このページの本文へ

ユースケースにフォーカスしたエンドトゥエンドのソリューションを展開、AI戦略を担当幹部に聞く

Dell EMCのAIソリューションは「複雑なものをシンプルに」

2018年07月17日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 AI/機械学習技術をどう活用するべきか――。取り組みに二の足を踏む企業に対し、Dell EMCは“すぐに始められるAI”のソリューション群を構築している。中心はPowerEdgeサーバーなどのハードウェアだが、専門知識とコンサルティングにより顧客はシンプルにAI適用を開始できるという。Dell EMC クラウド&ソリューションズ担当バイスプレジデントKash Shaikh(キャッシュ・シェイク)氏に話を聞いた。

Dell EMC クラウド&ソリューションズ担当VPのキャッシュ・シェイク(Kash Shaikh)氏

――Dell EMCのAIに対するアプローチは?

シェイク氏:DellとDell EMCは、AI、機械学習、深層学習(ディープラーニング)の機能をデスクトップからデータセンターまでエンドツーエンドで提供している。わたし自身は、Dell EMCのISG(インフラストラクチャ・ソリューションズグループ)で、製品をまたいだ水平方向のソリューションに責任を持つ。データアナリティクス、機械学習と深層学習などのソリューションだ。

 われわれのソリューションへのアプローチでユニークな点は、ワークロードにフォーカスしている点だ。ワークロードを考えた後、完全なソリューションを提供するのに必要な、サーバーやストレージなどのインフラ技術を見る。ポイント製品を提供するのではない。たとえばAIと機械学習のソリューションでは、顧客にシンプルさを提供する。これにより、顧客は詳細を深く気にすることなく利用できる。

 AIは新しい技術だが、すでにビジネス適用を始めていたり、適用に向けた具体的な作業を進めているアーリーアダプターがいる。われわれはこのような企業に対し、製品とサービスで支援している。

 多くの顧客企業は、どうやってスタートするかを検討している段階だ。多くの企業がAIや機械学習について理解しているし、GPUも知っている。これらを使ってビジネス上の問題を解決し、アウトカム(成果)を得ようとしている。Dell EMCは、問題の解決にAIを適用するまでのプロセスを「シンプル」にすることを重視している。

 それを実現するために、いくつかの角度から見ている。まずは製品が必要だが、われわれは先にサーバー製品「PowerEdge C4140 Server」を発表した。C4140は、AIや機械学習/深層学習、ビッグデータ分析のアプリケーション向けサーバーで、最大500テラFLOPSを実現するアクセラレーション技術、次世代のGPUサポートなど高いキャパシティを提供する。14世代のPowerEdgeサーバーラインの一部であり、Dell EMCのAIソリューションの主要な構成要素となる。

AI/機械学習ワークロード向け「PowerEdge C4140」サーバー。1U2ソケットのサーバーに最大4つのGPU/FPGAを搭載できる

 これに加えて、顧客がAIスタックで必要としているものは何かもみている。どのアクセラレーター、どのOSを必要としているのか、そしてこれらの上でどのフレームワークを使うかを考える必要がある。PowerEdge C4140はTensorFlow、Caffe、BigDLなどのフレームワークをサポートしている。我々はアーリーアダプターとともにラボで検証を行っており、検証済みのAIスタックを提供する。顧客はこれを利用して、当て推量での作業をすることなく、すぐにAIをスタートできる。データサイエンティストは稀なスキルセットであり、彼らが本業に集中できるように環境を整える必要がある。

 「AIコンサルサービス」も提供する計画だ。どうやってデータレークを設定するか、といった課題の解決を支援する。ここでも目標は、顧客が少しでも早期にAI適用を始めて問題を解決することにある。

 顧客に提供するソリューションや製品の開発の土台となっているのが、Intel、NVIDIAなどとの協業だ。AIに対応するワークステーション(「Precision WorkStation」)、データセンター(PowerEdgeサーバーなど)、そしてクラウド対応製品と、エンドツーエンドのソリューション群を提供する。これは競合に対する重要な差別化だ。AIの採用において、アーリーアダプター、これから始める顧客と、さまざまな段階にある顧客を支援できる。

――AI時代のインフラに対するDell EMCの最適解は?

シェイク氏:企業は「シンプルさ」を求めている。シンプルさを得るために、クラウドを利用するというのがこれまでの方法だったが、AIや機械学習/深層学習の領域では大量のデータを処理して洞察を得る必要がある。こうしたデータをすべてクラウドに動かすとなると、コストやネットワークのパフォーマンスが大きな問題になる。

 つまり、AIや機械学習のアプリケーションにとって、クラウドインフラは必ずしも最適解とは言えない。そこでわれわれは、そうしたアプリケーション向けに、クラウドのようなシンプルさをオンプレミス環境で提供することを目指している。AIを導入する顧客は、こうしたことを踏まえてインフラを考える必要がある。

――AI領域におけるDell EMCソリューションの導入事例は?

