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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第200回

「itトレンド」のなれの果てとしての「スマホを握りしめて身構える」姿は滑稽か?

2018年02月14日 15時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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スマホを握りしめて身構えることは滑稽か?

 おそらく日本で暮らしている人にとっては、「スマホを握りしめながら、常に身構えて生活している」筆者を滑稽に見るかもしれません。

 自分でもときどきそう思いますが、いくらスマホが情報手段として、また実現可能性を担保するツールとなっても、「最悪の可能性」を排除することまでには至っていないことの表れでもあります。

 しかし実現可能性を担保するスマホから得られる情報についても、注意が必要になりました。フェイクニュースに代表される一連の動きは、非常に効果的に、社会の分断や不安感の増長を招いています。

 特に2016年以降、特にロシア方面の機関が広告や記事によって、が米国や英国、フランス、ドイツなどの選挙に対して、情報で介入しているとの報告が指摘されるようになりました。

 いわゆるフェイクニュースのシェアの温床となったFacebookは、ユーザーの滞在時間という重要な広告指標を失う身を切る決断をしてでも、そうしたニュースを簡単に拡散させない仕組みを取り入れつつあります。

 もちろん、変化が必要なのはサービス側だけではなく、我々にもリスクに対する許容度を狭める対応が必要になってきます。フェイクニュースを流す側からすれば、そうした心理を生み出すこと自体が、狙いの1つになっているかもしれません。

日本ではどうなのか?

 日本は米国に比べて、地政学リスクが増大している地域と評価されています。その一方で、優秀なインフラと安定した社会によって、そのリスクを日常生活で感じにくいかもしれません。

 簡単に言えば、筆者のようにスマホを握りしめて身構えて生活している人はほとんどいないだろうということです。もちろん、そのままリスクが低い状態が現実であれば文句はありませんし、筆者も生存可能性が圧倒的に高い日本に戻ることになるでしょう。

 しかし、実現可能性を広げることやそういう場所を選ぶことと、あらゆる可能性を排除しないことは別の問題のように思います。

 今後もモバイルが、いろいろな可能性を拡げていくテクノロジー「it」であることを祈りつつ、引き続きご愛読、よろしくお願いいたします。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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