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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第213回

結局キーボードは消えゆく存在か

2018年05月18日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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未来のキーボードのストロークは
果てしなく0mmに近づいていく?

 そんなキーボードを叩くのが好きな筆者も、キーボード以外の手段の比率が高まっていることも実感しています。

 たとえば、音声入力。チャットやメッセージの返信、メールやメルマガ原稿などは、どちらかというと音声入力の方が向いているように思います。スマートフォンでの文字入力はちょっと面倒だなと思うと、ついついスマホのキーボードのマイクボタンを押してしまいます。

 前述の目的を含めたコミュニケーション用途はほぼ100%、物理的なキーボードを利用しなくなってしまいました。その延長で、検索やアプリの起動なども声でこなすようになり、Siriの不甲斐なさにストレスを感じることも。音声アシスタントはやはり、音声での文字入力の体験が増えることで活用が伸びるのではないかと思っているところです。

 この原稿はなじんだキーボードを使っていますし、頭で考えて指で入力する方が詰まらず、スラスラと文字が書けるような感覚もあるのですが、そのうちこれらも音声入力の方がいい、なんて思うようになるのかもしれません。

 さて、冒頭のキーボードの話に戻りますと、外付けキーボードからノートパソコンが主流になり、タブレットやスマートフォンのようなタッチパネルディスプレイ内でのキーボードの再現が当たり前になってくる経緯の中で、失われていたのはキーの深さです。

 手元で気に入って使っているPFUのHappy Hacking Keyboardシリーズは3.8mmから4.0mmという深さですが、スマートフォンやタブレットのキーボードは0mm、つまり押下げできないキーボードということになります。しかもフリックでこすって使っていて、深さが関係なくなってしまいました。

普段愛用しているHHKB BT。こちらは4mmの深さがあります。なおHHKB Professional 2 Type-Sは3.6mmの深さに調整されています

 ちなみにGoogleは2016年のエイプリルフール向けに、物理フリックキーボードを作成しました(https://www.google.co.jp/ime/furikku/)。小型のジョイスティック用スイッチを12個用いて、押し込み、上下左右4方向への傾きの入力に対応する仕組みです。エイプリルフールの話題になるぐらいですから、フリック入力のキーボードは実現し得なかったデバイスだった、というわけですね。

 おそらく今後も、キーボードの類はこの0~4mmという深さの間で、限りなく0mmに近づいていくのではないかと予想しています。MacBookシリーズのバタフライキーボードはまだ1mm程度の深さがありますが、かなりのところまで進行していることがわかります。

iPad Pro 10.5インチとSmartKeyboard。手元のキーボードはキー全体をファブリックで覆っているため、メカニズムの中にホコリは侵入できませんが、打鍵感は極めて薄くなっています。一方画面にもキーボードが表示されており、比べると画面のキーの方が大きいです

 今回の問題を受けてAppleは、ホコリが詰まりにくいキーボードのアイディアを試すと同時に、キーストロークゼロのMacBookシリーズ向けキーボードへと、その歩みを早めるかもしれません。果たしてそれが使いやすいのか、あるいは早い段階で慣れることができるのか。

 個人的には、なんらかの形で「打鍵感」が残ってくれるとうれしいのですが。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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