ハードウェアスタートアップを製造から支援するStartup Factory
「Startup Factory Meetup」東京レポート
スタートアップが直面した壁と支援者への要望
続いてパネルディスカッションが行なわれ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 経済政策部 研究員 北 洋佑氏をモデレータに、IoTハードウェアスタートアップに出資、支援を行っているABBALab 代表取締役 小笠原 治氏、単体で通信を行なう電子錠を作っているtsumug 代表取締役 牧田恵里氏、靴にセンサーを内蔵し、歩いたデータを活用することでさまざまな取り組みを行なっているno new folk studio 代表取締役 菊川裕也氏が登壇。スタートアップとしての活動での実体験などをもとに、考え方やスピード感のギャップなどについて語られた。
ハードウェアスタートアップとして直面する壁について問われると牧田氏は「工場とのコミュニケーションが取れないこと、設計変更しにくいこと、そもそも工場と出会えないこと」を挙げた。また、見積もりに10ヵ月もかかり、その上で断られるといったこともあったという体験を語ると、小笠原氏からは「お金と時間は話が合わないことが多い」とフォローが入った。
その原因として菊川氏曰く「スタートアップはインターネットビジネスを中心に発展してきているので、エコシステムを理解してから始めている。それに対してほかの業界はそれがなぜなりたっているのか理解しておらず、仕事がきたからやるという姿勢で、スピード感や求めていることが違うということになる」と分析。
さらに、物作りとIoTの違いに言及。「IoTはただ物を作っているわけではなく、そのデータがネットとつながったときに、これまでと違う体験が作れる。IoTスタートアップは製品を売ることでは成長できず、その先にビジネスがあるということを理解していただきたい」と語った。
工場とのやり取りについても始めた当初は苦労が多かったという話で牧田氏は「実際に作る際にどこと話したらいいだろうというところから始まり、自分で探して交渉したがほとんど門前払いで話を聞いてもらえなかった」という。「工場からすると試作だが、スタートアップからすると次は量産という考えで、ロットやスケジュール感、費用感などもまるで違った。先にお客にヒアリングしてニーズやロットを見込んで工場に話をしにいっても聞いてもらえなかった」と語る。
菊川氏も「最初は何もわからずに靴にセンサーを取り付けることから始めたが、靴業界のやり方とはかけ離れており、工場で作れるようになるのにリソースがかかった。靴業界と関係のない、プロトタイプを持っているだけの人とは話もしてくれず、最初はそうせざるを得なかった」と、既存業界の外部から話をする難しさを述べた。
スピード感の違いについては、スタートアップとやり取りしていると考えられないスピードで仕様が変わり、ついていくのがたいへんという意見があると問われると、小笠原氏は「ネット業界の、作り始めでも投資する仕組みが影響している」と回答。そして、「作っていく中で気づくことがいいことという空気があり、工場と話を始めるのも早い。そのため途中で競合が出てくることもあるし、思いつくこともあり、その業界で普通に行なわれているタイミングがわからない状態で話を始めてしまうことが原因」という。
菊川氏も「一度回してから修正するという、ネット業界の発想から出ていて、物が売れるよりも検証するほうが重要で、その検証を早くしたいがためにそうなってしまう面がある」と語る。さらに「ソフトで検証してわかったら、ハードを変えないといけないことも。物を作って売ることで終わりではないことを理解してほしい」と語った。
「Startup Factoryは国が費用をもってスタートアップを支援するという取り組みなので、普段の営業行為と違う、支援という愛情をもっての関わりをお願いしたいところです」という小笠原氏は「いままでと違うビジネスモデル、そういうルーキーがでてきたと思ってください。そして支援の先に、これまでとは違うビジネスモデルがあると期待してください」と、パネルディスカッションを締めくくった。