CGレンダリングやデータマイニング、科学技術計算、研究開発向けにも使えそう
数は力だ! RTX 2080 Ti×2ハイエンドPC、対応ソフトでは倍のパワーに
2019年06月05日 09時00分更新
3Dゲームの画面を美しく、滑らかな動きで表示しようとすれば、CPUもビデオカードも高速なものが要求される。性能を突き詰めていくと1枚のビデオカードでは性能に満足できず、複数のビデオカードを使うSLIなどに憧れてしまうのではないだろうか。
ハイエンドビデオカードとなるGeForce RTX 2080シリーズを2枚搭載した「G-Master SLI-Z390-NVL」(関連記事)は、まさにそういった究極のゲーミングパソコンの1台だといえる。とはいえ、せっかく高価なビデオカードを2枚も搭載しているのに、ゲームだけにしか使わないのはもったいない。そこで、動画変換などで活用できないか探ってみた。
G-Master SLI-Z390-NVLのスペック | ||
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標準スペック | 試用機のスペック | |
CPU | Core i7-9700K(3.6GHz) | Core i7-8700K(3.7GHz) |
グラフィックス | GeForce RTX 2080×2 | GeForce RTX 2080 Ti×2 |
メモリー | 8GB | 64GB |
ストレージ | 512GB SSD | |
内蔵ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ | |
SLIブリッジ | MSI製 3SLOT SLI NVLINK BRIDGE | |
ケース | CoolerMaster CM690III+サイドパネルファン [UCTB12 900rpm] | |
電源 | Corsair RM850x (850W/80PLUS Gold) | Corsair RM1000x [1000W/80PLUS Gold] |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
※なお、BTOカスタマイズにて試用機のCore i7-8700K(3.7GHz)は選択できない
複数のビデオカードに対応するソフトは意外と少ない
いきなり厳しい現実から入るが、実はゲームのSLI対応と同様、複数のビデオカードに対応するソフトは意外と少ない。AdobeのPhotoshopやLightroomで試してみようと思ったのだが、公式のFAQを見ると、「2つのグラフィックカードを使用しても、Lightroomのパフォーマンスは改善されません」と明確に否定されていた。
では動画エンコードなどではどうかと探してみたのだが、ビデオカードに搭載されているGPUを活用するものはあるものの、複数に対応するものは見つけることができなかった。一例として、GPUを利用できる「TMPGEnc Video Mastering Works 7」の体験版をインストールして確かめてみたが、「使用CUDAデバイス」としてどちらか1枚だけを選択できるだけだった。
2枚は使えないものの、せっかくなので、CPU(Core i7-8700K)だけの場合とGPU(GeForce RTX 2080 Ti)を使った場合で動画変換速度が変わるか試してみよう。
使用した動画ファイルは、約2分50秒の4K動画(H.264/AVC 25fps 約18Mbps)。これをフルHD動画(H.264/AVC 25fps 約10Mbps)へと変換するのにかかった時間で比べてみたところ、CPUだけでは121秒かかっていたものが、GPUを利用することで106秒へと短縮されていた。フィルターなど重たくなる処理は入れていなかったのだが、それでも10%以上も時間が短縮されていたのがうれしい。
とはいえ、やはりビデオカードを2枚使った効果が見てみたいところだ。
対応ソフトであれば純粋に性能が2倍に!数は力だと実感
何かないかと探してみたところ、「LuxMark」というCGレンダリングを利用したベンチマークソフトが対応していることが分かったので、こちらを試してみることにしよう。このベンチマークソフトは使用するCPUやGPUを選んで実行できるため、今回はGeForce RTX 2080 Ti×1、GeForce RTX 2080 Ti×2、Core i7-8700Kの3つのパターンでスコアを測ってみた。
結果は見てのとおりで、ビデオカード2枚挿しの圧勝。純粋に演算性能が2倍となることもあり、スコアも約2倍にまで上昇していた。やはり、複数のビデオカードが使えるものであれば性能が出るのは間違いない。数が力だと実感する瞬間だ。
ちなみにCPUによる演算では、スコアは3409に過ぎなかった。GPUが得意とする用途では、文字通り桁違いの差だ。
研究開発で科学技術計算を行ないたい場合にゲーミングパソコンが強い!
一般用途でビデオカードのGPUを活用するのはなかなか難しいが、得意とする分野、例えばCGレンダリングやデータマイニング、科学技術計算などであればその強みが生かせる。個人はもちろん、企業や大学の研究室レベルで購入できる価格のゲーミングパソコンがこういった分野で活用できるのであれば、研究・開発用途で大きく貢献してくれるだろう。
市販のソフトでは活用が難しいビデオカードの2枚挿しでも、自分でソフトを作るのであれば話は別だ。本来のゲーミング用途として使うだけでなく、研究開発用途の小規模なスパコン代わりに使えるというのが面白い。こういった高性能パソコンを使いたい人にとって、G-Master SLI-Z390-NVLは数少ない選択肢となってくれる。