評価制度には終わりがない
岩本:評価制度の作り方とか、こういうのがキモだったみたいな話があれば。さっき打ち合わせしたときは、半期や四半期で評価できないみたいな話も出てきましたね。
栗栖:私が2008年に入社したときは、ちょうど360度評価の制度を作っていました。当時はまだ30人くらいでしたが、Googleのページランクみたいな方法でメンバーがみんなで評価するみたいなのをやりました。
でも、さすがにここまで人数が多くなると、360度評価は回らなくなるので、最近では普通に目標設定して、上司に説明して、MAX5点で評価してます。若い人は行動の割合が高くて、グレードが上がると成果への割合が高くなる。他者評価も入れてますが、これはやる方が大変ですね。とはいえ、納得度は高くなるので、がんばって入れてます。
佐藤:うちはサービスごとの部署になっているので、たとえばロリポップをやっている部署のマネジメントは、非エンジニア・非デザイナーになったりします。しかもマネジメントは短期的な数字を追いがちだし、経営サイドは長期的なサービス成長も期待します。また、職種によってはやってることも重要だけど、職種として伸びしろを評価して欲しいという声もあって、それぞれ求められているものが違います。
今のところやっているのは、エンジニアをマネジメントする人と、サービスをマネジメントする人のどっちの評価も入れるようにしていて、そこで解決しようとしています。
田中:われわれもそれに近いですけど、根本的な話として、「うちの評価システムってすごくよくできてる」って言う人に今まで出会ったことがないんですよ(笑)。つねにみなさん迷っています。人が人を評価するのって、本質的には無理だと思うんですよね。ただ、多くの人が評価することで、公平性というより、納得性を高めていかなければならない。
栗栖:納得度はほしいですよね。
田中:先ほど佐藤さんがおっしゃったように、サービスの責任者が評価できないこともあるんですよね。だから、UXなり、ネットワークなり、そのスキルがわかるマネージャーがその人を評価しなければならない。でも、こうすると新たな問題が出てきて、所属する組織の中での人となりはわかるんだけど、その人がなんの仕事をしているかわからないってなっちゃう。だからサービスの責任者が特別に推薦できる制度とか作るんですけど、なかなか試行錯誤ですね。
佐藤:評価制度は終わりがないですよね。
あの「ペパボの新卒採用」の目的はカルチャーフィット
岩本:採用はどうなってるんでしょうか? 東京だと大手からスタートアップまでエンジニアが足りないという状況じゃないですか。じゃあ、どうやってマッチする人をとるのか?
栗栖:私が最初に受けた面接はけっこうひどかったです(笑)。J近藤がいきなり出てきて、サービスなんか作ってこいと言われ、みんながご飯食べてる前でプレゼンするんですよ。その場に社員だけじゃなく、インターンも混じってる。けっこう失礼な話じゃないですか(笑)。
そこからは相当変わってきていますが、今もディレクターにはお題を出します。はてブをどうするとか、その人に期待することに対するお題を考えてもらって、プレゼンして、チームに質疑を受けます。質疑の内容も重要ですが、コミュニケーションをきちんととれるかみたいなフィーリングを確かめます。エンジニアも同じくコードを書いてもらって、それに対する質疑応答をがっつりやってます。
田中:うちは昨年は社員紹介で入ってくる人が多かったんですよね。こういうリファラル採用は重視しています。とはいえ、母集団を形成するのは大事。5人から選ぶのか、100人から選ぶのかは、マッチする確率も変わってきます。上司だけじゃなく、いっしょに働く人も面接するので、大変申し訳ないですけど、多い人は4~5回面接します。リファラル採用と、母集団と面接を多くするの2つをがんばっています。
岩本:ペパボさんの新卒説明会は業界でも有名ですよね。
佐藤:YouTubeで「ペパボ 新卒採用」で調べれば出てくるんですけど、うちは新卒の説明会でショーやってます。カルチャーフィットできる人を探しているので、そういうことをやってます。あとは「みんなで仲良く仕事してください」「ファンを増やしてください」「アウトプットしてください」の3つをペパボとしてはお願いしているので、これができるか聞きますね。できるとか、やりたいという人であれば、ペパボにカルチャーフィットするだろうという採用の基準です。
田中:カルチャーフィット重要ですよねー。
佐藤:いくら優秀でもフィットしなかったら、パフォーマンス出なくなってしまうので、お互いに不幸なことだと思うんですよ。
栗栖:最近悩んでいるのは、カルチャーフィットと多様性ってどう折り合いを付ければいくべきなのか? カルチャーが濃ければ濃いほど、そこにフィットする人って減っちゃうのかなと思っていて。でも意識的に違う人混ぜると、ギャップが生じてしまう気がして。そこらへんどうですか?
田中:フィットさせなければいけない部分と、それほど重視しない部分を分類するのがいいんじゃないですかね。たとえば、先ほどのペパボさんの3つ以外にも、多様性を考えたらいろいろあるじゃないですか。
佐藤:でも、150個ありますだったら、絶対誰も来られないですからね(笑)。
田中:うちは「やりたいことなんですか?」と聞きますね。なにせスローガンで「やりたいことを、できるに変える」と言っているわけだから、できることより、やりたいことを重視してます。結局、レジュメってほとんどやったことしか書いてない。やりたいことって少ししか書いてないので、そこを深掘りしたほうがよいのではないかと。やりたければ学べるし、スキルも上がります。
佐藤:それって、さくらでは求められていないという可能性も出てくるわけですよね。
田中:そうですね。スキルはあっても、うちではないですねという話にもなります。とはいえ、なければ作ればいいんだし、多様性のタネになるかなと思います。
栗栖:僕がめちゃめちゃ勉強になってますね(笑)。
佐藤:はてなさんって近藤さん自体がすごく尖っていた人だったから、言語化しなくても成立していた部分があったと思うんですね。
当時のユーザーが10年経ってインターンでやってくる
田中:逆にお聞きしたいんですけど、はてなのユーザーさんというか、はてな的な人が入社するパターンであるんですか?
栗栖:エンジニアではてなのユーザーですという人はけっこういます。僕が数年前に作ったバリューの中に「はてなが好き」というのは入っていて、会社はもちろん、はてなのサービスを好きでいて欲しいという内容ですね。
田中:全然余談なんですけど、うちってペパボさんに比べてUI/UXがイケてないんです。
佐藤:そんなことないですよ(笑)。
田中:最近は専門のチームを作ったこともあって、すごくよくなってきたんですけど、5年前はけっこうひどかったので、レンサバチームに入る人はけっこうな割合で「コンパネを変えたい」と言うんです。要は自分が使っているサービスなので、目に余ったんでしょう。だから、採用で重視するのってやはり自社サービスだと思うんですよね。自社サービスがイケてたら、人も来る。会社の文化って、サービスやプロダクトに出ますよね。
栗栖:そう考えると個人向けサービスをやっている強みってありますね。2008年頃に任天堂さんといっしょに「うごメモはてな」を作りました。これってNintendo DSでパラパラマンガを描いて投稿するというサービスなんですけど、当時はなんでこんなことやってんのみたいな声ありました。すごい儲かるわけでもないし、トラフィックという観点ではさくらさんにかなり迷惑をかけました。
田中:いえいえ。そんなことないですよ。
栗栖:でも、あれから10年経って、当時12歳~13歳だったうごメモはてなのユーザーが、はてなにインターンで来るんです。「はてブ知ってます」みたいな声の中に、たまに「うごメモで、遊んでました」という声が混ざるんですよ。やっててよかったとつくづく思いました。