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今年は松山!JAWS FESTA 2017レポート 第6回

JAWS-UG高知の片岡幸人さんが語る短期間・低コストなIoTシステム構築

AWS+kintoneの高知発IoT事例は勉強会のスライドがきっかけ

2017年11月24日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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11月4日に開催されたJAWS FESTAにおいて、AWSとkintoneを組み合わせた高知発のIoT事例を紹介したのは、JAWS-UG高知の片岡幸人さん。ふとしたきっかけでやってきた大手メーカーのIoT案件をAWSとkintoneの連携で短期間で実現した事例を披露した。

浄水器大手が高知のIoTエンジニアを見つけるまで

 地方のユーザー事例トラックで登壇した片岡幸人さんは、名古屋のIT企業で務め、27歳で地元の高知にUターン。役場の職員やIT企業の共同経営を経て、個人事業のソフトビレッジとダンクソフトで複業しているという。「前職からIoTの事業を個人でやっているソフトビレッジで引き取った形。だから、IoTにはこだわりがある」(片岡さん)。

ソフトビレッジとダンクソフトの複業をしている高知の片岡幸人さん

 今回の事例の始まりは整水器で高いシェアを誇る日本トリムが、高知県・南国市・JA南国市・高知大学と進める「還元野菜プロジェクト」において、高知県南国市に電解水設備を導入したオランダ式園芸用大型ハウスが建設されたことだ。ここで用いられる還元野菜整水器の制御のシステム構築に片岡さんが関わることになったという。

 面白いのは、なぜ日本トリム側が高知の片岡さんを見つけたか? 問い合わせは片岡さんの前職であるシティネットに来たのだが、どうやらJAWS-UG佐賀で登壇したときの片岡さんのスライドを見つけたらしい。「地元の高知でIoTやれる人として私の名前が引っかかったらしい。でも、所属の更新を忘れてて、前職のシティネットに問い合わせが行ったようだ」(片岡さん)。オープンできる情報はブログやスライドとして公開しておくと、こういう大きい仕事につながるという好例だ。

 顧客の要件は「機器を遠隔制御できる」「運用機器・効果測定センサー情報の収集」「営農者・機器メーカーがデータを共用」「低コストで開発」など。特に課題になったのは、リテラシが決して高くない営農者にも使えることと、低コストで開発することだったが、「クラウドを使えば、専用ハードに比べて、圧倒的にコストを落とせる」とのことで迅速にスタートした。

kintoneとAWSので開発のスピードアップやコスト削減に

 開発・運用体制としては片岡さんが以前所属していたシティネットが開発側のとりまとめ、AWSやkintone、Rapsberry Pi(ラズパイ)などの開発などを担当。高知在住の片岡さんはダンクソフトの地元エンジニアとして、ラズパイとセンサーの接続、kintoneのカスタマイズを行なった。コンセプトはサーバーレス、APIファーストで、機器や拠点増にも柔軟に対応できることを目指した。

 センサーシステムとしては圃場の各センサーから、I2C経由で電流・電圧データをラズパイに取り込み、AWS IoTに流し込む。「センサーって5分間隔くらいしかデータをとらないので、サーバーを立ち上げっぱなしにしておくのはもったいない」とのことで、Lambda経由でAmazon S3とDynamoDBにデータを保管。一方、分析したい場合はDynamoDBからkintoneにデータを取り出し、表示させているという。

システム構成

 kintone側から機器制御に関してはMQTTを使い、AWS IoTがブローカーとして、ラズパイにコマンドを送信しつつ、ログ記録のためのLambdaからAmazon S3にデータを送る。制御の結果はAWS IoTを介さずにkintoneに送る。kintone側は定期的にリロードし、タイムアウトしたら、再度制御することにした。「最初は怖がって30秒とか話していたのですが、2秒程度でできました」(片岡さん)。ちなみにAWS IoTのMQTT周りの操作に関しては、「AWS IoTのMQTT over WebSocketにHTMLから接続してみた」など、Developers.IOのリソースが非常に役立ったという。

機器制御の構成。kintoneからAWS IoT経由で制御し、結果は直接戻す

 なぜkintoneか? 片岡さんは「とにかく操作が簡単で、API経由で遠隔操作が可能。共同での開発がしやすく、お客様にもすぐ見てもらえるのもよい」と語る。もちろん、AWSのような他のクラウドサービスと柔軟にAPI連携できるのも大きく、フロントエンドはkintone、バックエンドはAWSといった使い分けで、開発のスピードアップやコスト削減まが実現したという。

 最後、片岡さんは「クラウドを使って、APIでつないでしまえば、地方でも仕事につながります。まずなによりやることです」と語り、こうした情報を集めるためにはコミュニティの参加が重要だとアピール。「時間がない!時間がない!」と話していた片岡さんだったが、なぜか5分前にセッションを終了した。おつかれさまでした。

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