SORACOM AirのLTE-M版やAWS IoT 1-Clickデバイス、KやLのサービスも登場
事例もサービスも進化し続けるソラコムが最新動向を披露
AWS IoT 1-Click対応のボタンデバイスにLTE-Mモジュール搭載
ネットワークだけではなく、クラウドにおいても多種多様な選択肢を提供するソラコム。「Cloud Agnostic」というテーマで語ったのは、クラウドサービスとの緊密な連携だ。
まずはクラウドサービスと直接データをやりとりできるSORACOM Funnelのクラウドアダプターに関しては、SPSパートナー製のものが増加し、このたびテラデータのデータ分析プラットフォームである「IntelliCloud」向けのアダプタが追加された。また、Amazon Kinesis Video Streamsとの連携も発表され、SORACOM経由で流されるビデオストリームの認証やフォーマット変換が可能になった。
玉川氏の古巣でもあるAWSとSORACOMのサービスは緊密な連携も図られている。ゲストとして登壇したアマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏は、「お客様中心」というカルチャーがAWSとソラコムで共通していると指摘。その上で、IoTのデバイスが世界の人口をはるかに超える勢いで拡大していくという見込みを示し、国内初となる「AWS IoT 1-Click」サービスに対応したボタン型デバイス「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」を披露した。
AWS IoT 1-ClickはAmazon Dashボタンのようなワンボタンオペレーションを、ユーザー側のIoTシステムに組み込むためのクラウドサービス。AWS Lambdaと連携することで、事前に定義したLambda関数を利用し、メールやSMSの送信、独自のビジネスロジックの実行が可能になる。今回発表されたSORACOM LTE-M Button powered by AWSには、LTE-Mの通信が可能なSORACOM Air for セルラー plan-KM1のモジュールが組み込まれており、Wi-Fiのつながらない環境でもワンボタンでのオペレーションが実現する。省エネ性能も優れており、単4乾電池2本で駆動し、電池交換も可能だという。
用途としては商品発注のほか、特定のキー操作、機器の交換タイミングの通知、ゴミ箱のゴミ回収時の通知、施設のアンケートなどが想定されている。プロトタイプ開発のみならず、ビジネス向けの製品やシステムでの利用も想定しているという。
通常価格は約8000円を予定しているが、個数・期間限定のキャンペーン価格として3980円(税別・送料別)を予定している。デバイス費用には1年間のSORACOM Air for セルラー plan-KM1」の基本料金と1500回分のクリック時のデータ通信料金が含まれており、延長手続きで1年以上の利用も可能。今年度下期から発売開始される予定となっている。
セキュアプロビジョニングを可能にするSORACOM Krypton
基調後半の後半、新サービス紹介のために登壇したのは、ソラコム CTOの安川健太氏。安川氏は、PoCから大量生産を前提としたプロダクションフェーズに移行するユーザーが大幅に増えたことを受け、きめ細かい通信や料金設定を提供しているグローバルSIMのメリットをアピール。スマートウォッチにSORACOMを採用したADX.NETや見守りサービスをルーターに組み込んだottaとアイ・オー・データ機器など、デバイスに直接埋め込めるチップ型SIMの導入事例を披露した。また、デバイス管理を可能にするSORACOM Inventryの事例として、ビニールハウスや畜舎の環境情報収集を行なっているCKDについても紹介した。
今回新たに発表されたのは、デバイスのセキュアなプロビジョニングを可能にする「SORACOM Krypton」になる。「SORACOM SIMがあれば、アクセス回線によらず、セキュアにSORACOMに接続できる。ということは、アクセス回線によらず、どんなクラウドサービスにもデバイスをセキュアに接続できるのではないか?ということで着想を得た」(安川氏)というサービスだ。
通常、デバイスをクラウドにつなぐ場合は、デバイスとユーザーをクラウドに登録し、入手した認証鍵や接続情報をデバイスにコピーすることで、実際の認証と接続が可能になる。しかし、PoCならともかく、プロダクション環境の大量のデバイスに対してこれを行なうのは非常に負荷が重い。コピー時のデータ漏えいリスクもあり、生産工程で個別に埋め込むのは納期やコストにも影響を与える。
これに対してSORACOM KryptonではSIMで認証を行ない、デバイスの登録処理や接続情報の組み込み、セキュアな接続を確立するまでのプロビジョニングを自動化する。SIMによる認証は強化されたSORACOM Endorseを活用し、セルラー回線経由で専用エンドポイントに接続したり、Wi-Fiや有線を含む任意のアクセス回線でSIM AKA(Authentication and Key Agreement)認証を行なうことで実現する。
SORACOM Kryptonの登場により、プロダクション環境のプロビジョニングの負荷を軽減するとともに、用途に合わせてアクセス回線を選択することが可能になる。今までのようにマイコンやセルラー接続のみのライトエッジなデバイスに加え、監視カメラやロボット、ドローンなどエッジヘビーなデバイスまで幅広くSORACOM上で利用できる。
ダッシュボード作成や共有が可能なSORACOM Lagoon
また、ソラコム プリンシパルソフトウェアエンジニアの片山暁雄氏からは、ダッシュボードの作成や共有が可能な新サービス「SORACOM Lagoon」が発表された。
「総合格闘技」とも言われるIoTの領域では、センサー、ゲートウェイ、通信、データ収集、可視化などさまざまな機能が必要になる。このうち可視化に関しては、デバイスのデータを簡単に見られるSORACOM Harvestのサービスが用意されており、特に成長も著しいサービスになっているという。しかし、ユーザーからは「複数のデバイスのデータを並べてみたい」「表示期間や表示軸を設定したい」「しきい値を設けて、アラートを出したい」「現場の人と共有したい」などの要望が出ていたという。こうした声に応えるサービスが「入り江」を意味するSORACOM Lagoonになる。
OSSのGrafinaをベースに開発されたSORACOM Lagoonは、SORACOM Harvestをデータソースに、数値やグラフを組み合わせたダッシュボードを自由に作成し、他のユーザーに容易に共有できる。たとえば、農業のIoTのデータをSORACOM Harvestで蓄積し、SORACOM Lagoonのダッシュボードで現場の農家に共有するといった使い方、工場設備のデータを並べたダッシュボードをSORACOM Lagoonで作成して、担当者で閲覧するといった使い方などが考えられるという。PC版やスマホ版も作成でき、アラートも設定可能だ。
ここまででも十分高機能だが、複数のデータソースを使ったり、既存のシステムの連携、複雑な可視化、機械学習や業界特有のロジックを使った分析などは、やはりSORACOMパートナーのソリューションやアダプターが必要になるとのこと。その意味では、カスタマイズ可能なパートナーソリューションとシンプルなSORACOM Harvestの間を埋める機能と言える。
その他、基調講演にはデバイス補償サービス「AOSORA」を提供する東京海上日動火災保険や次世代エネルギープラットフォームの構築にソラコムのサービスを採用する日本瓦斯などが登壇。Makersムーブメントに対応するリファレンスデバイスや最新のアイコンセットのリリース、企業向けのSORACOMユーザーグループである「eSIM(Enterprise SORACOM Innovation Meister)」の発足なども発表され、盛りだくさんの内容となった。1万ユーザーを突破した勢いに載って、サービスも、事例もどんどん進化させ続けているソラコムの今が理解できる基調講演だった。
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