PC業界ではなく小売業界から人材を集める
おもしろいのはビジネスの拡大にともない人材をどんどん集めていったのだが、それはコンピューター業界ではなくリテール業界からだったことだ。例えば1991年9月にVP兼COOとして招いたKeith Costine氏は日用品スーパーのKmartに長く勤めたベテランであった。
1993年にはMorton氏は会長兼CEOに昇格(それまで会長はDubin氏が勤めていた)するとともに、さらに会社を3つ(東部・中央部・西部)の事業部門に分割して規模拡大に備えるが、問題は規模を拡大しても利益が就いてこなかったことだ。
1992年第2四半期の売上は前年比で65%も増えたにも関わらず、550万ドルもの純損失を計上する。この後も黒字化にはいたらず、この責任を取ってMorton氏は辞任。後任にはHomeBaseという家庭向け製品を販売するリテールチェーンのCOOを勤めていたJames Halpinが就任する。
Halpin氏の指揮の下、Compudyneブランド製品のアウトソース化や在庫管理の集中化、管理体制の見直しなどにより、不要な経費を大幅に削減し、同社は再び成長過程に入る。1995年には再び黒字化も果たしており、1996年末までに店舗数も105に増えた。1996年にはWindows 95による売上増加などもあっておよそ38億ドルもの売上を記録している。
1992~1996年の財務データを見ると以下のようになっている。3年間で売上をおよそ3倍、純利益を6倍ほどに増やしている形で、なかなか立派な業績である。
1992~1996年 CompUSAの財務データ | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 粗利 | 営業利益 | 純利益 | ||
1992年 | 8億2282万ドル | 1億 628万ドル | 1035万ドル | 763万ドル | ||
1993年 | 13億6975万ドル | 1億8007万ドル | 1898万ドル | 968万ドル | ||
1994年 | 22億1946万ドル | 2億6427万ドル | -923万ドル | -1702万ドル | ||
1995年 | 29億3590万ドル | 3億6196万ドル | 4091万ドル | 2434万ドル | ||
1996年 | 38億2979万ドル | 5億1810万ドル | 1億535万ドル | 5967万ドル |
Halpin氏はこれで満足せずに、さらに拡大路線を突っ走った。CompUSAは1997年に25店舗、1998年に35店舗を追加、2000年までに200店舗を達成する予定を明らかにしている。ただ自力で店舗を増やすのではペースが遅いと思ったのだろう。この頃から同社はM&Aを始める。
ライバル企業を次々と買収
ついに店舗数が200を超える
最初にM&Aのターゲットになったのは1991年にマサチューセッツで創業したPCs Compleat, Incで、同社の通販部門に組み込まれることになる。ちなみにCompUSAはこの時期にインターネット通販としてCompUSA.comを立ち上げており、PCs Compleatのリソースはこの立ち上げにも使われたようだ。
画像の出典は、“Google Books保有のPC Magazine 1996年10月22日号”
ただこれはいわば小手調べ。大きなチャレンジは、Tandy CorporationからComputer Cityを丸ごと買収するというもので、これは1998年に実現した。1996年当時、Computer Cityは売上こそ20億ドルに達し、店舗数も100を数えていた(その意味ではCompUSAと競合していた)ものの、あまり経営状態は良くなかった。
もっともこうなると独占禁止法絡みの問題もあり、また買収で競合も出たりした(こちらは1億7500万ドルを提案していた)関係で一筋縄ではいかなかった。最終的にCompUSAは2億7500万ドルでComputer Cityを全店買収。
その後、既存のCompUSA店舗と競合する(Computer Cityの店舗はしばしばCompUSAの店舗の向かいや隣りに出店していた)55店舗を閉鎖し、37店舗をCompUSAに転換した。
1998年の時点でCompUSAは160店舗を運営しており、この買収によって2000年を待たずに200店舗を超える(210店舗)ことになった。ところがこの後、CompUSAの業績は急速に悪化する。
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