■プログラミング教育のよくある誤解
筆者は仕事柄、保護者の方にプログラミング教育についての質問を受けることがありますが、「プログラミング教育について誤解している保護者が多い」と感じています。以下に、誤解の多い項目をあげてみました。
×プログラミングという教科ができる
「プログラミング」という教科が新しくできるのではなく、「算数」や「理科」「総合」といった教科の中に取り入れていきます。
×プログラミングの授業は決められた学年と教科だけで実施する
「教育指導要領」には、6年生理科、5年生算数、総合的な学習の時間でプログラミング教育をする例示があります。ただし、どんなプログミング教材を使うのか、また、それ以外の教科や学年において、どのようにプログラミング教育をするのかは学校にゆだねられています。
×プログラミングで成績がつくわけではない
あくまで、教科ごとの学習を助ける目的でプログラミングを活用しているため、プログラミング単体の成績がつくわけではありません。
△プログラミングは、ロボットなどを動かすものだ
ロボットを動かすのもプログラムですが、アプリや家電、日常にあるあらゆる機械はプログラミングによって動いています。
×小学校のプログラミング授業に備えて、プログラミング教室に行っておいたほうがよい
現在は多くの学校が試行錯誤でプログラミング教育を進めており、授業の方法はこれからも変化していくため、学校のプログラミング授業のためだけにプログラミング教室へ行く必要はありません。他の習い事と同様に、子どもがプログラミングに興味をもっているならば、ぜひ学ぶ機会を与えてあげてください。またプログラミングに関係なく、「論理的思考」を育てることは、子どもにとっての大きな武器となります。
△プログラミングをやるなら英語を覚えないといけない
現在、小学校で扱うプログラミング言語やアプリは、ほとんどが日本語化されています。ただし、英語のプログラミング言語もたくさんありますし、英語をおぼえることはむだにはなりません。
その中で確かに言えることは、小学校で始まるプログラミング教育は、ネットやAIなどが発展していく未来の社会で生き抜くための力を、子どもたちに身につけさせようとしているということです。そのためには保護者としても「知らない」「わからない」ではなく、自分事として理解を深め、家庭でも考えていってほしいと思います。
次回は、プログラミング教育をしている学校がどんな授業をしているのか、実例をいくつか紹介するとともに、どんなねらいがあるのかを解説していきます。学校の垣根を超えて研究を進めている公立の学校や、独自の工夫を凝らしている私立学校など、プログラミング教育の事例をご紹介します。
●第1回のまとめ
・プログラミングとは、コンピュータを動かすための命令であり、色々な言語がある
・小学校でのプログラミング教育の目的は、論理的思考を育てたり、コンピュータに親しんだり、教科の補助となるもので、プログラマーを育てるものではない
・子ども達が実際に受けるプログラミングの授業内容は、学校によって大きく異なる
筆者紹介──相川いずみ
教育ライター、編集者。プログラミング教育、ICT教育、中学受験などをテーマに、教育現場での取材・執筆を行う。現在、小学館『教育技術 小一・小二』にて「ゼロから始めるプログラミング教育」を連載。育児や家庭にICTを取り入れるデジタル育児に取り組み、地域の子ども達へ向けて、プログラミングのワークショップや講演会なども行っている。
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