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山谷剛史の「アジアIT小話」 第159回

中国で案外認知度アップ中のVR 体感ゲームが好きな中国人に受け入れられる

2018年11月08日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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もう一方で映像コンテンツ向けの展開も
大手動画配信サイトが期間限定の無料レンタル

 これまで紹介したのはゲームをキーとしたVRの普及だが、映像コンテンツを大画面で見るという方向性での普及も進められようとしている。

 “再度”というのは、少し前にも中国でスマートフォンを装着するタイプのVRゴーグルが大量に市場に出回り、そのときには映像コンテンツでアピールされていたためだ。最も安いときには街中のデジタル製品とは関係ない店で、1つ10元(約160円)でゴーグルが売られるということもあり、かなりばらまかれたようだ。

 今回は「愛奇藝(iQiyi)」(https://www.iqiyi.com/)というところが、Snapdragon 835搭載するという同社ヘッドセット「iQUT」を実質30日間無料で貸し出しを始めた。

高性能&高価なVRヘッドセットが、最初の30日間は無料で利用できるというサービスも

 実質というのは、「気に入れば30日以降に購入する」という条件になっているためだ。愛奇藝の公式ストアでは、10月20日から11月12日までのキャンペーンで本来は3899元(約6万4000円)の商品が無料レンタルできる。過去に阿里巴巴(Alibaba)がスマートスピーカーを11月11日の商戦期に99元(約1600円)の激安価格で販売したところ、関心のある人々が一気に購入に走った。同様に挿しインテクノロジーを体験したい層が、サイトをニュースやクチコミで見て、手の届きにくいこの製品を借りることだろう。

VR空間で映像コンテンツを楽しめるサービスが展開されている

 製品の特長は同社のページや販売サイトなどを見ても、映像コンテンツが主体になっている意図が読み取れる。もちろんVRゲームも用意されているが、それよりもホームシアターとして使ってほしいようだ。

単体で動作するVRヘッドセットとして、性能もかなり高い

 それもそのはず、愛奇藝は動画サービスであり、多数の映像コンテンツの版権を所有している。筆者も前回の連載記事(「中国のネット世界で不可欠な、点数化された個人信用情報」)で同社の前世代モデルとなるVRヘッドセットを借りたが、動画コンテンツが本家スマホ・PC向けサービスと同じく、非常に充実していたという印象を受けた。中国製だからといって使用感に問題はなく、気持ちよく利用できた。

 また愛奇藝は、上海、深セン、武漢などホテル二十数店に同社ヘッドセットを提供しているが、年内には1万ヵ所にVRが体験できるスペースを導入したいとしている。

 研究開発についてだが、先日江西省南昌で開催されたVR産業の展示会とフォーラムの「世界VR大会」の様子を見てきたところ、大手企業の研究開発の状況については「5Gとの融合(5G待ち)」という状況で、まだ模索しているようであった。実際にヒアリングして見ても、まだ商用化できている状況ではないとのこと。とりあえずはゲームと映像で普及していきそうだ。

中国でも5Gの用途として、VRは期待されているようだ


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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