シャープが介護施設支援ソリューションを提供開始
介護施設で課題となる「頭の健康」を維持するには?
2019年09月26日 12時00分更新
シャープが8月に提供を開始した、介護施設支援ソリューション「頭の健康管理サービス」は、施設利用者の「アセスメント」(興味・関心のチェック)から、個別の課題に応じた「訓練計画作成」「訓練結果の記録・管理・見える化」までを一貫して支援するサービスだ。
ユーザー個別の課題に応じた認知機能トレーニングをレコメンドしてくれる「日々のおすすめ訓練提示」機能も設ける。開発に携わったメンバーにインタビューし、開発の経緯と、サービスの狙いをきいた。
介護施設における認知機能トレーニングは大きな課題に
高齢者の認知機能の維持に向けたトレーニングは、デイサービスなどの介護施設にとって課題のひとつになっている。これまでも、有用とされているトレーニングを受けてもらったり、各施設で用意したメニューを利用してもらってきた事例があるそうだが、その準備は介護施設スタッフにとって大きな負担で、継続して受けてもらった実績を紙などに記録したり、データベース化して共有・フィードバックするといったところまで、ワンストップで利用できるサービスはなかった。「おそらく国内初になるのではないか」とシャープも話す。
シャープのビジュアルソリューション事業部で商品企画部長を務める村松佳浩氏は、国内における高齢化の進行が開発背景だとする。2015年の段階で、国内の65歳以上の人口は3393万人、そのうち介護サービスの利用者は450万人だった。しかし、2025年には介護サービスの利用者は604万人に増える見込み(※出展元は下図に記載)で、実に5人に1人が認知機能の課題を抱える社会が訪れることになる。
介護に関わる人材の確保が急務になる中、2018年4月には介護保険法が改正された。また、介護スタッフの基本報酬も減少傾向と言われており、慢性的な人材不足に歯止めがかからない側面もある。
村松 「不足する人的リソースの中で、トレーニングや記録を続けていくことは、介護施設スタッフにとっても大きな負担だ。均質で、記録まで含めて体系化されたサービスを提供することで、介護施設スタッフの作業量を削減し、業務効率化に貢献するのが狙い」
約7年間の取り組みをまとめたソリューション
シャープでは、2012年より日常生活を送るのに欠かせない脳の働きとされる「認知機能」に着目。自治体や高齢者団体と連携し、ICTを利活用した健康管理、介護予防に貢献するソリューションの開発や、フィールド実証を重ねてきた。
村松 「フィールド実証によって蓄積してきたデータと、クラウド型ソフトウェア開発力、タッチディスプレーやコントローラ等のIoT機器製品群、システムインテグレーション力、BtoBの販売網、サポート体制に加え、これまでの知見やリソースを生かして開発したソリューションが頭の健康管理サービスです」
また、ビジュアルソリューション事業部で、頭の健康管理サービスの開発を担当した佐田いち子氏は、以下のように補足する。
佐田 「これまでのフィールド実証を通じて、開発者自らが現場に入り込み、高齢者や介護施設スタッフが何を求めているのか、本当に使いやすいサービスは何かを、常に考えてきた成果と言えます。高齢者は、操作やトレーニングのどこでつまずき、何ができなくて先に進めないのか。高齢者との対話や、利用状況の観察で蓄積してきたデータに基づいて研究し続けてきたことが、今回のサービスに反映できていると思います。頭の健康管理サービスは、現場の声を取り込んだソリューションなのです」
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