麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第22回
絢香のサクラやドビュッシー没後100年などにも注目
麻倉推薦:角田健一ビッグバンド、ハナスプリングなど定番Hi-Fi録音を聴け!
2018年03月06日 17時00分更新
評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。2月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!
『BIG BAND SOUND ~甦るビッグバンドステージ~』
角田健一ビッグバンド
優秀ハイレゾで優秀ハイファイなビックバンドサウンド。オーディオ・リファレンスの定番、角田健一バンド作品の最新リリースだ。楽器の数が多い重奏的、重層的なバンドサウンドながら、個々の楽器のフューチャー感も高密度で、高濃度。バンド全体としてのマスな音と、パートと個々の楽器の描きの明確さが両立し、ビックな音の絢爛感とハイファイなクリヤーさが同居するのが、本録音の美質だ。マクロとミクロのどちらも極めて高い次元にある。個々のプレーヤーのテクニックの高さには舌を巻くほど。3曲目「オール・オブ・ミー」のベースのスケールの偉容さに感動。
2010年録音(同年の日本プロ音楽録音賞 最優秀録音賞受賞)だが、最新的な香りがする。角田健一ビックバンドはかつてSACDで一世を風靡したが、リニアPCM・96kHz/24bitのサウンドは、剛直でノリの良い演奏の迫力と魅力を余すところなく伝えている。
FLAC:96kHz/24bit
ワーナーミュージック・ジャパン、e-onkyo music
かつてクリプトンのハイレゾサイト、HQM Storeで配信されていたハイレゾだ。音源は1977年に発売されたチューリップ初のオリジナルベストアルバム。 デビュー曲から12枚目の「ブルー・スカイ」までのAB面を交互に並べ、全24曲を収めた。HQM Storeが終了になり、貴重な音源が聴けなくなっていたが、今回、e-onkyo musicへの移籍が成り、わが国のポップス史でも重要な音源に再度アクセス可能になったことを喜びたい。
オリジナルアナログマスターテープから192kHz/24bitでのリマスタリングを経てデジタル音源化しているが、この過程では相当なこだわりが注入されている。本作品の音の良さ、というか「アナログ的なフレーバー」はHQM時代から定評があった。アナログからトランスファーにおいて、出来る限りアナログ的な質感を残すことを信念にしたと当時言っていた。最新録音に比較すると、リードボーカルや個々の楽器の音像がいまひとつ曖昧だが、逆に、ひとつの音響的作品としてまとまりが良く、サウンド的な融合感は、他に例がないほどの素晴らしさ。アナログの香りが濃密なハイレゾだ。リードボーカルとコーラスのバランスも好適だ。
FLAC:192kHz/24bit、WAV:192kHz/24bit
シンコーミュージック、e-onkyo music
『マーラー:交響曲第5番、亡き児をしのぶ歌』
クリスタ・ルートヴィヒ、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヘルベルト・フォン・カラヤン
出ました、超耽美的なカラヤン・マーラー! 冒頭からケレン味たっぷりに、絢爛に鳴らす。これほどマシュマロ的でスウィートなマラ5は空前絶後だろう。以前に、マラ9でカラヤンは甘美だと書いたが、マラ5はさらに甘く、蠱惑(こわく)的。
ベルリン・フィルもベートーヴェンやブラームスで聴かせる剛毅で、大器量的なところはまったくなく、ロマンチックでメローな演出に努めている。このスウィーティな味は、DSD2.8MHzであることも大いに効いていよう。指揮者の音楽的解釈から、オーケストラの音色、そしてメディアの音色までが、すべて甘さを指向しているのである。実に個性的、実に魅力的な、身悶えちゃうようなマーラーだ。1973年、ベルリン、イエス・キリスト教会で録音。
DSF:2.8MHz/1bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music
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