2種の「Ready Solutions for AI」や導入コンサルティング、データサイエンティスト人材育成まで
AI/機械学習導入を簡素化するパッケージ、Dell EMCが提供開始
2018年12月05日 07時00分更新
デルとEMCジャパン(Dell EMC)は2018年12月4日、企業におけるAI導入を簡素化するパッケージソリューション「Dell EMC Ready Solutions for AI」の国内提供開始を発表した。事前検証/最適化済みのハードウェア/ソフトウェアコンポーネントをパッケージ化し、迅速で効率的な導入を実現する。さらに同ソリューションの導入支援コンサルティング、データサイエンティスト育成トレーニングなどのサービスも併せて提供し、顧客企業におけるAI/機械学習基盤の導入と高度なビジネス活用を支援する。
ハードウェア/ソフトウェアを事前検証/最適化済みで提供
Dell EMCがReady Solutions for AIとして国内提供を開始したのは、「Deep Learning with NVIDIA」「Machine Learning with Hadoop」という2つのパッケージソリューション。いずれもハードウェア/ソフトウェアを事前統合/検証/最適化済みで提供する。
Deep Learning with NVIDIAは、ディープラーニングにまつわる開発/学習/推論などの実行基盤を提供する統合ソリューション。マスターノード/計算ノード/共有ストレージをInfiniBand EDRネットワークでクラスタ接続したハードウェア環境に、オープンソース(OSS)のディープラーニングフレームワーク(TensorFlow、Caffe/Caffe2、MXNetなど)やコンパイラ、ライブラリ、ジョブスケジューラー、データサイエンティスト向けポータルといったソフトウェアコンポーネント群を載せて構成している。
クラスタ部には、マスターノードに大容量ストレージ内蔵の2U2ソケットサーバーの「PowerEdge R740xd」を、計算ノードにNVIDIA GPUを最大4基搭載できる1U2ソケットサーバー「PowerEdge C4140」を、また共有ストレージにはスケールアウトNASの「Isilon」をそれぞれ採用する。
またデータサイエンティストポータルはOSSの「Jupyter Notebook」ベースで構築されており、データサイエンティストはこの画面からさまざまなディープラーニングモデルを用いて開発/学習/推論の作業を行うことができる。またクラスタ管理ソフトウェア「Bright Cluster Manager」とも連携しており、クラスタ設定やプロビジョニング、監視といったハードウェアレイヤの作業も容易にできるようになっている。
Machine Learning with Hadoopは、ビッグデータ基盤としてHadoop環境を導入済みの顧客が、そのデータを機械学習で簡単に活用できるようにするソリューション。Hadoop基盤上に、データサイエンティスト向けツール群/セルフサービス環境の「Cloudera Data Science Workbench」や、「Apache Spark」向けのOSSディープラーニングライブラリ「BigDL」などのソフトウェアコンポーネントと、その実行環境となるハードウェア(PowerEdge R640、R740xd)を追加する。
デルでは同ソリューションの導入効果として、「データサイエンティストの生産性30%向上」「AIインサイト取得が他社製品比最大2.9倍のパフォーマンス向上」「AI専門知識の提供でトレーニング時間を98%短縮」といった数字を挙げアピールしている。
Ready Solutions for AIの価格(税抜)は、Deep Learning with NVIDIAが5561万円から、Machine Learning with Hadoopが2493万円からとなっている。
両パッケージソリューション以外の関連サービスとして、ソリューションに含まれるツール群の使い方や選択方法のアドバイス、ベストプラクティスの提供などを行う「Ready Solution for AI導入サービス」や、最短6カ月でAI/データサイエンス業務を自律的に実施できるよう人材育成を行う「データサイエンティスト育成プログラム」も提供する。
さらに東京・三田にある「Dell EMCカスタマーソリューションセンター」内にReady Solutions for AI環境を設置し、機能体験や検証/POCを実施できるように整備したことも発表している。
記者発表会に出席したデル インフラストラクチャ・ソリューション事業統括 ソリューション本部 本部長の正田三四郎氏は、今回発表したReady Solution for AIや導入コンサルティングは「すでにデータ分析に取り組んでおり、今後さらにAIでインサイトを深掘りしたい」企業層、またデータサイエンティスト育成プログラムは「AIのビジネス活用に取り組みたいがどこから手を着ければよいのかわからない」未経験層を主要なターゲットにしていると説明した。
サーバービジネス、次の狙いは「高付加価値ワークロード」
デル 執行役員 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 製品本部 本部長の上原宏氏は、第14世代のPowerEdgeサーバービジネスは順調に推移しているが、次なる一手として「高付加価値ワークロード(Value Workload)分野向けのサーバーソリューション」の展開に注力していく方針だと語った。今回発表されたReady Solutions for AIはその「第一弾」であり、すでに来年(2019年)には第二弾、第三弾ソリューションの発表も予定しているという。
Dell EMCの分析によると、現在(2015年時点)のオンプレミスデータセンター製品市場はおよそ480億ドル規模あるが、将来的にはサーバー製品の高性能化やクラウド活用の浸透に伴って、既存のシンプルなワークロード向けサーバーの出荷台数は停滞や縮小が見込まれる。他方で、ビッグデータ分析やAI、データ管理、高度なビジネスアプリケーションなどの高付加価値ワークロードに対する企業のIT投資意欲は強い。そこで、今回のような高付加価値ワークロード向けサーバーソリューションに注力していく戦略だと説明した。
「今回の発表は、Ready Solutions for AIからコンサルティング、データサイエンティスト育成、パートナー連携など、顧客のAI導入がスムーズになるような仕組みを提供するというものだ」(上原氏)
またデル 最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏は、日本社会の抱える大きな課題として「労働人口の減少」と「労働生産性の低さ」があり、その解決のためには「どうしてもAIをうまく活用しないかぎり、これからの将来はないと思う」と述べた。
「総務省も『ICT活用による持続的成長』というビジョンを掲げている。また、AIをうまく使うという競争は世界的なものになっている。日本でのAI活用を進めていくために、デルとしても協力していきたい」(黒田氏)
なお今回のAI/機械学習の活用促進施策のひとつとして、Dell EMCでは「AIパートナー連携の推進」も挙げている。説明会にはAIパートナーの1社であるインテージテクノスフィア 代表取締役社長の饗庭忍氏も出席し、Dell EMCが提供する「製品」「サービス」とインテージによる「支援」が“三位一体”となることで「本当のAI活用事例が出てくるだろう」とあいさつした。
