50年先の世界を考えて研究するHP Lab
これまでのコンシューマ向けPCの展開は、シェアを追うような戦略を打ち出さず、量販店における展開も限定的とし、同社直販サイトでの販売が軸になっていた。
だが、SpectreやENVY、EliteBookといった「HPプレミアムファミリー」のラインアップ強化によって、コンシューマ領域に向けた製品群が揃いはじめ、注目を集めている。
岡社長は「現在約30店舗の主要量販店で展示販売を、今年半ば以降には大幅に拡張する」と語り、コンシューマPCでも存在感を発揮したい考えだ。
「薄型、軽量のPCから、全長100メートルのデジタル印刷機まで、日本HPが取り扱っている製品群は幅広い」と、岡社長は語る。
一方で「10年経ったら日本HPはPCとプリンターのメーカーではなくなっているかもしれない」とも語る。
それは、これまでのHPの歴史からも明らかだ。
ヒューレット・パッカードの創業製品は、いまから79年前となる1939年に発売したオーディオ発振器「HP200A」である。その後、PCやハンドヘルド関数電卓、プリンター、サーバー、ワークステーションなどを製品化しているが、そこには、オーディオ機器でスタートしたHPの面影はない。
また同社にはHP Labと呼ぶ将来の研究開発をする組織があるが、この組織では最短で5年先、テーマによっては50年先の世界を考えて研究しているという。
「先日、HP Labを訪れて説明を聞いてきたが、その技術が、いつ、なにに使われるのか、さっぱりわからない」と岡社長は笑う。昔のヒューレット・パッカードは、LEDの研究でも先進的だった。これが直接的な製品として売られたわけではないが、この技術は同社のなかで生かされている。またプリンティング技術は、商業印刷用途に展開され、さらにノウハウを生かして3Dプリンティング市場への参入につながっている。
「ヒューレット・パッカードのこれまでの歴史が、新たな技術と製品によって、市場を創出してきたように、これからもさまざまな技術と製品を創出し、市場を創出することになる。HP Inc.は身軽になった分、より迅速に動くことができる点も、これを加速することになる」。
コア、成長、将来というように、方針のなかに将来を組み込んでいる点に、市場創造に意欲に取り組む姿勢が示されている。
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