GAE登場、BigQueryのリリース、GCEでの妥協、そしてGKE

GCP誕生から10年、その進化の歴史を振り返る

文●小林明大(Google Cloud Authorized Trainer/トップゲート) 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

2014年の企業買収とその成果

 Googleが多数の企業を買収しているというのは有名な話です。Googleはこれまでに実に200社を超える企業を買収しています。その中で特にGCPに関係する3社を2014年に買収しました。

 まず、統合監視サービスのStackdriver買収し、2年後の2016年にGCPのサービスの一部として統合しました。

 StackdriverはError Reporting、Monitoring、Debugger、Trace、Logging の5つのサービスによって構成されます。マルチクラウドに対応していて、GCPとAWSをサポートしています。元々がGCP固有のサービスとして作られていたわけではないため、汎用的な作りになっていますが、買収を経て統合されたことにより、Compute EngineやApp Engine、Kubernetes Engine、Cloud SQL、Cloud Datastoreなど様々なGCPのサービスを簡単に監視できるように機能が強化されました。

 次に、モバイルおよびWebアプリケーションのバックエンドサービスであるFirebaseを買収しました。Firebaseはクラウドサービスの形態ではmBaaS(mobile backend as a Service)に位置付けされます。

 Firebaseを使うことで、開発者はクライアントアプリケーションの開発に専念できるようになります。DBサーバーを用意してDBにアクセスするためのAPIサーバーの構築や認証を行うといった、バックエンドで動くサービスを作成し管理する煩わしさから開放されます。

 Firebaseはもともと独立したサービスでしたが、GCPの仲間入りをしたことで、GCPの多くのサービスと連携して使えるようになっています。例えば、Cloud Function For Firebaseを使えばイベントドリブンな処理が実行でき、Cloud Firebase Massageと連携すれば、サーバープッシュすらサーバレスで実現可能です。

 Firebase の強力な武器であるRealtime Database はCloud Firestoreに置き換わり、さらに2018年に発表された Datastore モードはCloud Datastoreに置き換わるサービスとして注目されています。このように、GoogleがFirebaseを買収することGCPの他のサービスとの親和性が高まっただけでなく、もともとあったFirebaseの機能も強化されたのです。

 3つ目は、機械学習のDeepMind社の買収です。2014年には、ビッグデータやデータサイエンティスト、機械学習などがバズワードになっていました。Googleは、AlphaGoや、その他の既存のサービスにも積極的に機械学習を取り入れています。例えば日々賢くなるGoogle翻訳、Gmailのスパム判定、Google Photoの画像認識などは機械学習のテクノロジーが支えています。また、GoogleはTensorFlowをオープンソース化するなどコミュニティでも活躍しています。

2015年 Cloud Datalabのリリース

 機械学習は、「モデルの作成」「学習」「学習済モデルの活用」のフェーズに分けられます。GCPでは、それぞれフェーズに適したサービスが提供されています。

 2015年にGoogleは、Pythonをブラウザ上でインタラクティブに実行できるJupyterをGCPに最適化したCloud Datalabをリリースしました。

 Cloud Datalabは機械学習のモデルの作成に適したサービスです。TensorFlowなどを使ってモデルを作成することができます。GCPのクライアントライブラリが標準で含まれているため、例えばBigQueryの操作がモジュールをインポートすることなく実行できます。

 モデルの作成はトライ・アンド・エラーの繰り返しで、グラフなどを使ってビジュアライズしながらの作業になります。Cloud Datalabはインタラクティブにグラフ表示もできて、更にデータの保存先にBigQueryを使っているケースでは最適のサービスになっています。

Cloud Datalab

2016年 Cloud Machine Learning Engineの登場

 機械学習の学習フェーズでは、たくさんのマシンリソースが必要になります。例えば、猫を認識するモデルを作成したとして、そのモデルを学習させるには、大量の猫が写っている画像と、写っていない画像が必要になります。

 GCPに2016年に登場したCloud Machine Learning Engineは、その学習の場を提供してくれます。GCPにある大量のマシンリソースを使って並列に作業させることで、従来1週間かかっていたような学習の処理を1日で終わらせることも可能です。学習済みのモデルをGCPにデプロイし、クライアントアプリケーションからリクエストを送って予測を行うような処理もできます(つまり、学習モデルの活用フェーズでも活躍するサービスです)。

Cloud Machine Learning Engine

過去記事アーカイブ

2024年
04月
2023年
01月
02月
03月
05月
06月
07月
09月
12月
2022年
03月
04月
05月
06月
07月
08月
12月
2021年
02月
04月
05月
06月
08月
09月
10月
11月
2020年
05月
06月
2019年
04月
11月
2018年
07月
09月
10月
2017年
06月
2014年
07月