今、あなたのスマートスピーカーにホコリは積もっていないか。言うことを聞かない、役に立たない、思っていたものとは違う、こっそり盗聴していそうで怖い、こんなエシュロンの手先を……などと勝手なことを言っては、ハードオフに持って行こうとしたり、ゴミに出せる日を確認したりしてはいないか。
「犬の十戒」というものがある。いわく「犬は人の言葉はわからないが、あなたが何を考えているか理解しようと努力はしているし、何をしたかも覚えている。だから邪険に扱わないで、寿命を迎えるまで、愛情を持って接してほしい」云々。犬から飼い主へ向けた体で綴られた作者不詳とされる短文集で、つまるところ飼い主自らへの戒めや願望を列記したものだ。愛犬家ならどこかで目にしたことがあるのではないか。
私は「スマートスピーカーが犬だったら良かったのに」と思ったことが何度もある。向こうは「人の役に立ちたい」と言うが、残念ながらこちらから愛情のようなものは持てない。もし「スマートスピーカーの十戒」のようなものがあったら、私はアウトだ。
昨年夏、国内初のスマートスピーカーとして登場したClova WAVEに、こう尋ねてみた。
ーー クローバ、愛ってなんですか?
「それがわかったら、この世界から争いはなくなるかもしれませんね」
時はまさしくクラウドAIの覇権をかけた争いの真っ只中である。だが、Amazon Echoを3ヵ月ほど使ってみた結果、その趨勢はすでに決したように思える。少なくともスマートスピーカーについては。
Alexa日本語版がKindle本の朗読に対応
2月22日、Alexaに備わっているKindle本の読み上げ機能が、日本語の書籍にも対応した。もとより音声認識の精度は抜群に高く、対応する機器やサービスも豊富なAlexaだが、さらにAmazonの強みでダメを押してきた格好だ。
「アレクサ、虐殺器官を読んでおくれ」とお願いすると、「伊藤計劃のkindle本、虐殺器官、ハヤカワ文庫JAを再生します」のようにして読み上げが始まる。単に「アレクサ、本を読んで」と頼んでも、ダウンロードした直後の本か、直近に読み上げた本の続きを再生してくれる。
読み上げ中は「アレクサ、10秒戻って(進んで)」「アレクサ、次の章に行って(前の章に戻って)」「アレクサ、止めて」といった音声コマンドも効く。スリープタイマーをセットすれば、朗読を聴きながら眠ることもできる。
ただし、漫画や雑誌、写真集、一部のいやらしい本や、そのほかのTTS(Text-To-Speech)に対応しない本は読み上げてくれない。読んでくれるか否かは、Kindle本の商品画面で確認できる。「Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能): 有効読み上げ機能: 有効」とあればOK。購入済みの本もAmazon Alexaアプリから確認できる。
たまに読み上げが怪しいこともあるし、そもそも日本語のイントネーションからしてなっていない。この機能は、まだ本の内容を選ぶ。だが、この読書形態も含めてメタな物語の一部として捉えられるなら、かなりハマる。おお、ついに未来きたよなあ、という実感がするのだ。
この機能、Kindleストアで購入した書籍だけでなく、Kindle UnlimitedやPrime Readingのような読み放題サービスでも使える。Amazon、どんどん攻めてくる。Amazon Echoシリーズはまだ招待販売の状態だが、競合他社はどうするのだろう。