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新発表の洪水!AWS re:Invent 2017レポート 第4回

コンピュート、データベース、アナリスティックの新サービスが目黒押し

AWSのジャシーCEOが名曲のフレーズに込めた思いと信念

2017年11月30日 18時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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用途の多様化にあわせたデータベースサービスの進化

 さて、ハウスバンドが演奏する2曲は、George Michelの「Freedom」だ。re:InventでFreedomというキーワードが出てくると、おおむねベンダーロックインから解放を意味する文脈になる。「この数年、Freedomというキーワードを取り上げているが、決して好きなように曲を作れるという意味だけではない。やっかいなベンダーに縛られないことも自由だ」と語るジャシー氏。自社イベントでもAWSへの対抗心をあらわにしたオラクルからの解放を訴えるデータベースのオファーに話が進む。最近恒例になってきたオラクルへの皮肉をアピールしたジャシー氏は、データベースに関しても数多くの新サービスを披露する。

最近恒例になってきたオラクルへの皮肉もきっちりと

Aurora Multi Master
耐障害性の高い分散型データベースサービス「Amazon Aurora」のマルチマスター版。既存のAuroraは複数の読み出しノード、単一の書き込みノードとう構成だが、Aurora Multi Masterでは全ノードで読み書きが可能。プレビューが同日提供され、現状はシングリージョン・マルチマスターだが、2018年中にはマルチリージョンに対応する予定。
Aurora Serverless
文字通りインスタンスなしで利用できるAurora。オンデマンドで利用でき、キャパシティも自動調整される。課金も秒単位で、使われていないときはシャットダウンされる。現在プレビュー版が公開中。
DynamoDB Global Tables
NoSQL DBサービスであるDynamoDBのマルチマスター、マルチリージョン版。複数のリージョンでテーブルがレプリケーションされ、高い性能と冗長性、低遅延の読み書きがグローバルで担保される。同日GAとなった。
DynamoDB Backup&Restore
データアーカイブやコンプライアンス対応のため、DynamoDBのオンデマンドバックアップに対応。短期的なデータ保護のために、一時的なリストアをサポート。パフォーマンスに影響を与えず、テラバイト規模のバックアップバンドルを作成可能。
Amazon Neptune
フルマネージドなグラフデータベースサービス。Apache TinkerPoP3とW3C RDF GraphModelをサポートし、億単位のリレーションを保管した段階でも、ミリ秒単位のレイテンシにとどまるという。3つのAZで、6つのレプリカを構成し、バックアップやリストアも可能。GremlinやSPARQLを受かった検索も可能になっている。プレビュー版が公開中。

 Auroraのユーザーは昨年対比で3.5倍に拡大しており、スケーラビリティや耐障害性などが評価されている。こうしたデータベースサービスにおいても、「使いたいときに使う」「グローバルで使いたい」「RDB以外を使いたい」などのニーズを見越した強化が行なわれており、単純に品揃えだけではなく、深さと厚みを追求していることがわかる。「データベースの使い方は大きく変わってきている。もはやRDBだけではないし、ユーザーもモダンな使い方を進めている」(ジャシー氏)ということで、時代に合わせたデータベースを今後も展開していくという。

データレイクの充実でアナリステイックの価値を

 3曲目はFoo Fightersの「Congregation」だ。「Do you have blind faith? No false hope」の歌詞にかけて訴えたのは、自身の方向性に確信を持つためのアナリステイックの重要性だ。AWSのサービスの中で、データ分析に必要なデータレイクを構築するために用いられてるのが、ご存じAmazon S3だ。

 高い耐障害性とセキュリティを持ち、さまざまなコントロールが可能なS3はデータレイクに最適。EMRやRedshift、Elastic Searchなどのデータ分析サービスのほか、S3にクエリをかけられるAtehnaやBIツールのQuickSightなども充実しており、昨年はETL処理を可能にするAWS Glueも投入されている。今回はS3とアーカイブサービスであるGlacierに新APIが追加された。

Amazon S3のデータレイクとしての価値

Amazon S3 Select
Amazon S3において、標準SQLを使ってオブジェクトからデータをフィルタできる。GETリクエストのようなアクセス方法が用意される。パフォーマンスも最大400%まで拡張する。AWS SDKとPrestoにも統合できる。
Amazon Glacier Select
アーカイブサービスであるGlacierから特定のコンテンツにアクセス可能。GETリクエストのようなアクセス方法が用意される。AWS SDKとCLIに統合予定で、2018年にはGlacierに対応したAtnenaをリリースする予定。

 こうしたデータ分析を駆使し、顧客中心のイノベーションを進めているのが、大手金融会社のゴールドマンサックスのロイ・ジョセフ氏だ。

ゴールドマンサックス マネージング ディレクターのロイ・ジョセフ氏

 1869年創業の老舗で、3万3000人の社員を擁するゴールドマンサックスだが、すでに社員の4人に1人はエンジニアだという。「彼らは15億行のコード、7000以上のアプリケーションで動かし、20万以上のサーバーをクラウド環境で使っている」とジョセフ氏は語る。

 テクノロジーは金融業界に大きなインパクトをもたらしている。「これからも勝ち続けるためには、強いリスクマネジメント、強いエンジニアリング、強いチャネルが必要になる」と語るジョセフ氏は、個人向けの貸付事業やリスクや投資情報のプラットフォームなど、データ分析をベースした顧客中心のサービスを紹介。また、「Bring Your Own Key」というコンセプトを持ち込むことで、「銀行に金庫を預ける」ようにクラウドの使い勝手とセキュリティを両立できたとアピールする。

 躍動感あふれるハウスバンドの演奏とともに、ユーザーの課題をさらい、新サービスの発表につなげる今回の基調講演。テクノロジーや競合の動向に左右されず、あくまで顧客のニーズからサービスを着実に組み上げる信念がうかがえた。3時間近くに及んだ基調講演の後半は、多くの時間が費やされたML(Machine Learning)とIoT分野の新サービスを取り上げる。

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