「ネットカルチャー教室」ただいま開講中 第21回
災害時に多発する「本当ではない情報の錯綜」
大阪地震直後に熊本市長がTwitterに投稿した「デマにご注意」というファインプレー
2018年06月19日 19時00分更新
2017年7月に総務省情報通信政策研究所が公表した「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の統計によれば、いま、10代と20代の若い世代の人たちの間で最も利用率が高いのは「LINE」であり、実は「若者はLINE離れしていない」という話を前回の記事で紹介しました。
そして、LINEに次いで、10代、20代ともに利用率が高いソーシャルメディアは「Twitter」です。平成28年は、Twitterを利用している10代の人たちが61.4%、20代の人たちは59.9%。若い世代の人たちは「FacebookよりもTwitterを選ぶ」傾向にあります。これは統計の結果と同じような印象を、私たち大人も感じているのではないでしょうか。
Facebookは、30代や40代以上の世代が上の人たちが利用する傾向が多いように感じます。ゆえに、若い人たちはFacebookよりもTwitterを利用しているのではないでしょうか。また、Facebookは「友達になる」ためのリクエストや承認のやりとりを相手と必要がありますが、相手の承認を得ずとも、学校などのリアルな世界を超え、年代や趣味などが共通である「自分の気になる人」を自由に選んで「フォロー」してつながっていける手軽さもあって、Twitter(さらにはInstagram)が若い人たちに選ばれているのかもしれません。
また、いまの若い世代の人たちは、テレビやラジオではなく、「ネットで世間の情報を得ている」ことは私たち大人も周知の通りです。その代表となるのは、利用率が高いLINEアプリの「ニュースタブ」。その次は、利用率が高いTwitterの「タイムライン」から情報を得ているような印象を受けます。
今回の震災においてもデマの情報がTwitterをめぐる
先日6月18日(月)午前8時頃に最大震度6弱を観測した大阪府北部を震源とした地震では、公共交通機関をはじめ、生活のさまざまなところで大きな影響と混乱を与えました。発災直後、大人だけでなく、子どもたちも、身のまわりでいまどのようなことが起きているのかを情報収集するために、Twitterを開いた人も多かったのではないでしょうか。
2011年の東日本大震災以降、こうした自然災害があるたびに、メディアなどで取り上げられて話題となるのは、ソーシャルメディア……とくにTwitterにあふれたデマ(根拠のない噂や流言)に関することです。
今回の災害では、発災後の早い段階から「京セラドーム大阪の屋根に亀裂が入っている」「京阪電車が脱線している」「シマウマが脱走」といった情報がTwitter上で広がっていきました。
もちろん、これらの情報は誤りであることも、のちにTwitterで広がっていきます。しかし、発災の直後はTwitterで流れてくる情報も錯綜し、それが「本当の情報なのか、それとも誤りの情報なのか」を判断することが難しいのが現状です。とくに人命に関わる緊急度の高い情報であればなおさらです。
こうした根拠のない誤った情報は、投稿する人が「最初から混乱をさせることを目的とした悪意がある情報」だけに限りません。そもそも悪意はなく「善意で情報を投稿したものが結果的に誤りとなる情報」や「投稿当時は正しい情報であったものの、時間の経過によって誤りとなる(古くなった)情報」など、さまざまなものがあります。
この連載でも以前紹介したように、2016年4月14日に発災した熊本地震でも、いくつかのデマの情報がTwitterで広がっていきました。そのうちのひとつは「熊本の動物園からライオンが逃げ出した」という事実に反する噂(デマ)の情報。この投稿をした男性は、その後同年7月に熊本市動植物園の業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで逮捕され、2017年3月に不起訴処分(起訴猶予)となったことは、多くの人の記憶に残った大きな出来事でしょう。
こうした熊本地震での教訓から、熊本での震災の陣頭指揮をとった熊本県熊本市の大西一史市長が今回の大阪地震発災直後にTwitterなどにおけるデマへの注意喚起を投稿しています。
【デマにご注意】熊本地震時の経験から、情報の発信元にはみなさん十分注意して信頼できる情報なのかどうか?今一度十分に確認をして下さい。未確認の情報をむやみにリツイートせず、情報の真偽を確かめてから責任をもってツイートして下さい。
— 熊本市長 大西一史 (@K_Onishi) 2018年6月18日
大人だけでなく、子どもたちも、こうした自然災害のような一刻を争うときに、改めてこれらのことを再認識したうえで、ネットを通じて情報を得る必要があります。
自身が情報を見極める力を備え続ける必要がある
こうした災害では、被害を受けた自治体や公的機関は、混乱が起きているなかで寄せられる情報を基に、寄せられた情報を現地へ赴き確認する作業のほうに労力をとられてしまうことがほとんど。そして、ソーシャルメディアでの情報発信まで手がまわせないことが多いのが現実です。
このため、自治体や公的機関が非常時にソーシャルメディアで正しい情報を伝えていくことが難しく、これまで災害時の課題としてずっと抱えています。つまり、早いスピードでどんどん広がっていってしまうTwitterの誤った情報を(正しい情報を出す時間がなく)打ち消していくことができないことがほとんどでした。
しかしながら、先の熊本地震で自治体の首長がもつ自身のTwitterアカウントによる、被害にあった人たちや、被害を心配する人たちに向けた情報を発信したことによる「意義」が広がりました。そこで今回の地震では、その教訓が生かされ、被害を受けた自治体や公的機関のTwitter公式アカウントなどによって、発災直後から積極的に正しい情報を発信するところが増えたようにも感じています。
これによって、Twitter上で流れてくる誤った情報を比較的早い段階で打ち消すことができ、正しい情報をネットでいち早く得られるようになりつつあります。
Twitterは「良くも悪くも情報の伝播がもっとも速いメディア」であり、「リアルタイムな情報を場合によってはメディアよりも早く得ることができる」のが利点です。その一方で、こうした自然災害が起きるたびに、Twitter上で誤った情報が流れてくることは多かれ少なかれこの先も避けることはできないのだと思います。
だからこそ、常に新しい情報を求めてTwitterで常に接している子どもも大人も、こうした自然災害が発生する非常時だけでなく、平時から「本当に正しいのか?」と情報を選別する力を一緒に備えていく必要があると改めて感じました。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com
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