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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第439回

業界に痕跡を残して消えたメーカー IBMとHPC市場でガチンコ勝負を繰り広げたAmdahl

2017年12月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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IBMより安価なシステムを発売
コスト削減の秘訣は空冷

 Amdahl Corporationの最初の製品であるAmdahl 470 V/6の1号機は1975年6月、NASAのゴダード宇宙飛行センターに納入され、これにミシガン大、テキサスA&M大、マスミューチュアル生命保険株式会社、AT&Tが続いた。

Amdahl 470V/6全景

 Amdahl 470 V/6の内部アーキテクチャーは、幻と消えたAEC/360の影響を非常に強く受けた構造だったらしい。性能的にはIBMのSystem/370 Model 168とちょうど競合する製品であり、System/370の遅れもあって順調に売上を伸ばしていく。

 富士通ミュージアムの説明にもあるが、System/360 Model 165比で約2倍、System/370 Model 168とほぼ同等の性能で、多少安価(おおむね10%ほど安かった)で、しかも設置が簡単(設置コストは5万~25万ドル少なかった)だった。

 この秘訣は、ECLチップを空冷で運用できたことだ。ECLチップそのものは富士通との共同開発であるが、実装が独特だった。7列×6行で42個のECLチップを搭載したボード(これをMCCs:Multi-Chip Carriersと呼ぶ)を複数個、バックプレーンにあたる位置に縦に設置し、MCCs同士はマイクロ同軸ケーブルでつなぐという仕組みだった。

MCCs自身は、Amdahl 470 V/6の場合7列3行の21枚で構成された。それぞれのMCCsの両脇には冷却ファンが搭載されており、水平方向に冷却風を流した

 各々のECLチップには円柱状のヒートシンクが取り付けてあり、これでECLチップの発熱問題に対処した形だ。一方のSystem/370は水冷方式を採用しており、このコストが馬鹿にならなかった。

ECLチップのアップ。円柱状の3枚フィンのヒートシンクにいちいち富士通のロゴが入っているのがさすがである

 1977年の春までにAmdahl Corporationは50台のAmdahl 470 V/6を送り出している。1976年には株式公開にも成功し、実質的な現金準備金を作ることができた。これが可能になったのは、IBMがリース方式を使ってシステムを販売していたのに対し、Amdahl Corporationは手っ取り早く現金を回収するために売り切り方式をとっていたためだ。

 IBMはこれにシステムの値下げで対抗した。とはいえ、Amdahl Corporationの存在はIBMにとって確実に脅威になり始めた。1975年のAmdahl Corporationの売上は1400万ドル未満だったのに対し、1977年の売上は3億2100万ドル、営業利益は4820万ドルに達した。

 もっともIBMの方は、1977年の数字がわからなかったのだが、1975年は144億3000万ドル、1980年には262億1000万ドルの売上を上げており、1977年はおそらく180億~200億ドル程度だったと思われる。要するにAmdahl Corporationの売上はIBMの2%に満たない程度でしかなかった。

 とはいえ競争相手となったAmdahl博士に遠慮するようなIBMではなく、その1977年にはIBM 3033を発表する。これはベクトル演算ユニットを追加して、System/370 Model 168比で1.6~1.8倍処理を高速化したシステムである。

 当時のプレスリリースによれば、購入価格では338万~382万5000ドル、48ヵ月のレンタルでは月額7万7480~8万4400ドルとされた。

 Amdahl Corporationはただちに反撃に出る。同社はAmdahl 470V/7を発表した。このマシンはIBM 3033と比較して3%ほど高価だったが、1.5倍の性能を実現した。結果、このAmdahl 470V/7は1年間で100システムも販売されることになる。さらにラインナップも470V/6や470V/8なども追加されていった。

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