ワイヤレスでリアスピーカーを鳴らせる、ヤマハのMusicCast サラウンドを試す
Wi-Fi対応の「MusicCast BAR 400」で、ガルパンの5.1ch再生に挑戦です!
2018年10月18日 11時00分更新
いよいよ、「MusicCast BAR 400」で「ガルパン総集編」を鑑賞!!
ではお待ちかねの「ガルパン総集編」をMusicCast BAR 400で観てみよう。
まずはMusicCast BAR 400だけを使ったバーチャルサラウンド再生から。「ガルパン総集編」はテレビシリーズとOVAで描かれた「第63回戦車道全国高校生大会」の模様を集めたもの。主人公の西住みほたちの大洗女子学園とライバルたちの戦車戦を網羅した「良いとこどり」の贅沢な内容だ。
その見どころは書き出したらキリがないほどだが、リニューアルされた5.1ch音声は、本来なら画面の中央から聴こえる声を、積極的に左右のスピーカーやリアスピーカーに配分し、音の移動を活かした演出を多用している。例えば、学校内での会話でも、画面の外にいる人物の声は左右もしくは後ろから聴こえていて、画面に姿が現れるとセンターから声が出る。こうした動き回るキャラクターたちの声の移動感が表現されていて、臨場感豊かな音になっているのだ。
また、大きな見どころである戦車戦でも、相手からの砲撃が前後左右に飛び交う。逆にこちらが発砲すれば、戦車内にリアルな反響音が出る……という具合に、臨場感たっぷりの音の演出が施されている。戦車戦の迫力が倍増しているのだ。
MusicCast BAR 400は音にこだわった機種とのことで、まずは肝心な部分、音質面での実力をオープニング曲でチェックした。この曲も、5.1ch化した戦車の走行音や砲撃音などがSEとして追加されている。テレビシリーズと同じ曲ながらなかなか新鮮な印象だ。MusicCast BAR 400の音で感じたのは、中高域が実にクリアで情報量の豊かな音になること。声は鮮明で生き生きとした再現だ。音楽もリズム感がしっかりと出る。
試聴では比較的大きめの会議室を使ったので、音量は高めに設定した。
リビングスペースとしては広すぎる場所でもあり、もう少し音に力強さが欲しかったので、「クリアボイス」をオン、低音を強化する「バスエクステンション」もオンとした。これがなかなか効果的で、声の厚みが増し、特に中低音が充実したエネルギー感のある鳴り方になった。このあたりは、部屋の広さや音量にも関わるので、自分の好みに合わせて使い分けよう。基本的には夜間など音量を控えめにして再生するときに活用するのがおすすめだ。
メインの音量とは独立して調整できるサブウーファーの音量もやや大きめにしてみた。ただ、サブウーファーの音量は大きくしすぎると中低音が膨らみ過ぎて、せっかくの明瞭度の高い音が曇りがちになるので注意しよう。重低音の迫力も大事だが、中低音や声の再現性をよく聞いて、サブウーファーの音量を微調整するのがいいと思う。
こういった調整を経ることで、肝心の戦車戦でも音の実在感が増す。
サンダース大学付属高校のファイアフライの19ポンド砲の迫力ある音を伝えながら、轟音に伴う衝撃音や破壊される戦車の音、緊迫したキャラクターの演技を鮮やかなに再現できるようになった。
ここで3Dサラウンド機能「DTS Virtual:X」を試してみた。5.1chそのままのサラウンド再生でも横方向の音の広がりが豊かで動き回るキャラクターの移動感は出るのだが、前後の空間の広がりはいまひとつ。ここで「3Dサラウンド」をオンにすると、ぐっと前方の奥行きが深くなり、後方の音が聴こえてくる感じもよりリアルになる。なんといっても空間感が豊かになるのが大きな魅力だ。
準決勝のプラウダ高校との戦いでは、大洗女子学園側は教会の中に包囲されてしまうが、教会内での会話の声の響きが豊かになり、シリアスなムードをよく伝えてくる。また、教会を出てプラウダ高校の包囲を突破する場面では、雪上を走る戦車が雪を蹴散らす感じが良くでて、雪上戦の雰囲気がよくわかる。もちろん、ノンナによるIS-2の122mm戦車砲の砲撃、出番は短めだが砲撃の迫力と存在感では負けないKV-2の迫力もしっかりと出た。
DTS:Virtual:Xはバーチャルサラウンドとはいえ、なかなか豊かなサラウンド感が味わえる技術で、後方から音が聴こえる感じも十分に得られる。なにより空間感が豊かで高さ感までしっかりと再現されるため、臨場感が実に豊かだ。MusicCast BAR 400の定位感の良さ、情報量豊かな音の再現とあいまって、前後左右に配置される音の定位も優れ、音の移動などもなかなか見事に再現できた。後ろにスピーカーを置くことができない環境でも、なかなか映画館に近いサラウンド感を楽しめる。
本製品ならでは、ワイヤレスサラウンドの効果は?
