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スポーツビジネス最新トレンドを上野直彦氏に訊く 第1回

「スポーツビジネスは特別なビジネスではない」上野直彦氏が語る

2019年04月19日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ガチ鈴木/ASCII編集部 写真● 曽根田元

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――20年以上スポーツの現場を取材してきた立場から、現在のスポーツビジネスの状況をどう見ていますか?

 2013年に東京オリンピック・パラリンピックが決定して以来、「ゴールデン・スポーツイヤーズ(GSY)」としてもてはやされています。2019年がラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年が東京オリンピック・パラリンピック、そして2021年は関西ワールドマスターズゲームと、3つの大きなスポーツイベントが続きます。日本はもちろん、世界の歴史でもこの3大会が同一国で連続開催されたことはないと言われています。これがアジアで開かれるという時期的、地理的な点でも意味や意義があり、大変注目を集めています。

 そのような状況から、スポーツビジネスに関連したセミナーなどのイベントが盛況ですが、スポーツビジネスは基本的に他のビジネスと同じです。特別なことがあるとすれば、ステークホルダーが多いので調整能力が求められる点でしょうか。それを除けば、他の産業と何ら変わりません。

――スポーツビジネスの今をどう感じていますか?

 色々な産業がスポーツに新規参入したり、社内でスポーツビジネス事業を立ち上げようという動きが活発で、面白い時代になりました。同時に、女子レスリング、ボクシング、体操と不祥事もたくさん明らかになっています。これについては、五輪効果である種の”膿”が出てきているのだと思います。

 2002年の2002 FIFAワールドカップ日韓大会招致で中心人物だった広瀬一郎氏(故人)のスポーツ綜合研究所のスポーツマネージメントスクール(SMS)を私は受講していましたが、最後の授業が投資とリターンについてでした。現在、スポーツ業界に潤沢な資金が入りリターンが出ているか――まだでしょう。ある日本の著名投資家と話した時、日本には9大投資案件があると伺いましたがこの中にスポーツは入っていません。つまり、スポーツは注目を浴びてはいますが、まだ投資対象になっていないというのが現状です。

――投資対象になっていない理由は?

 市場規模が小さいからです。Jリーグとプロ野球を合わせても3000億円強、魅力的な投資対象とは言えません。1兆円を超えるぐらいの規模に育つ必要があります。

 その背景として、スポーツ側にビジネス人材が少ないという問題が挙げられます。Jリーグ主導で立ち上がった公益財団法人スポーツヒューマンキャピタルなど、内製で人材を育てようという動きがあり、実際に効果が出始めてはいますが、本格的にはこれからです。

 異業種で活躍したマネジメント人材が入れば、大きく変わるでしょう。個人的には、ファイナンス人材が必要だと感じています。金融や証券などのファイナンス業界で活躍した人がスポーツ業界に入ってきてほしい。そのためには、それに似合う年収を用意しなければなりません。

 注目しているのは、バスケットBリーグの千葉ジェッツの島田慎二さん、卓球Tリーグの琉球アスティーダの早川周作さんです。お二人とも異業種から入ってきて、得意分野を生かしながら戦略を作っています。島田さんの千葉ジェッツは、アリーナスポーツを大きく変えています。ハーフタイムがこんなに楽しい、試合前も試合後も楽しい、そして試合も面白い。バスケットに興味がない人でも楽しめる。そして、早川さんが沖縄でやっている取り組みも面白いです。スポーツビジネスを考えている人はぜひこの2チームの試合を見に行って欲しいですね。

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