ネットギアの10ギガNAS+スイッチで中小オフィスでも快適なファイルサーバーを(前編)
10万円チャレンジ!オフィスの10ギガNAS環境を安価にそろえる
2018年05月11日 08時00分更新
オフィス内のファイル共有やデータのバックアップにとても便利なのがNASだ。だが、NASを利用するユーザーとクライアントPCの台数が増え、扱うファイルが大容量のものになってくると、ファイルをコピーしたりNAS上のファイルを開いたりするのに時間がかかるようになってくる。わずかな時間のロスかもしれないが、“ロスした時間×オフィスの人数×1年間”を計算してみると、かなりの時間をムダにしていることになるはずだ。そもそも仕事のうえでムダにイライラしたくない。
ここでおすすめしたいのが「10ギガNAS環境」の構築だ。10ギガビットEthernet(10GbE)対応のNASに加えて、ネットワークスイッチも10GbE対応のものを導入することで、ムダなイライラのない快適なNAS環境が実現する。「でも10ギガ製品だと高いのでは?」と思われるかもしれないが、10ギガ製品の普及に力を入れているネットギア製品ならば、意外と安くそろえることができる。
まず、今回の前編記事では「10万円チャレンジ」として、中小規模オフィス向け(50~80名程度)の10ギガNAS環境を10万円の予算で導入できるかチャレンジしてみよう。また次回後編記事ではベンチマークテストを行い、実際に10ギガNAS環境の効果を測ってみたい。
「Eコマース限定モデル」で10ギガ対応ReadyNASを安く買う
まずは、10ギガ対応のNASとスイッチにはどんなものがあるのかを調べてみよう。なお、以下で示す販売価格はすべて本稿執筆時点(2018年4月25日)のものであり、変動する可能性があることをご了解いただきたい。
ネットギアの「ReadyNAS」シリーズは、SOHO/小規模オフィス向けから大規模オフィス向けまで幅広いモデルをラインアップしている。現在、10GbE対応モデルで最も安価なのが「ReadyNAS 524X」だ。ハードディスクを最大4台搭載でき、10GbE(10GBASE-T)×1ポート、1GbE(1000BASE-T)×1ポートを備えるモデルだ。最大で80人程度の同時接続ユーザー数を想定しており、ネットギアの分類では「中規模オフィス向け」に相当する。
今回は10万円チャレンジなので、できるだけ安く購入したい。そこで「Eコマース限定モデル」製品を狙う。実はネットギアでは、中小規模のオフィスやSOHO/個人でも手軽に導入できるように、法人向けの高度な技術サポートや長期5年保証、書類発行などを省き、その代わりに低価格で提供するモデルを用意しているのだ。
※注:「Eコマース限定モデル(ディスクレスモデル)」のReadyNASは、ネットギアが個人/SOHO向けに販売しているモデルだ。安価に購入できるが、製品保証は本体ハードウェアの3年保証のみ、ユーザーが購入したハードディスクの動作保証なし、オンサイト有償サービスの対象外といった留意点もある。以下サポートページを参照し、通常の法人向けモデルとの違いを理解したうえで購入してほしい。
●ディスクレスモデルとHDD同梱モデルの違いは何ですか?(ネットギアサイト)
ReadyNASの場合、Eコマース限定モデルはハードディスクが付属しないディスクレスモデルとなっているので、必要な容量、台数のハードディスクをあわせて購入すればよい。最大4台のハードディスクが搭載できるモデルでも、今はまず2台だけ買っておいて、必要に応じて追加するといったこともできる。
ReadyNAS 524XのEコマース限定モデル(RN524X00-100AJS)を見つけたので価格を調べてみると、定価は18万3600円(税込価格、以下同様)。おっと、この段階でいきなり10万円チャレンジ失敗か? と思ったが、Amazon.co.jpでの販売価格は6万3200円だった。セーフである。
ついでにAmazonで3.5インチSATAハードディスクの販売価格を調べてみる。容量と価格のバランスが取れているのは、今ならば4TBか6TBのハードディスクだろう。たとえば「Seagate BarraCuda」だと、2TBモデルが6264円、4TBモデルが9050円、6TBが1万3712円だった。……うーむ、ここで4台買ってしまうとトータル10万円には収まらなそうだ。スイッチの価格を見たうえで再度検討しよう。
全ポート10ギガ対応のスイッチではなく「10ギガアップリンクスイッチ」を狙う
NASが10GbEに対応していても、ネットワークがそれに対応していなければ意味がない。続いて10ギガ対応スイッチを調べてみよう。
