日本のメディアでは深センに行けばなんでもある、何でも作れるといった内容をしばしば見かける深センブーム。iPhoneのコピーケータイを数日で作っちゃう深センの怪しいメーカーを昔から見ている筆者は、深センも今更ながらまともな目で見られるようになったんだなと感慨深いものがあります。でも、深センのモノづくりの歴史はもう10年以上も前からのものなのです。
なんでもかんでもキャッシュレスかと思いきや……
さて、中国と言えば今や誰もがQRコードを使ったキャッシュレス決済を利用しています。スマートフォンアプリ(アリペイ、またはウィーチャット)を起動してからQRコードを読めば、あらかじめチャージしていた金額から代金が引き落とされます。日本ではガラケー時代から使われていたQRコードが、スマートフォン全盛でまもなく5Gが始まろうとしている時代に中国で主流になるとは誰が想像したでしょうか?
そんなわけで、深センのパーツビルやアクセサリービルに行ってみると、どの店も店頭にQRコードを張り付けています。店側としてはレジも不要、QRコードだけあればすべて済むので非常にラクということですね。深センに行くときは少なくとも「WeChatPay」のアカウントを作っておくことをオススメします。方法は各自調べてください。
そんな深センでも現金が必要なところがありました。地下鉄とバスの乗車です。正確にはどちらもICカードの「深セン通」を持っていればスイカのようにキャッシュレス&非接触で改札口を通れます。とはいえ頻繁に行くわけでもない深センのためにICカードを買うのももったいない……。
ところが今や深セン地下鉄は、切符の自動販売機での支払い時にもQRコード決済が使えるようになりました。WeChatPay、AliPayどちらかを持っていれば現金不要で切符(トークン)が購入できるわけです。
とはいえ、やるなら先進国のように非接触ICカードを使ったモバイル乗車券を普及させるべきでしょう。中国でも北京や上海ではIC交通カードのスマートフォンアプリがあり、スマートフォンのNFCを使って乗車できます。ところが筆者が見る限り、スマートフォンをかざして地下鉄に乗っている人はほとんど見かけません。
一方バスに取り付けられたNFCのリーダーが、QRコードリーダーに置き換わるという逆転現象も中国の武漢市などで起きているとのこと。地下鉄ほど大量の乗客のいないバスならQRコードでもなんとかなるということなのでしょう。筆者はラスベガスでQRコードを使ってバスに乗りましたが、反応するまで1秒以上など時間がかかりました。とはいえ乗ろうとしている客は数人。そしてそもそも現金支払い客の乗車に時間がかかるので、QRでも「早くなった」ということなのでしょう。
深セン地下鉄の切符自動販売機ですが、使われている様子を見てみました。まず現金の自販機には人はまばら。人々はQRコード対応自販機に殺到していました。そもそも中国の切符の自動販売機は小銭すらはじいたりしますから、並ぶだけでストレスを感じます。
現金以上ICカード未満のQRコード決済だが
みんなQRコードで満足している!?
しかし、QR決済ならスムーズに切符が買えると思いきや、結局は現金で買う時と同じくらい時間がかかっています。まず目的の駅を選んで、決済方法を選択。QRコードが出てきたらスマートフォンアプリで読み取りなのですが、あらかじめ読み取り画面を出していても画面がロックモードに入ってしまったり、改めてアプリを立ち上げるなんてやっていると結構時間がかかってしまいます。それでも小銭のお札を何回通しても認識してくれない自販機よりははるかにマシで、確実に切符を買うことができます。
中国のキャリアなどはNFC決済を進めたいところですが、結局は多くの国民がQRコードでいいんじゃないの? と思っている状況です。もっと便利になればそちらに移行するかもしれませんが、コストが上がることは確実ですからそれをどこまで許容するか。中国は1年ですべてが変わるほど動きの速い国ですから、今後の流れは注視したいところです。
ちなみにICカードの深セン通も、WeChatPayなどからチャージできます。なのでICカードを一度買っておけば、それでキャッシュレス乗車は可能です。人民元の両替を忘れても、ひとまずWeChatPayやAliPayに残金があれば深センでは移動も買い物もなんとかなるのです。
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