照射部は取り外し可能、自作フレームなども利用できる
麻倉 民生用ではどんな用途を想定していますか?
手嶋 最終的に目指すのはスマートグラスです。どこを見ていても映像を見られますし、乱視や近視・遠視といった屈折異常に影響されず見ることができます。まずはB2B用途やギーク向けの製品としてリリースし、一緒に面白い使い方を考えられればと考えています。スマートフォンを接続すれば情報ディスプレーになりますし、スマートフォンの表示系が今後メガネ型に収束していった場合でも、対応できる機器を目指しています。
他のARグラスとの最も大きな違いは、外側からは何を見ているのか、わからない点です。投影部をメガネの内側に入れられる点も技術者のこだわりポイントで、これをどんどん小さくしていけば、かけている本人しかわからない状態にできる。つまり視覚障碍者の方が身に着けていても目立つ外観にならないということです。光学部品自体をどんどん薄く・小さくする研究も進めています。
麻倉 将来的に目指すのは、完全ワイヤレスでしょうね。第1号製品は、すこしごつい印象ですが、フレームのデザインにも気を配ってほしいですね。
手嶋 両手で押さえて固定したり、ケーブルのテンションがあったりとまだまだ使いにくい面があるのは理解しています。ただメガネの形になっていますが、プロジェクター部分は簡単に取り外せますので、自作のフレームを利用したり、既存のHMDを改造したりしていただくことも可能です。RETISSA Displayはあくまでも「ライトフライヤー1号」みたいなもので、とにかく飛んでみようというものです。まずは網膜投影で映像を見てもらいたい。そのために必要十分な機能を提供する。医療用を出すまでの間に民生機を改良し、プロダクトラインを強化していきたいと考えています。
麻倉 いまは片目だけの表示ですが、欲を言えば両目にしたい気もします。
手嶋 実は2台買えば、現状でも両眼視用のHMDにできます。視差を使って立体感を出すことも技術的には可能です。1台でも高価な機種なので、2台買うというのは現実的ではないかもしれませんが……。
麻倉 RETISSA Displayの開発に当たって、もっとも苦労した点は何でしょう?
手嶋 やはり小型化でしょうか。コントロールボックスのサイズですね。ただ事実だけを述べると、海外の展示会で近いことをしている企業だとアタッシュケースぐらいのサイズで、そこにファンが付いていたりします。この比較だけでも、小型化や放熱の面で数年先に進んでいると考えています。
麻倉 テレビではなく、まったく新しいアプリケーションが誕生した気がします。いわばディスプレーが自分と一体化した感覚が味わえるデバイスです。より世界に入っていける感じがありますよね!!