「10ギガスイッチはまだ高いのでは? NASとセットで10万円なんて無理でしょう」と考える読者もいるかもしれない。しかしそこには秘策がある。「10ギガアップリングスイッチ」を使うのだ。
10ギガアップリンクスイッチとは、すべてのポートではなく、一部のポート(1~2ポート)だけが10ギガ対応したスイッチのことだ。名前に「アップリンク」とあるとおり、一般的にはネットワークの上流にあるスイッチとの接続を10ギガにして、たくさんのクライアントPCを接続している場合でもボトルネックが発生しないようにするために使われる。今回はこの10ギガポートを、上流スイッチではなくReadyNASとの接続に使うわけだ。
そもそも、一般的なクライアントPCが搭載している有線LANポートはまだほとんどが1ギガのものであり、スイッチの10ギガポートに接続する必要はない。ただし、複数台のPCがアクセスしてトラフィックが集中するNAS周りのネットワークはボトルネックが発生しやすいので、10ギガにすることで大きな効果が得られる。
全ポート10ギガ対応のスイッチではなく、10ギガアップリンクスイッチならば価格も安い。たとえば、10ギガ×8ポートのアンマネージプラススイッチ「XS708E」は定価13万3920円だが、10ギガアップリンク×2ポート+1ギガ×8ポートのアンマネージプラススイッチ「GS110EMX」の定価は5万8320円と、半額以下だ。多数のクライアントPCを接続するオフィスネットワークを考えると、1ギガポートにPCを8台接続し、さらに10ギガポートにReadyNASまで接続できるGS110EMXのほうがお得ですらある。
GS110EMXの販売価格を調べると、Amazonでは2万9063円だった。先ほどのReadyNAS 524Xの価格と合計すると、9万2263円となる。よし、まだ予算内だ。
10ギガネットワークではEthernetケーブルに注意が必要
10ギガネットワークを構成するうえでは、Ethernetケーブルのカテゴリに注意しなければならない。「社内で余ってるケーブルを使えばいいのでは?」と思われるかもしれないが、10GBASE-Tの仕様上、10ギガ接続するためには「カテゴリ6a」または「カテゴリ7」のケーブルでなければならない。1ギガネットワークでよく使われているカテゴリ5/5e/6のケーブルを流用すると、10ギガではなく1ギガ接続になってしまう(カテゴリ6ならば10ギガ接続される可能性もあるが、非推奨)。
販売価格を見ると、2メートルのカテゴリ6aケーブルは450円程度、カテゴリ7のケーブルは1000円程度だった。ケーブル長が長くなれば価格差は広がる。今回はなるべく予算を抑えたいのでカテゴリ6aケーブルを選択する。
ReadyNAS 524X(ディスクレスモデル)とGS110EMX、そしてカテゴリ6aケーブルの合計金額は9万2713円となった。予算10万円との差額でハードディスクを購入するならば、2TBモデルのSeagate BarraCudaが1台買えるが、1台だけだとRAIDが組めないのでせっかくのReadyNASがもったいない。2TB×2台構成にすると10万5241円。ECサイトの特売日やタイムセールをしぶとく狙えば、ぎりぎり10万円以内に収めることができるかもしれない。
ちなみにここでハードディスクを4台購入すると、合計金額はSeagate BarraCuda 2TBモデルの場合で11万7769円、4TBモデルで12万8913円、6TBモデルで14万7561円となる。10万円チャレンジとしては完全に失格だが、15万円の予算があればおつりがくることになる。もっとも、ReadyNASの場合は「X-RAID2」技術を備えており、NASを稼働させたままで増設ができるので、最初はハードディスク2台でスタートし、残り容量が少なくなってきた時点で(来期以降の予算で)4本まで増設してもよいだろう。
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というわけで、今回は小規模オフィス向けの10ギガNAS環境が意外と安く構築できることを見てきた。目標の10万円には収まらなかったが(申し訳ありません!)、ReadyNASと10ギガアップリンクスイッチの組み合わせならば、15万円もかけずに快適なNAS環境が実現する。特に、大容量ファイルを多く扱うオフィスにはお勧めしたい。
ただ、こうしたスペック解説だけでは、10ギガNAS環境の効果がどの程度のものなのかわからないだろう。そこで次回後編記事では、ReadyNAS 524XとGS110EMXで10ギガNAS環境を構築し、複数台のPCを使ってベンチマークテストを行ってみたい。どうぞお楽しみに。
(提供:ネットギア)