そこでいよいよ、「MusicCast サラウンド」でリアスピーカーも配置して本格的なサラウンド再生も試してみた。視聴位置の後方にテーブルを用意し、左右にMusicCast 20を各1台、中央にMusicCast 50を一台置いて、それぞれの鳴り方の違いを聴き比べてみた。
まずは、視聴位置の真後ろに置いたMusicCast 50との組み合わせを聴いたが、後方の音に実体感が増し、前後の音の移動感がより臨場感たっぷりになった。空間の再現は後方の広がりがやや不足気味だが、空間自体は一回り大きくなった感じになる。
決勝戦はみほの姉、西住まほが隊長を務める黒森峰女学園との対戦だ。開始早々に、森を抜けての電撃戦を仕掛けられ、大洗女子学園側は窮地に立たされるが、真横から飛んでくるなど、これまでよりもリアルに砲撃にさらされている感じが味わえた。富士山のふもとの演習場という広い場所の感じも空間感が広がったことで、より雄大になる。
このとき、通常の「サラウンド」だと各チャンネルの定位を重視した鳴り方になり、「3Dサラウンド(DTS Virtual:X)」だと空間感重視の鳴り方になる。後方の定位や明瞭度は「サラウンド」の方がわかりやすいが、「3Dサラウンド」は空間感が豊かになり、その場所に居る感じが増す。このあたりも好みで使い分けよう。
超重戦車マウスとの対決は、MusicCast 20を2台使った組み合わせで観た。後方の空間がより広がったことがわかる。2つのリアスピーカーを使って後方の左右のスピーカーの間隔を広げた方がサラウンド再生では有利だ。戦車の砲撃も、これまではわりと前から後ろという感じの移動感だったが、それがはっきりと右斜め後ろに飛んでいく感じが強まる。こうした砲撃の音の配置や移動はかなりしっかりと制作されているので、よりサラウンドのリアリティーが増したと感じた。
前後左右の音の定位や移動感もさることながら、マウスの他の戦車とはまるで違う重々しい走行音の迫力にも感心した。コンクリートが軋むような感じ、重い金属がこすれるような音、さまざまな音が重なって、重量級の戦車が現れてくる様子を実に迫力たっぷりに描いた。これはなかなかの表現だ。
そして、クライマックスとなるⅣ号戦車とティーガー戦車の一騎打ちの場面では、古いマンションの間を駆け抜けながら激しく砲撃を打ち合う場面を一層迫力たっぷりに再現。建物が林立する場所らしい反響音も豊かに表現されるし、ティーガー戦車が行く手を阻むために瑠弾でマンションを破壊するときの音も、画面では見えないティーガー戦車の砲撃がしっかりと斜め後方から聞こえ、前進するⅣ号戦車の前方で建物が崩れる音が鳴る。こうした音の配置までしっかりと描き切った。この感じはさすが本格的なサラウンド再生ならではのもの。
多少コストのかかる方法だが、MusicCast サラウンドでここまで本格的なサラウンドが楽しめるというのは実にうれしい。これならば、映画館で体験した迫力ある音に近い臨場感を家庭でも楽しめると言うことができる。もちろん、MusicCast BAR 400単体でも、基本的な音質の良さもあってサラウンド映画の美味しいところは十分に味わえる。どこまでグレードアップして映画館の迫力に近づけるかはユーザー次第だが、優れたサラウンドを楽しめるシステムの入り口として、MusicCast BAR 400は使いやすさも含めておすすめのモデルだと断言できる。
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