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メルカリを目指す日本サッカー協会

2018年11月29日 06時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ガチ鈴木 /ASCII編集部 写真● 曽根田元

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――人材募集では、「経営者的」人事部長を募りました。

須原 サッカー界でプロフェッショナル人材がどんどん育っています。最初にプロ化されたのは選手で、次に協会のプロ化が進みました。そしてJリーグも一緒になって取り組んできたのが、指導のプロ化です。プロの指導者がどんどん出てきており、監督を組織のトップとすれば、コーチもコーチ業で食べていく、世界に行けるそういう人を作る段階にあります。

 選手は欧州でプレーできる選手が出てきていますが、指導者はまだです。ですが、欧州のビックチームを指導できる指導者が、今後5~10年で出て来ると思います。例えばドイツのブンデスリーガで長谷部選手が監督をやる――想像できますよね。

 選手、指導者の次が、経営のプロ化です。サッカーに携わる経営のプロ化です。Jリーグのクラブ経営をプロに、協会の経営をプロに持っていく。これができて、初めて日本のサッカーが本当のプロになります。

 日本サッカー協会はアドミニストレーション(経営管理)では高レベルです。アドミニストレーションが強ければチームが強くなるわけではないが、アドミニストレーションが弱くてチームが強くなることはないので、ここは必要条件ではあるが十分条件ではありません。

 しっかりしたアドミニストレーションの次として、さらに強く、いい意味で引っ張っていく存在になるべきだと考えます。”次はこんなことをやってみよう””ここまでサポートできるようになったから、やってみよう”と我々の方からフィールドに対して提案できるレベルのアドミニストレーション力を培っていきます。そこで、協会の経営のプロ化なのです。

 例えばNBA(米国プロバスケットボール)、MLB(メジャーリーグベースボール)、欧州のビックリーグはアドミニストレーション、クラブやチーム、リーグの経営がプロ化されています。

――人材の中でも人事部長を募集する理由は?

須原 ひとつ目の理由として、これまで日本サッカー協会には人事部がなかったことがあります。人事の機能は管理部や総務部などが持っており、独立した部局なしにやってきました。組織の成長フェイズや規模を考えた時に、人事にそこまで投資する必要がないというのは理にかなった戦略、戦術と言えます。

 ですが現在の事業規模は、ワールドカップの年ではなくても年間200億円程度になっています。従業員はフルタイムで常時200人以上います。この規模になると、人事部は重要です。

 2つ目の理由として、ビジネスをやるのは人です。経営者は戦略を描き、ビジョンを出します。それに対して経営資源を集めて場を用意します。そこで実際にやるのは、人です。いかにして魅力的な人材が潜在能力を最大限に発揮しながら、楽しんで仕事ができるか――これはビジネスがうまくいくかどうかの8~9割を握る重要な要素です。

 誰が・何を・どのように、などを整備するのはトップですが、それをサポートし、戦略的にリードするのは人事部です。

 ですので、労務、採用、評価といった人事独特の経験があることはありがたいのですが、それは最重要要素ではありません。むしろ、経営的な視点が欲しい。「部長」ということは、将来のトップ候補という意味もあります。人事部長に限らず、マーケティングなど他の部長もそうですが、部長は経営者候補です。経営者候補が我々と同じ目線に立ち、どうやって様々なチーム、多様なメンバーが楽しく働くことができるのか、そのために何が必要なのかを経営目線でデザインして落とし込んで欲しい。それを一緒にできる仲間を求めています。

須原 清貴氏(公益財団法人日本サッカー協会 専務理事)

慶應義塾大学法学部卒業後、住友商事、ボストンコンサルティンググループに所属、キンコーズ・ジャパンの代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)、ベルリッツ・ジャパン代表取締役社長、ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役 兼 最高執行責任者(COO)などを経て、公益財団法人日本サッカー協会 専務理事に就任。3級審判インストラクターの資格も持つ。

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