ビデオ編集向けの
キャプチャーボードに進出
話を戻すと、まず最初に立ち上がったのはDTP向けの市場であったが、RasterOpsはこれに留まらずビデオ編集の方向にも進出していく。
1988年には30fpsでのビデオ取り込みが可能なColorBoard 324N(2495ドル)や、1フレームの取り込み機能を持ったフルカラー出力ボードのRasterOps 64N(3490ドル)といった製品にMacromind(後のMacromedia) Videoworks IIというビデオ編集ソフトをバンドルして出荷している。
その一方で大画面化のニーズも高まりつつあり、1989年には19インチモニターをバンドルしたColorboard 108+(ただし解像度は1024×768どまり)を5790ドル(うち4195ドルがモニター代)で販売するなどしていた。
RasterOpsはハイエンドだけでなくローエンドも同時に取り込む考えだった。翌1989年に発表されたColorboard 264は解像度こそ640×480ドットに制限されていたものの24bitカラー表示が可能で、QuickDraw 32互換をうたいつつ995ドルという低価格だった。同社の説明では、「4000ドル相当のボードの機能を1000ドル未満で提供する」というものだった。
ちなみにこのClolorboard 264はNuBusモデル以外に、Macintosh SEのPDS(Processor Direct Slot)用のモデルも提供され、こちらは1295ドルとなっていた。
この当時の競合メーカーはRadiusとSupermacが主なところで、どちらもよく似た製品ラインナップを提供していたが、幸いなことに市場自体が急速に広がりつつある状況だったこともあってか、あまり激しい価格の叩きあいという事態には陥っていない。
その代わりに始まったのが性能競争である。1990年頃、Radiusは6MIPSの性能を持つRISCプロセッサーを搭載したQuickDraw専用アクセラレーターボードを開発し、SupermacはQuickDrawのアクセラレーター機能をグラフィックチップに内蔵させた。
RasterOpsはというと、両社に先駆けてQuick Drawアクセラレーターを投入しているが、結果から言うとアプリケーション性能の改善にはあまりつながらなかったようだ。
というのは、こうしたハイエンドの製品以外の環境ではソフトウェアでQuickDraw32を扱う必要があり、そうなると当然動作が結構遅いことになる。これを嫌ってか、それほど広範にアプリケーションで採用されることがなかったらしい。
ちなみに1990年で言えば、RasterOps 24L/1960+ビデオ取り込みボード+19インチモニターで8190ドル。RasterOps accelerator cardが495ドルだった。Radiusはカラーディスプレーモニターが4295ドル、Direct Color/24 Video Boardが3595ドル、Quick Color Accelerator Boardが595ドルで、合計するとRasterOpsより少し高い。
SupermacはSpectrum/24 PDQ video board+1インチモニターで9199ドルである。同年出荷されたMacintosh IIfxの本体価格(8969ドル)と同等の価格なので、ニーズは限られていたというべきか。
ただそうしたニーズをきっちり獲得するための努力は惜しんでおらず、1991年にはCMYKをRGBに色変換する専用ASICを開発というニュースを出したり、RasterOps accelerator cardの後継製品として、MIPSのプロセッサーを搭載したImageProという製品もラインナップするなど、ハイエンド向け製品の機能充実に余念がなかった。
その一方でローエンド向けの製品の拡充も図るが、この結果として異様にラインナップが増えてしまい、実際リスト一覧を見てみても、なにがなんだかという状態に陥っている。
たとえば1991年のハイエンド向けにはRasterOps 24Mxというカードに16インチモニターを組み合わせたSweet 16という製品は2495ドルで販売されたが、Quadra用にはRasterOps 24MxQという製品が別に用意されており、ところが違いがさっぱりわからないという具合だ。
製品一覧を見ていると、Appleが新製品を出すと、それにあわせてRasterOpsも対応製品を追加するという感じになっており、それは製品数も増えるわけだ、という気がする。
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