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業界人の《ことば》から 第386回

リコーはサービスの企業に、OA企業の重荷を強みに変える

2020年04月03日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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今回のひとこと

「リコーは、OAメーカーからデジタルサービスの会社へと変貌する。OAメーカーとしては重荷だったことが、デジタルサービス会社では強みになる」

(リコー 代表取締役社長執行役員CEOの山下良則氏)

体質改善進むと、自信を示す

 リコーは、2020年3月末で、3ヵ年の第19次中期経営計画を終えた。

 業績については、2020年5月8日に予定している2019年度決算発表時に公表されるが、目標としていた営業利益1000億円については、「3月に入ってから、新型コロナウイルスの影響によって、欧米のMFPの案件で、受注は決まっているが、なかなか納品ができない状況が発生している。このあたりを精査する必要がある」と述べたものの、2019年度第3四半期決算発表時点で示した「見通せている」との発言を繰り返した。

 第19次中期経営計画の結果を推し量るという点では、営業利益1000億円をはじめとした経営指標も大切だが、それ以上に大切なのがリコーの体質改善の成果だといえる。

 2017年4月の山下社長の就任とともにスタートした第19次中期経営計画では、2017年4月からの1年間を「リコー再起動」とし、構造改革や成長戦略の重点化、ガバナンス改革、経営管理体制の強化に取り組み、また、2018年4月から2020年3月までの2年間を、「リコー挑戦」と題し、成長戦略の本格展開や成長戦略を支える経営基盤改革に取り組んできた。

 「2017年4月の社長就任時に、それまでと同じ経営を続ければ、赤字に転落するというシナリオを提示し、危機的状況であることを示した。そして、5大原則の見直しを行い、過去のマネジメントからの決別を打ち出した」と山下社長が語るように、強い危機感を持った上で挑んだ中期経営計画であった。

 ちなみに、リコーの5大原則とは「マーケットシェア追求」「MIF(複合機の設置台数)拡大」「フルラインアップ」「直売・直サービス」「ものづくり自前主義」である。

 「これが常識となり、暗黙のルールになっていたが、基盤となるプリンティング事業において、5大原則の見直しに手をつけた。従来の常識に捉われない構造改革を断行し、規模の拡大から利益重視に舵を取り、コスト構造改革や業務プロセス改革、事業の選別を徹底し、稼ぐ力を高めることに力を注いだ」とする。

 聖域を設けずに徹底した事業選別では、オフィスサービスや商業印刷など、自社リソースによって成長できる事業には積極的にリソースを配分する一方で、コア事業と関連があるものの、十分なリソースが割けない電子デバイスやロジスティクス、リースといった事業は、外部リソースとの連携を強化した。また、ノンコア事業は撤退や売却、保有株式の見直しなどを実施。三愛観光やコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスなどの株式を売却した。山下社長は、「子会社、関連会社を中心とした資本投下先の選択と集中は、これでほぼ完了した」と宣言してみせる。

 構造改革効果は、1000億円の目標に対して、1050億円を達成する見込みであり、フリーキャッシュフローは1000億円の目標を中計2年目で達成。2019年度第3四半期までに1729億円の実績となった。

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