部の拠点にも、8K Labクリエイティブスタジオのサテライト拠点を設置して、ここに機材を持ち込んだ作業なども可能になる。
8K Labを統括するシャープの吉田育弘ディレクターは、「8Kというと、高画質の放送が注目を集めるが、それ以外の用途も幅広い。8K Labクリエイティブスタジオは、放送以外の8Kの活用を模索する場になり、ソリューションという観点からの取り組みが中心になる」と説明。「たとえば、インフラ保守という領域では、建造物をいかに長い期間維持するかが課題であり、そのために重要なメンテナンスを高度化したり、効率化したりするニーズがある。トンネルのなかを8Kで撮影して、ひび割れを調べ、その情報をもとに、最適な保守を行うことができる。ここでは、8Kならではの解像度の高いカメラで動画を撮影することで、より精度の高い画像分析が可能になる。テレビの高画質放送というだけではなく、あらゆる用途での利用が可能で、この技術を課題解決の手段として社会実装することができる。8Kを核にしたソリューション提案を、様々な領域で行いたい」とする。
8K Labデザインスタジオは、先進的な8K関連の研究開発技術を、技術、装置、システムソリューションという観点から、テクノロジーサービスとして提供。パートナーとともに、新たな価値を世界に先駆けて事業化し、社会に実装していく場になるというわけだ。