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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第490回

業界に多大な影響を与えた現存メーカー AT互換機という怪物を産み出したIBM

2018年12月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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Type-3を改良した廉価版
IBM-PC/XTを出荷

 Type-1に続き、1985年中旬にはType-2が登場する。表面的には違いがないが、マザーボードがBaby ATサイズまで小型化されている。またメモリーチップが128Kbit品から256Kbit品に切り替わった。さらに1986年4月には、8MHzの80286を搭載したType-3も登場した。

Type-3のマザーボード。実装密度を縮めてむりやり小さくした、という感じである。まだチップセットなどは利用していない。DRAMチップの容量が上がった結果、DIPソケットの数が半減しているのがわかる

 以上のようにハードウェアは80286に変わり、プロテクトモードと16MBのメモリー空間が利用可能になったとはいえ、ソフトウェアの方は依然としてMS-DOSベースなので、けっきょくは高速な8086/8088として80286を利用することになった。もっとも性能向上のニーズは当然高かったので、80286に交換することで高速化されたIBM-PC/ATの評判は悪くなかった。

 このIBM-PC/ATの派生型、としてもいいと思うのだが、Type-3のマザーボードをさらに再設計、というよりもう一段すっきりさせたのが1986年9月に発売されたIBM-PC/XT model 286(IBM 5162)である。

IBM-PC/XT model 286。CPUが基板の左上に。メモリはXTバススロットの下にSIMMの形で装着される

 こちらはXTという名前ではありつつもCPUは80286の6MHzであり、ATバススロットも5本搭載している。マザーボードそのものは完全にIBM-PC/XTのものと同一サイズに抑えられ、IBM-PC/XTを思わせる筐体(微妙に違うらしい)に収めて出荷されたが、実質的にはIBM-PC/ATのバリューモデルという扱いである。

 おもしろいのは、IBM-PC/ATはType1~3まで150ns程度のDRAMを利用していた関係で、メモリーアクセスには1ウエイトが入っていた(つまりアクセスに2サイクルかかる)が、IBM-PC/XT model 286ではアクセスが75ns程度のSIMMを利用可能になっており、この結果0ウエイト(つまりアクセスが1サイクル)となった。

 要するに、メモリーアクセスを多用するアプリケーションでは、IBM-PC/XT 286の方が高速に動作したらしい。

 このIBM-PC/XT model 286は20MB HDDを内蔵して、4000ドルほどで発売されていたそうで、価格的にもまさしくエントリー向けであるのだが、残念ながらあまり芳しい売れ行きではなかった。なんというか、これもIBM-PC/ATとして売り出した方がよかったのではないか? という気がしなくもない。

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