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犬の方が優秀 Alexaがイマイチ好きになりきれない

2018年03月03日 12時00分更新

文● 四本淑三

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スマートスピーカーは犬に勝てない

 Alexaは有能なセールスマンでもある。つい先日、「アレクサ、庶民のファンファーレをかけてください」とお願いしたところ、「その曲はAmazon Music Unlimitedで見つかりました。30日間無料体験コースに登録して聴きますか?」とそそのかされ、つい配信サービスの登録をしてしまった。サブスクリプションサービスなんか、あれもこれも使っているというのに。

 Amazonにとって、Alexaは自社サービスとの相乗効果を狙える戦略的商品だ。Amazon Echoの成功を見て参入した競合他社は、そうしたあたりのフォーカスが甘い。スマートスピーカーは、結局は音声リモコンでしかないのに、何かをしようとするたびウェイクワードを唱えなければならない。そのハードルを超えてユーザーに使わせるには、相応の動機が必要だ。

 例えば、これが躾けられた犬なら、名前を呼べば飛んでくるからかわいい。そのまま「お座り」「お手」のようなコマンド待ち状態に入るからかわいい。同じことをやらせてもスマートスピーカーよりぜんぜんかわいい。何しろモフモフできるし、一緒に散歩もできるし、ご褒美をねだってくるからかわいい。

 とはいえ、犬は言葉の意味を理解しているわけではないから、実行できるコマンドの数は限られる。ところが人間はバカだから、何かが通じたような気にさえなれば、それでいいのだ。

 2-1は?
 わん!

 極端な話、これで十分。たとえ流暢な人語を操るHAL9000並のクラウドAIがあったとしても、犬にはかなわない。それは犬との間に、言葉を超えた関係性が存在しているかのように思い込めるから。適当に人語を理解したフリをして生返事するような、読むべき行間を持たない機械に、そうした思い込みはできない。

最後は愛が勝つのかもしれない

 だから前世紀末の家庭用ロボット「AIBO」が、犬として登場したのは正しかった。現在の「aibo」に至っては、喋リこそしないが、人の言葉を聞き、人が何をしたのかもクラウドが覚えている。まさに「犬の十戒」を適用できる、人に愛されるロボットとして進化を続けているのだ。

 逆に、Pepper君があんなに無残な言われ方をしたのは、下手に人の形に似せてしまったからだ。ヒューマノイドの利点は、人間用に設計されたインフラや機器がそのまま使える点にある。家のドアも、テレビのリモコンも、自動車も、ロボに操作してもらえば、個々の機器をネットワークに組み込む必要はない。しかし、そこに至るまでには、まだいくつもハードルがある。

 でも、スマートスピーカーにできる程度のことなら、犬型ロボにも任せられそうだ。テレビが見たければ、リモコンを持ってきてもらうことはできるし、内蔵のマイクやカメラは、防犯や見守りの役に立つから、立派な番犬にもなるだろう。なんなら番号付きのフットスイッチを踏ませる体にすれば、大抵の家電はコントロールできる。

 クラウドAIの覇権争いは、宿すハードにかかっている。少なくとも捨てずに取っておいてもらえるようなもの、壊れても修理したいと思えるようなものなら、バージョンアップや次の製品で巻き返すこともできる。少々話が逸れて長くなったが、Alexaは強い。でも、私はまだAmazon Echoを愛せずにいる。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 北の大地の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。近所に熊が出るというので、本当に欲しいのはaiboより北海道犬(アイヌ犬)。もちろんソフトバンクならPepper君よりお父さん犬。

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