このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第496回

AMD CPUロードマップ  ダイの大きさから考察する第3世代Ryzenの構造

2019年02月04日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

2つのダイを搭載したRyzenは
はたして登場するのか?

 連載484回の最後で、I/Oダイは2つのインフィニティ・ファブリックのI/Fを持っており、これを利用して2ダイ構成もあり得ると書いたわけだが、AMD HEROSのCES解説記事の最後で語ったとおり、パッケージに2つ目のダイの配線らしきものが見え隠れしているあたり、この予想が当たってしまったようだ。実際、物理的には現在のパッケージのまま2つのCPUダイを搭載するのは不可能ではない。

これは冒頭のCGを加工したもの。チップコンデンサーもフル実装にしてみた。ご覧の通り、現在のパッケージのまま2つのCPUダイを搭載するのは不可能ではない

 このCESの直前に、リークとしてRyzen 9 3800X/3850X、それとRyzen 7 3700/3700Xなるコアが「CESで発表される」というただし書き付きの情報が流れていただが、いくらなんでもこれは無茶である。

 というのは、Zen 2コアの前にVega 7nmが製造に入っているわけで、CESのタイミングでRyzenが発表されるのであれば、もうその時点でVega 7nmベース製品が発売されていないとおかしい。

 したがって情報の信頼性そのものが果てしなく「?」ではあるのだが、可能性として2ダイ製品がラインナップされることそのものは別に不思議ではない。

 ただ筆者からすれば、2ダイ構成の場合は稼働コアを間引き、その分動作周波数を引き上げると思っていた。理由は簡単で、比熱の問題である。

 Zenコアに比べてZen 2コアの面積はおおむね1/3程度である。ZenダイとZen 2ダイの組成が大きく変わらないとなると、Zen 2ダイはZenダイに比べて比熱が1/3ほどになる。要するに、同じ消費電力だったら温度上昇の度合いが3倍になるということだ。

 ということは、XFR(Extended Frequency Range)などが相対的に効きにくくなる(温度限界にすぐ達してしまう)ことが考えられる。対策としてはもちろん冷却を強化することになるが、比熱を増やすのも一案である。たとえば2ダイながら、どちらのダイも4コアのみ有効とした場合、比熱がZenダイの1/3から2/3に増える計算になる。

 おまけに3次キャッシュの容量が2倍になるので、1ダイのCPUに比べて動作周波数の引き上げがはるかに容易になるだろう。オーバークロック用途向けには絶対この構成が適している、というのが筆者の考えである。

 このあたりは製品が出てこないとなんとも言えないところではあるが、そう遠くない時期にこのあたりは明らかになると思われる。これは、AMDが言う製品投入時期のMid-2019をどう解釈するか次第であり、第3四半期という話もあるが、もう少し早いと筆者は考えている。

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事