「ショールームではなく共創の場」、顧客とのビジョン共有や深い議論目指す「NEC Future Creation Hub」
NEC、顧客の「体感と対話」促すソリューション展示施設オープン
2019年02月05日 07時00分更新
NECは2019年2月4日、東京都港区の本社ビル1階にソリューション体験施設「NEC Future Creation Hub」を新設したことを発表した。社会課題を解決し、顧客と新たな社会価値を“共創”していく「社会ソリューション事業」の推進に向けた取り組みの一環で、顧客とのより深い議論や「次のアクション」を誘発するために、従来のショールームとは違ったコンセプトで運営していくという。
同日の記者説明会には、NEC 執行役員 兼 CMOの榎本亮氏や、Future Creation Hubのセンター長を務める野口圭氏が出席し、NECが考える共創の姿とそれに基づくFuture Creation Hubのコンセプト、具体的な施設紹介や従来施設との違い、そして今後への期待を語った。
「共創の主語は“We”」、ビジョンの共有や対話がコンセプトの新施設
Future Creation Hubは、NEC本社ビル1階にあるおよそ1800㎡のスペースを使い、顧客企業の来場者が複数ゾーンを“回遊”するようなかたちで体験できる施設だ。
NECでは2009年から品川で、ソリューションショールーム「NEC Innovation World」を運営してきた。Future Creation Hubはその後継施設だが、新たなコンセプトは「体感と対話で、新たなイノベーションを生む共創空間」であり、ソリューションの展示/紹介だけではない意味合いが込められている。榎本氏も野口氏も、Future Creation Hubは従来型のショールームとは一線を画する「共創の場」であることを繰り返し強調した。
Future Creation Hubでは、顧客とNECとの間で目指す未来像を共有する「未来×共感」、最先端テクノロジーとビジネスの融合を具体的シーンで体験する「体感×感動」、これからのデジタル社会について意見を交わし、次のアクションへとつなげる「対話×創造」という3つのテーマを掲げている。
榎本氏は、NECが共創について発するメッセージの「主語はすべて“We”」であり、そこにはNEC単独ではなく顧客/パートナーと共に新たな社会価値を創造していくというスタンスが表れていると説明する。今回のFuture Creation Hubにおいても、NEC側からの一方的な価値観やソリューションの提示ではなく、来場者との意見交換を通じて「より深い議論」が生まれる場となるよう設計しているという。
「年間来場者数は約8000人を見込んでいる。単に展示をお見せするだけならば人数はもっと増やせるが、われわれは少人数のパーティ(来場者)とより深い議論をしたいと考えている。そのために、あえてたくさんの来場者数を目標にはしないことに決めた」(榎本氏)
Future Creation Hubは完全予約制で運営される。1社あたり数時間のツアーとして、NECの事業部門や営業担当が顧客の事業戦略や事業課題に沿ったデモシナリオを用意し、コンテンツを提供してディスカッションを深めていくのが標準的なパターンになるという。「1日あたり最大で7組(7社)」程度の利用を想定する。
さらに榎本氏は「Hub」という名前に込められた意図についても説明した。顧客企業やNECの営業担当だけではなく、「より多様な人が集まり、何かを感じて議論を開始し、新しい価値を生み出す」ための、まさに“ハブ”を目指していると語った。
「本社なので、さまざまな役割のNEC社員が一堂に会しやすい。海外も含むあらゆる拠点間をつなぐこともできる。オープンイノベーションの拠点になるほか、価値観やソリューションに触れてもらうための社員内覧会も毎週実施していく」(榎本氏)
もっとも、NECの共創プログラムはFuture Creation Hubの施設内にとどまるものではなく、顧客の「現場」にも積極的に足を運ぶ。榎本氏は「社会ソリューションは机上で解決できるものではなく、現地、現物を確かめながらディスカッションをすることで初めて価値が生まれる」としつつ、同施設における共感と議論はそうした取り組みの「起点」になるのではないかと説明した。
考える余地、議論の余地がある展示デザイン
発表会ではプレス向けのデモツアーも行われた。センター長の野口氏は、施設の見どころとして「自然を意識した空間デザイン」「余白のある展示」という2点を挙げた。
「ひとつは『自然を意識した空間デザイン』。ここはショールームではなく共創の場であり、主役はお客様。エントランスや会議室はお客様がリラックスして議論に集中できるように、屋外の自然が溶け込むようにしている。もうひとつは『余白のある展示』。極力、置くもの(製品)を絞り込み、なおかつ技術的な切り口ではなくすべてストーリーで紹介している。余白というのは完成形、答えを見せるのではなく、あえてお客様に『考える余地がある』『議論の余地がある』見せ方をしているということ」(野口氏)
そしてもうひとつ、Future Creation HubにはNEC自身の変革を促し、アピールする意味合いもあるようだ。これも榎本氏、野口氏の両氏が触れた。
「(Future Creation Hubに)入っていただいて、『NECも少し変わるんじゃないか』と感じていただけたら幸い」(榎本氏)
「これから“We”で(顧客とNECが共創で)ビジネスを創っていくことが本当に大切だと思っている。そのためにはまず、われわれ自身が変わる必要がある。われわれの『変わる』という覚悟を感じていただければ」(野口氏)