シェイク氏:エアロファーム(AeroFarm)という農業系のベンチャー企業は、IoT技術を使い、日光や土を利用することなく野菜を栽培している。同社はDell EMCのIoTゲートウェイなどの技術を利用してデータアナリティクス基盤を構築しており、AIの適用も現在検討中だ。

 同社ではデータ分析によって栽培に使う水を95%削減し、エネルギー効率も改善している。平方フィートあたりの生産性は、一般的な畑の最大390倍に達している。

 エアロファームではわれわれのコンサルティングサービスを利用しており、最初はIoTワークショップを受講した。そのうえでIoTゲートウェイを利用し、栽培環境の湿度や水の量、位置などの情報を収集している。たとえば、与える水の量や光の量を決めるために、マルチイメージングカメラで作物の生長具合や色を監視するといった具合だ。現在のところ、カメラで取得したイメージは手作業で分類しているが、ここに機械学習を適用して、イメージのタグ付けを自動化する計画だ。先ほど紹介したPowerEdge C4140サーバーの導入を検討している。

 またマスターカード(MasterCard)では、ビッグデータ解析と機械学習の技術を用いて、カード詐欺などの不正取引を自動で検知、ブロックする仕組みを構築している。すでに社内にデータが存在しており、プロセスの一部を自動化する。これは既存の企業が始めやすいパターンだろう。

 マイケル(・デル氏)は「AIがロケットならば、データはその燃料だ」と形容したが、1)データの量が十分にそろったこと、2)データの処理能力が求めやすい価格になったこと、の2点が現在のAIブームを後押ししている。Dell EMCにはデータアナリティクスの専門知識があり、その次のステップとして機械学習につなげることができる。

 データを収集し、機械学習や深層学習を適用して差別化につながるサービスを提供することで顧客満足度を向上させ、新規顧客も獲得する――。AIの導入によって“良いサイクル”が生まれるが、そのためにはAIに向けたジャーニーを迅速にスタートしなければならない。われわれは複雑さを排除した、シンプルかつエンドトゥエンドのソリューションを提供する。

――“デジタルネイティブ”ではない企業の中には、機械学習や深層学習のテクニックが多すぎて、何から始めればよいのかわからないという企業もある。

シェイク氏:2017年後半に大企業を対象に行った調査では、68%の顧客が機械学習と自動化に興味を持っていると回答している。ただし「検証中/現在使っている」としたのは、そのうちの18%に過ぎない。つまり「興味があるのに、実行に至っていない」、ここに大きなギャップがある。その残りが、あなたが指摘する「どう始めればよいかわからない」段階の企業だろう。そこでわれわれは、いくつかのことを推奨している。

●自社がやろうとしていること、どういう業務用途でAIのメリットが得られるのかを明確にする。

 たとえば医療/ヘルスケアの業界であれば、AIによる画像認識技術が活用できるかもしれない。この段階ではまず「データ」にフォーカスして、スモールスタートする必要がある。すべてのデータセットを使うと時間がかかるので、自分が解決したいことに応用できる、正しいデータセットだけを選択して使うことだ。成功したら、取り組みをスケールさせていけばよい。これにより、課題がどこにあり、ボトルネックがどこにあるのかもわかる。

●Dell EMCのような専門知識を持つパートナーと組むこと。自社だけで取り組むのは限界があり、外部の専門家は活用すべきだ。

●できるだけ早くスタートすること。それにより競争優位に立つことができる。

――Dell EMC自身が提供するシステム管理ソリューションなどで、AIを活用する考えはあるか。競合するHPE(Hewlett Packard Enterprise)は、管理ソリューションでのAI利用を積極的に進めている。

シェイク氏:われわれは“ベスト・オブ・ブリード”アプローチを取る。

 自社開発も進めているが、今年3月にはブライトコンピューティング(Bright Computing)との提携を発表している。ブライトはLinuxクラスタの管理ソフトウェアからスタートし、現在はAIスタックの管理製品も提供している。これを利用して、ITインフラをクラスタとして管理できる。コマンドラインインターフェース(CLI)ではなくGUIベースのソリューションで、管理と実装を簡素化できるのも特徴だ。Dell EMCは密に協業しており、われわれのソリューションの一部として提供できる。

 われわれはソリューションビジネスというよりも「ソリューションリーダー」としてふるまい、パートナーによる技術も含め常に最適なものを提供していく。

■関連サイト

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    訓練だとわかっていても「緊張で脇汗をかいた」 LINEヤフー、初のランサムウェア訓練からの学び

  2. 2位

    ITトピック

    若手が言わない“本音の退職理由”上位は/「データ停止は景気後退よりも企業の脅威」6割/クライアントに告げずAI活用するフリーランス、ほか

  3. 3位

    ビジネス・開発

    最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

  4. 4位

    Team Leaders

    ファイル名が命名規則に合っているかの自動チェック、Power Automateのフローで実現しよう

  5. 5位

    TECH

    “GPUなし”ノートPCで動くLLMで、ローカルAIエージェントを自作する

  6. 6位

    TECH

    糖尿病超早期を採血なしで検出、予防へ! 代謝や臓器のつながりに着目した予防法開発

  7. 7位

    ビジネス

    廃校がAIの心臓部に!? 地方の遊休施設を「AIデータセンター」に生まれ変わらせるハイレゾの挑戦がアツいぞ

  8. 8位

    データセンター

    液冷技術の最先端が集うイノベーションラボ「DRIL」、印西のデータセンターに現わる

  9. 9位

    TECH

    業界横断で“サイバー攻撃から供給網を死守” NTT・アサヒ・トライアルらが「流通ISAC」始動

  10. 10位

    Team Leaders

    バックオフィス業務もAIに“丸投げ” マネーフォワードが「Cowork」機能を2026年7月に投入へ

集計期間:
2026年04月08日~2026年04月14日
  • 角川アスキー総合研究所