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東京ヴェルディを長期視点で考える アカツキのスポーツビジネス

2019年03月04日 06時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ガチ鈴木 /ASCII編集部 写真● 曽根田元

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塩田氏 今回、ヴェルディの株式を取得することになりましたが、アカツキのスポーツビジネスはサッカーだけに限定するということではありません。色々なスポーツをやっていきたい。重要なのは、共感性、ブランド、ファン作りです。そこを中心に(スポーツビジネスの)ビジョンを考えていきたい。

東京ヴェルディもサッカーだけでなく、柔道やダンス、バスケットボールといったteamを展開して総合スポーツクラブへと進んでいっている(C)TOKYO VERDY

 今後、ファンやブランドを持っている事業のマネタイズ方法はもっと多様化していくでしょう。現在は、スポーツビジネスであればマネタイズの方法はチケットの販売、スポンサー、賞金ぐらいですが、ブランド力があればもっと様々なマネタイズが可能になっていくと見ています。体験自体もARを使うなど、もっと多様なビジネスが生まれてくるでしょう。

 その点からも、スポーツでは特に中核に忠実に展開していくことが大切だと思います。コアなブランドを作るということはアカツキの哲学的にもフィットしているので、どんどんやっていきたいですね。

――ファンとのエンゲージをビジネスとしてやっていくという可能性もありますね

塩田氏 正しくマネタイズする、これをもっとしっかりやる必要があります。そうしなければ産業として本当にいいものはできない。いいコンテンツやいい体験を作ることはお金がかかりますが、ファンに提供する価値、喜びの価値、幸せになる価値として提供できます。お金を払っていいと思える価値を提供し、それに対して払ってもいいと思ってくれるお金は取るべきだと思います。

 かつ、それを長期的視点で行うということが重要だと考えています。いい収入が入ってくればいいコンテンツと体験を作ることができるし、いいコンテンツと体験を作ることができればもっと広がっていく――この両輪を回していく。

――国内のスポーツが置かれている環境を見たとき、良いところ、悪いところはなんだと考えますか?

塩田氏 マクロで見たときに、もっと国内のスポーツビジネス市場は大きくなるべきだと思います。GDP対比で見たときに、日本のスポーツ産業はすごく小さい。その理由をちゃんと分析しなければならないし、自分たちももっとスポーツビジネスに入っていって学ばなければならないと思っています。

 日本は国土が大きいわけでもないし、資源が豊富というわけでもない。日本の強みは文化のようなものに収斂されていくのではないかと考えています。世界中の人が日本に行きたい、体験したいと思ってやってくる。体験を提供することは、国家として重要でしょう。

 まだまだ国内の需要を大きくできると思いますが、これにプラスして、世界の人が日本に来てくれるかが重要です。隣には中国、そしてアジアという大きな市場があります。そこまで取り込みながら、スポーツ領域でブランドづくりをして、ビジネスをもっと大きくしていきたいですね。

――スポーツビジネスの障害のひとつとして、スポーツで儲けてはいけないという文化があるという指摘があります

梅本氏 スポーツチームと現場のスタッフの2つを見てみると、チームについては、構造的に我々のモバイルゲーム事業のような利益率は出ない世界だと考えます。売上が増えたら高い年棒を払って強い選手を連れてきてさらに強くしたい、という考えがあるからです。ですが、売上をしっかり出して利益をつくっていく、それにより存続できるということは重要です。強いチーム、楽しいチームであり続けるためには、やはり利益を上げるということは重要だと考えています。

アカツキ 執行役員 経営企画部部長兼事業開発部 梅本大介部長

 現場のスタッフについては、選手と比べると収入が必ずしも高くありません。現場にお金を払うぐらいながら選手にもっと払うべきという考えもあるようですが、継続性という視点でみると、この考えは正しいとは言えない。選手は1年で去るかもしれないが、現場のスタッフは長い時間軸で働いているからです。現場スタッフも事業のプロとしてチームに帰属しているわけですから、高い報酬をもらって今まで以上に成果にコミットする。そして報酬が高くなることでこれまでより多様な人材が入ってくるとなれば、持続性のある形で強い組織が継続することになります。やはり、売り上げを増やして利益を出していかなければならない。実際、米国のプロスポーツではゼネラルマネージャークラスになると数億円レベルの報酬を得ているビジネス人材もいます。

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