日本が空飛ぶクルマを進めるべき 経産省若手官僚が狙う産業革命
日本の官庁が本気で進める「空白の7年」を取り返すプロジェクトの背景を聞く
世界中の企業が注目する次世代モビリティ「空飛ぶクルマ」は、早ければ2020年代には実現する見通しだという。日本では経産省が「空飛ぶクルマ」プロジェクトを国としていち早く立ち上げ、関係省庁や国内外の企業と連携しながら、空飛ぶクルマの実現へ向けた取り組みを進めている。経産省が期待する空飛ぶクルマのポテンシャル、実用化に向けた課題と今後の計画について、経済産業省 航空機武器宇宙産業課の海老原 史明氏にお話を伺った。
「空の移動革命」~空飛ぶクルマで変わる世界
いま世界で1年間に飛行機を使う人は約5%に過ぎないとの推計があるが、自動車などに比べて空は圧倒的に使われていない。このような、これまであまり身近ではなかった空の移動が、テクノロジーの進歩によって大衆化されていく「空の移動革命」プロジェクトが経産省で現在主導されている。
空飛ぶクルマの特徴は、1)電動化、2)自動操縦、3)垂直で離着陸し、滑走路なしで点と点での移動ができる――の3つ。
電動化のメリットは、燃料費と整備のコストの削減だ。ヘリコプターは、整備に年間1、2ヵ月を要すが、電動であれば構造がシンプルになりプロフェッショナルな整備士の人材確保も不要。整備コストを大幅にカットできる。
また電動化は、自動化との親和性も高い。電気は内燃機関よりも応答性が高く、より細やかに姿勢制御できる。また、自動操縦になれば、数千万円かかるというパイロットの養成費用がかからず、圧倒的に価格が安くなると推測されている。
ある推計では、空飛ぶクルマが普及すると、機体価格は高級車程度、公共交通サービスとしては、1キロあたり300~400円のタクシーよりも安くなる可能性があるという。
現時点で見えている用途としては、都市部での渋滞対策、離島や過疎地での移動手段、災害時やドクターヘリに代わる救命、の3つが想定される。陸路のインフラがいらないというのは大きな利点で、道路やトンネルの整備や維持が不要になる。アフリカなどの途上国では、固定電話を持つ前に携帯電話が普及するリープフロッグ現象が起きているが、こうした国々では自動車に乗らずして、いきなり空を使って移動するようになるかもしれない。
同プロジェクトの中心人物である海老原氏によれば、このようなメリットだけでなく、日本が空飛ぶクルマを推し進めるべき理由があると語る。