CPUに直結すると
今度はIRSTが使えない
「PCHにつなげるから悪いわけで、CPU側のPCIeスロットに直結すればいいのでは?」というが次のアイデア。下図の構成である。
ビデオカードを使わないのであれば、これも1つのやり方ではあるが、実際は上手くいかない。これはRAIDのためのソフト(IRST:Intel Rapid Storage Technology)が、CPU側のPCIeに接続するストレージを管理してくれないためである。
OSからはストレージとして認識できる「はず」(*1)なので、例えばWindowsのファイルシステム側でミラーリングやストライピングを構築するのは可能だが、こちらではRAIDの処理をCPUで行なうため、猛烈にCPU負荷がかかることになり、これがボトルネックになる。
(*1) 筆者もM.2では試したことがない。ただRAIDカードをCPU側のPCIeに装着する分にはちゃんと動作するので、おそらくOSからは認識できると思われる。
インテルのチップセットの場合、昔からRAID処理のためのエンジンをチップセットに内蔵しており、これを利用してRAIDを構築する仕組みになっているが、上の構図ではエンジンにM.2 NVMe SSDが接続されていないので、IRSTでサポートできない。
このように、既存のプラットフォームで多数のM.2 NVMeドライブを使おうとすると、いろいろ制約があることがおわかりいただけただろう。
CPU側にもRAIDエンジンを搭載して
ボトルネックを解消
この解決策として、インテルがCore-Xにあわせて導入したのがVROCである。VROCの構造は下図で、一見CPU側のPCIeスロットに直結する構成と大差ないのだが、最大の違いはCPU側にもRAIDエンジン(Intel VMD)が搭載されたことだ。
もともとCore-Xの場合、KabyLake-XベースのCore i7-7740XとCore i5-7640Xを除くと28レーンないし44レーンのPCIe Gen3をCPUから利用できる。
28レーンのCore i7-7800X/7820Xでもビデオカード+M.2 NVMe SSD×3が接続できるし、44レーンのCore i9ならばビデオカード×2+M.2 NVMe SSD×3、あるいはビデオカード+NVMe SSD×7が同時接続できるため、RAIDを構築するには十分である。
その場合、CPU内部に搭載されたRAIDエンジンでRAIDの処理をオフロードするので、CPUに余分な負荷がかかることもなく、高速にRAIDを利用できるようになる。
このIntel VMDが搭載されているのはXeon Scalableファミリー以降なので、Kaby Lake-XベースのCore i7-7740XとCore i5-7640XではVROCが利用できない。
余談であるが、4月末にインテルは製品変更通知を出しており、Kaby Lake-Xベースの2製品は販売中止になることが明らかにされている。今後仕様を変更しVROCを利用できるようにする可能性は皆無だろう。そもそも技術的にKaby Lake-XにはIntel VMDが搭載されていないので、そのままでは絶対に不可能である。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