メルマガはこちらから

PAGE
TOP

日本が空飛ぶクルマを進めるべき 経産省若手官僚が狙う産業革命

日本の官庁が本気で進める「空白の7年」を取り返すプロジェクトの背景を聞く

1 2 3 4 5 6

AIを活用した情報収集、官民混合での政策づくりなど、経産省の働き方改革

 海老原氏は、新しいイノベーションによりゲームチェンジが起こる分野へ取り組むためには、予算・税・法律といった既存の政策立案手法とは異なる新たな手法が必要と考えている。

 これは省内の働き方改革にも直結する。ひとつは情報収集の仕方だ。

 世の中は、ものすごい速さで産業構造が変化しており、新聞記事、業界専門誌、既存のネットニュースなどを読んでいるだけでは、業界内で起きている連続的な未来しか見えず、非連続で起きている動きは自分の情報網に飛び込んでこない。

 政策立案につながるための情報収集力を高めるため、経産省製造産業局航空機武器宇宙産業課では、2017年7月から霞が関で初めてAI型ニュースクリッピングサービス「Anews」(国内スタートアップのStockMark社が展開)を導入。これにより、「空飛ぶクルマ」の世界のトレンドをいち早くキャッチし、チーム内で問題意識を高めることができたという。

Anews

 もうひとつは、パブリックリレーションズを重視した政策づくりだ。「空飛ぶクルマ」のチームは、全員省内での勤務経験しかない中堅・若手ばかりだが、「社会受容性を高める」といった課題は、霞が関の閉じた世界で一方的に政策つくるのではなく、国民との対話によって政策を練っていくべき内容となる。

 また、空飛ぶクルマを実装する段階になったとき、地域のコミュニティーや交通の不便な場所など、現場を理解している人に入っているほうがニーズに合わせて整備しやすい。プロジェクト型で官民の混合チームをつくれるようにするため、消費者のニーズを捉え、国民の考えを政府内に持ち込めるような外部の人材を週1回など副業で入れられないか、と海老原氏は提案する。

 企業で活躍するキャリアのなかで、経産省での経験が役に立つこともあるだろう。省外の多様な人材をうまく国の政策に活かしていきたいそうだ。

 この先、年末に空飛ぶクルマのロードマップが示された後、来年からは実務レベルでの議論や、より具体性のある形で、場所や事業者の選定といった具体的なフォローへと移っていく。

 空飛ぶクルマが実現し、点と点での自由に移動できるようになれば、馬から車に変わっていった過去の歴史と同様に、都市と地方のインフラ格差がなくなり、働く場所、コミュニケーションのとり方も大きく変わってくるかもしれない。まったく新しい社会が生まれるときに制度がないと、不安や社会的な歪みが起こる。今後2、30年後に空の移動が使われているのは確実だからこそ、いち早く議論を始め、制度を整えていくことが何よりも重要だ。

 テクノロジーが制度と密接に関連する最前線として、今後の空飛ぶクルマの動きに注目していきたい。

1 2 3 4 5 6

合わせて読みたい編集者オススメ記事