「大会スポンサー以外」でも様々な粒度で購入可能
大規模スポーツイベントにおいて、スポンサーをつとめる企業がホスピタリティスペースを設け、大切な顧客や事業パートナーを招待する、あるいは商談相手との接待の場として活用する。そんな光景は容易に想像できるだろう。
たとえば世界中を転戦するフォーミュラワンでは、グランプリごとにチームがホスピタリティルームを設け、飲食だけでなくドライバーやチーム幹部とのコミュニケーション、ピットへの招待や他では購入できない特別なグッズで気分を盛り上げ、本番レースよりもずっと長い時間を「パドッククラブ」という特別な場所で過ごす。ワールドカップやオリンピックなども、もちろん、スポンサー向けに特別な事前事後パーティーが用意され、そのときにしか入手出来ないグッズなどが配布される。
スポーツホスピタリティ事業が定着している欧米では、人気プロスポーツのほとんどにホスピタリティスペースが設けられ、チームやリーグの重要な収益源になっている。
たとえば、英国ロンドン郊外にあるラグビー専用スタジアムのトゥイッケナム・スタジアムには、スイートルームが約200用意され、スタジアム内には高級ホテルまでが存在する。また、別のサッカー専用スタジアムではホスピタリティスペースは選手が入場するコンコースの「中」に設置されており、選手が入退場する場合、必ずホスピタリティ空間を通る仕掛けも設けられている。
2016年に開場した米ミネアポリスのUSバンク・スタジアムは6.5万人収容だが、2018年のスーパーボウルの際はそのうち2万人分はホスピタリティの顧客向け。スーパーボール開催時、もっとも安価な通常シートでもひとり2000ドル以上にまで跳ね上がる。さらに1000ドルを支払えば、近隣のコンベンションセンターを貸し切ったホスピタリティエリアにもアクセス可能となり、チアガールが闊歩したり演技を見せる中、食事や著名アーティストによるショータイムが行なわれる。
これらホスピタリティのチケットは個人が購入するほか、別途、商談などに利用したい場合はスイートルームを購入し、個室でゆっくりと話をしながら観戦するといった「部屋をまるまる貸し切る」企業向けプランもある。
大会スポンサーがホスピタリティを設けるのは当然だが、こうしたスイートルームは大会スポンサーとは別に部屋単位で販売されるため、部屋の内装や招待客へのお土産なども自社ロゴなどをあしらった特別なデザインに仕立てられる。個人富裕層から企業向け、しかも「ホスピタリティアクセスと条件の良い観戦席」といった組み合わせから、スイートルーム貸し切りまで、様々な粒度で「一般観戦チケット」とは別のビジネスが展開されている。
もちろん、日本でもボックス席での観戦チケット販売などは行なわれているが、言い換えれば、その領域に留まっている。