「Samsung SSD 860 PRO/EVO」は性能が頭打ちの2.5インチSSDに何をもたらすのか?
新世代のM.2対応SSDは読み書き性能に優れるが、同じ容量の2.5インチSSDと比べるとやや高価だ。Serial ATA 3.0インタフェースによる転送速度の限界で、シーケンシャルリード/ライト性能に頭打ちが来ているとはいえ、ラインアップに大容量モデルを擁し、より低価格で購入しやすい2.5インチSSDの存在感は、まだまだ薄れてはいない。
サムスン電子が23日に発表した「Samsung SSD 860 PRO」(以下860 PRO)と、「Samsung SSD 860 EVO」(以下860 EVO)は、こうした2.5インチSSDの新モデルである。
どちらも新世代の自社製コントローラー「Samsung MJX」を搭載する。また旧世代の「Samsung SSD 850 PRO」(以下850 PRO)や「Samsung SSD 850 EVO」(以下850 EVO)と比べると、シーケンシャルリード/ライト性能やランダムリード/ライト性能は若干底上げされた。
メーカーが保証する書き換え可能容量「TBW*」が、旧世代に比べ手飛躍的に改善されたことも特徴の1つである。
* すべての耐久試験結果は、JESD218規格に準拠しております。 詳細については、www.jedec.orgをご覧ください。
3D NAND搭載SSDの新モデル
860 EVOではTurboWriteが進化
860 PROは、世界で初めて3次元構造NANDフラッシュメモリーを搭載し、2014年7月に発売された850 PROの後継モデルだ。860 EVOも、同じく3次元NANDフラッシュメモリーを搭載した850 EVOの後継モデルとなる。
860 PROではMLC、860 EVOではTLCのフラッシュメモリーを採用するというのも、850 PROと850 EVOの関係をそのまま引き継いでいる。MLCのフラッシュメモリーは、TLCに比べると読み書き性能と耐久性に優れるという特性があるため、860 PROはストレージの利用頻度が高いヘビーユーザー向け、そして860 EVOは一般的なユーザー向けと考えるとわかりやすいだろう。
下の表は、新旧モデルの公称スペックを比較したものだ。860 PROと850 PROでは、リード/ライト性能がやや向上しているほか、書き込める総容量を示すTBWが大きく改善していることに注目したい。
256GBモデルでは150TBW(850 PRO)から300TBWで2倍、2TBモデルに至っては450TBW(850 PRO)から2400TBWと、5倍以上の容量を書き込めるようになっている。こうしたTBWの改善は、860 EVOと850 EVOとの比較でも顕著だ。
新モデルSamsung SSD 860 PROシリーズのスペック | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
256GB | 512GB | 1TB | 2TB | 4TB | ||
コントローラー | Samsung MJX | |||||
シーケンシャルリード | 560MB/秒 | |||||
シーケンシャルライト | 530MB/秒 | |||||
ランダムリード(4KQD32) | 10万IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD32) | 9万IOPS | |||||
ランダムリード(4KQD1) | 1万1000IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD1) | 4万3000IOPS | |||||
キャッシュ容量 | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | ||
MTBF(平均故障間隔) | 200万時間 | |||||
TBW(書き換え可能容量) | 300TBW | 600TBW | 1200TBW | 2400TBW | 4800TBW | |
製品保証 | 5年間 | |||||
想定売価 | 2万3000円 | 4万1000円 | 7万3000円 | 14万4000円 | 28万8000円 |
旧モデルとなるSamsung SSD 850 PROシリーズのスペック表 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
128GB | 256GB | 512GB | 1TB | 2TB | ||
コントローラー | Samsung MEX | |||||
シーケンシャルリード | 550MB/秒 | |||||
シーケンシャルライト | 470MB/秒 | 520MB/秒 | ||||
ランダムリード(4KQD32) | 10万IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD32) | 9万IOPS | |||||
ランダムリード(4KQD1) | 1万IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD1) | 3万6000IOPS | |||||
キャッシュ容量 | 256MB | 512MB | 1GB | 2GB | ||
MTBF(平均故障間隔) | 200万時間 | |||||
TBW(書き換え可能容量) | 150TBW | 300TBW | 450TBW | |||
製品保証 | 10年間 |
新モデルSamsung SSD 860 EVOシリーズのスペック表 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
250GB | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB | ||
コントローラー | Samsung MJX | |||||
シーケンシャルリード | 550MB/秒 | |||||
シーケンシャルライト | 520MB/秒 | |||||
ランダムリード(4KQD32) | 9万8000IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD32) | 9万IOPS | |||||
ランダムリード(4KQD1) | 1万IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD1) | 4万2000IOPS | |||||
キャッシュ容量 | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | ||
MTBF(平均故障間隔) | 150万時間 | |||||
TBW(書き換え可能容量) | 150TBW | 300TBW | 600TBW | 1200TBW | 2400TBW | |
製品保証 | 5年間 | |||||
想定売価 | 1万4000円 | 2万3000円 | 5万円 | 10万4000円 | 22万8000円 |
旧モデルとなるSamsung SSD 850 EVOシリーズのスペック | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
120GB | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB | |
コントローラー | Samsung MGX | Samsung MHX | ||||
シーケンシャルリード | 540MB/秒 | |||||
シーケンシャルライト | 520MB/秒 | |||||
ランダムリード(4KQD32) | 9万4000IOPS | 9万7000IOPS | 9万8000IOPS | |||
ランダムライト(4KQD32) | 8万8000IOPS | 9万IOPS | ||||
ランダムリード(4KQD1) | 1万IOPS | |||||
ランダムライト(4KQD1) | 3万8000IOPS | 4万IOPS | ||||
キャッシュ容量 | 256MB | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | |
MTBF(平均故障間隔) | 150万時間 | |||||
TBW(書き換え可能容量) | 75TBW | 150TBW | 300TBW | |||
製品保証 | 5年間 |
ただ、TLCタイプのフラッシュメモリーはMLCタイプに比べると書き込み性能が劣る。そのため日本サムスンが発売した初のTLC SSDである「Samsung SSD 840 EVO」では、搭載するNANDフラッシュメモリーの一部を疑似SLC特性のバッファ領域として扱い、書き込み性能を向上する「TurboWrite」機能を搭載していた。
840 EVOの後継である850 EVO、そして今回紹介する860 EVOでも同じ機能を備えるが、860 EVOではさらにこれを強化し、必要に応じてSLCの領域を増減する「Intelligent TurboWrite」機能を搭載する。
これは標準では数GBの容量を疑似SLC領域として確保するが、それ以上のファイルの書き込みが必要になっても、モデルによって定められた容量を「追加」してバッファ領域として利用できるという機能だ。860 EVOの各モデルにおけるSLC領域と可変領域、書き込み性能は、下記の表にまとめたとおりである。
Intelligent TurboWriteの性能 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
ドライブ容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB | |
TurboWriteのサイズ | 標準 | 3GB | 4GB | 6GB | ||
可変領域 | 9GB | 18GB | 36GB | 72GB | ||
最大 | 12GB | 22GB | 42GB | 78GB | ||
シーケンシャルライト性能 | TurboWriteのサイズ以内 | 520MB/秒 | ||||
TurboWriteのサイズ以上 | 300MB/秒 | 520MB/秒 |
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