大人気「Samsung SSD 830」の秘密に迫る
SSDは、高速かつ消費電力が低く、衝撃にも強いという、理想的なストレージデバイスである。性能に不満が出てきた数年前のPCでも、HDDをSSDに換装することで、パフォーマンスが大きく向上し、快適に利用できるようになる。
SSDは多くのメーカーから発売されているが、そのなかでも人気の製品は、Samsungの最新SSD「Samsung SSD 830」シリーズだ。
Samsung SSD 830は、2012年4月からITGマーケティング株式会社による国内正規品の販売が開始された。ITGマーケティングとは、日本国内でのSamsung製SSDの販売とサポートを目的に設立された日本サムスンの販売特約店である。
Samsung SSD 830の性能の高さは、春のSSD特集のベンチマーク結果からもわかる。ここでは、日本サムスンのメモリー営業チーム次長の岡田圭介氏にインタビューする機会を得たので、Samsung SSD 830の特徴や販売戦略などをお訊きしてみた。
サムスンブランドでSSDを売るためにITGマーケティングを設立
石井 「SSDは数年前から人気のパーツですが、最初はバルク品が中心で、秋葉原のショップでもマニアのみが買うという状況でしたが、最近は、正規のパッケージ品も出てきて、初心者にも買いやすくなってきたと思います。
Samsungは、フラッシュメモリー市場やDRAM市場において、世界ナンバーワンの地位を占めていますが、今回、日本市場でSamsung SSD 830をパッケージとして販売を開始した理由をお聞かせ下さい」
岡田 「SamsungがSSDを出したのは、今回が初めてではありません。およそ5、6年くらい前に、SLCのフラッシュメモリーを使ったエンタープライズ向けのSSDを出しておりました。一般ユーザー向けでは、今回のSamsung SSD 830(以下、SSD 830)の前シリーズにあたるSamsung 470ですね。このシリーズから、本格的にBtoCのビジネスを加速し始めました。
新製品のSSD 830は、海外では2011年11月に販売を開始しています。日本も同じタイミングにしたかったのですが、日本でSamsungブランドとしてSSDを売るのにはまず日本でのサポート体制が非常に重要だと考えました。
単に、スペックさえ良ければ売れるというやり方には限界があります。Samsungの品質やブランドを活かすためには、ローカルサポートをしっかりする必要があるということで、販売特約店であるITGマーケティングを設立することになりました。
ITGマーケティングが設立されて、実際にBtoCでビジネスを始めたのは4月の頭からですので、ちょうど2ヵ月が経った段階です。
いわゆるバルク品や海外からの並行輸入品が、秋葉原で昨年の暮れから販売されていることは我々も知っていました。しかしバルク品はメーカー保証が受けられず、マニュアルも日本語未対応、包装も安っぽく簡易なものです。こういったパーツだけのビジネスならば、我々はSamsungブランドで販売することはなかったと思います。
我々は、BtoB、いわゆる一般のパソコンに組み込むビジネスをメインにしており、昨年のSSD市場でも、Samsungがナンバーワンのシェアをとっております。ただし、これはBtoBとBtoCを合わせたシェアです。いわゆるリテールのBtoCだけを見ると、必ずしもSamsungがナンバーワンというわけではありません。
これまでBtoBの組み込みビジネスに注力していましたので、すでにSamsungのSSDは非常に多くのPCに搭載実績があります。そのため、互換性やファームウェアの作り込み、品質のバラツキの少なさ、そういったものには自信を持っています」
石井 「確かに、製品自体は良くても、サポートなどが充実していないと、初心者は買いにくいですよね」
岡田 「はい。そのためにテクニカルサポートセンターを日本国内に設立いたしました。当然、日本人による日本語での対応です。
またお店のほうでも、メーカーの正式なサポートが受けられないものや、日本語サポートがない製品だと、(いくらパフォーマンスが優れていても)お客様へお勧めしづらかったようですね。
これからは店員さんに自信を持ってお勧めいただけるようになると思います。現在、 まだ一部のお店には置いていないこともあるのですが、これから夏にかけて、日本全国くまなく我々の製品を扱っていただけるよう頑張っていきたいと思います。
最近では、サポートをオンラインのみに割りきったメーカーさんもあると思いますが、やはり、わからないときは電話で聞くのが最も便利かと考え、電話サポートにも力を入れています」
石井 「最近、Samsungの知名度も上がってきたように思います」
岡田 「ここ数年のいわゆる韓流ブームや、日本での携帯電話の販売によりSamsungというブランドが浸透してきていると思います。SSD自体も、以前は国内メーカーの製品も多かったのですが、最近はほとんどが海外メーカー製です。消費者の目線も、日本製かどうかというより性能や品質などブランドを重視するようになってきました。
このSSD 830は、スマートフォンに代表されるSamsungのブランドイメージに、さらに磨きをかけていけるような製品だと自負しています」
◆
Samsungといえば、世界有数の半導体メーカーであるだけでなく、スマートフォンやテレビなど、総合家電メーカーとしても有名である。PC自作派には、高品質のメモリーメーカーとして以前からお馴染みであろう。
そのSamsungが、コンシューマーをターゲットにしたSSDを販売開始したことは、大きなニュースである。いよいよSSDも本格的に普及が始まるフェーズに突入したことの現われともいえるだろう。
