Watson活用で会議の効率化を進める
3つめの「成長戦略2」は、オフィスサービスや産業ブロダクツ、Smart Vision、デジタルビジネスといった領域において、リコーならではの付加価値を乗せて、オフィスと現場をつないだ提案をすることになるという。
ここでは、「RICOH Smart Integration」と呼ぶ、新たなオープンプラットフォームを活用。MFPやIWB(インタラクティブホワイトボード)、UCS(ユニファイドコミュニケーションシステム)、360度カメラのTHETA、ステレオカメラなど、オフィスと現場をつなぐエッジデバイスを活用するとともに、業種に絞り込んだ約100本のアプリケーションを今年中に用意する。
また、IWBとAIの連携も進める。IBMのWatsonを活用し、会議音声のテキスト化や会議履歴のタイムライン表示、議論内容の字幕表示やリアルタイム翻訳、自動での議事録作成などに対応するという。
3つの成長戦略の取り組みにより、リコーは事業構造を大きく変化する。
オフィスプリンティングの売り上げ構成をあえて下げる
成長戦略0となるオフィスプリンティングの売り上げ構成比は、2016年度実績で53%を占めていたが、2022年度には39%とする一方、2016年度には12%だった成長戦略1の構成比を20%に拡大。成長戦略2は2016年度の24%を、2022年度には31%に拡大する。それに向けて、成長戦略1および成長戦略2では、2019年度までにそれぞれ1000億円のM&A投資をする考えも示した。
実は、2022年度までの成長戦略を発表したのは、2018年2月6日。この日は、リコーにとって、82回目の創立記念の日だった。「このタイミングに、新たな方針を発表できることを光栄に思っている」と語る山下社長兼CEOは、節目の日であったことも影響してか、方針説明とは直接関係がない一枚のスライドを盛り込んだ。
それは、東京・銀座の銀座4丁目交差点にある三愛ドリームセンターの写真が入ったスライドだった。
「三愛ドリームセンターは、リコーグループ創業者である市村清によって建てられたもの。商品をお見せするのに、人が動くのではなく、商品が動くようにするという発想をもとに、全面ガラス張りの円筒形ビルとした。当時の常識を超えた建物であり、建築屋泣かせのものであったが、そこに挑戦した。挑戦するのはリコーのDNA。挑戦することで社員がイキイキする」と、このスライドを投影しながら説明した。
2018年と2019年の2年間を、「挑戦」と位置づけるリコーにとって、三愛ドリームセンターは、同社が取り組んだ「挑戦」の原点のひとつもいえるわけだ。
そうした意味を込めて、山下社長兼CEOは、このスライドを表示したのだろう。リコーの復活に向けた「挑戦」が始まる。
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