コンパスのミリタリーな単位
2回に渡ってSUUNTOのアウトドアウォッチ「Traverse ALPHA」(以下「ALPHA」)のご紹介をしてきましたが、ラストの今回はいかにもミリタリーな機能とスマホ対応についてです。
ALPHAは米軍での採用を目指して開発されたとのことで、あれこれとミリタリー系な機能が搭載されています。そのひとつがコンパスの表示単位。3つの表示モードがあり、うち2つは一般的なんですが、残るひとつがかなり特殊で、普通はなにコレ? ってなるんじゃないかと思います。
まずは一番わかりやすい8方位。東西南北に加えて北東・北西・南東・南西の8方向を表示するモードです。表記は英語で、真ん中にNSEW、NE・NW・SE・SWが大きく表示されます。
もうひとつは360度の角度表記。北を0度として時計回りに360度で表示するモードです。ぴったり東が90度、南が180度、西が270度になり、角度は1度単位で表示されます。戦争映画や漫画、ゲームなどではおなじみの表記法で、航空機ではヘディング090、船では方位2-7-0のように表わされたりします。一般的にも使われますが、ちょっとミリタリーな雰囲気ですよね。
360度表記は空港の滑走路でも使われています。滑走路の両端に数字が書かれているのをご存知でしょうか。たとえば羽田空港。
A滑走路 34Lと16R
B滑走路 04と22
C滑走路 34Rと16L
D滑走路 05と23
これは滑走路の向きを表わす角度で、360度の上2桁が書かれているのです。A滑走路なら340度と160度ですね。数字が2つあるのは両方向から見るため。南から見ると340度、北から見ると160度です。AとCが平行になっているので数字だけではどちらの滑走路なのかがわからないので、LとRで左右を表わしています。Aが西にあるので、南から見るとL、北から見るとRになります。
話が脱線してしまいましたが、残るひとつの単位はさらにミリタリーテイストです。ミルという単位で、北を0として全周を6400等分して表記します。6400等分ということは1ミルは360度/6400で0.05625度。こんな中途半端な数字になんの意味があるのかって思うかもしれませんが、実はこれが便利な数字で、これを使うと目標物までの大きさがわかっているときは目標物までの距離がわかり、距離がわかっているときは大きさがわかるのです。
1ミルは元々三角関数の角度単位である1ミリラジアンから派生した単位です。1ラジアンは180/πで約57.296度。1ミリラジアンは約0.057296度なので1ミルとは少し違いますが、キリがいいので6400で割って1ミルとしています。ミルは第二次世界大戦のころの旧ドイツ軍ではシュトリヒと呼ばれていました。
三角関数なんていうと数学アレルギーな人はゾワゾワしてしまうかもしれませんが、そんなに難しい話ではありません。目標物の大きさと距離を三角関数で表わすと、sinθ=目標物の大きさ/距離になります。たとえば目標物の左右の大きさが1メートルで左右の角度が1ミルだった場合、sin(1ミル)=1メートル/距離(メートル)なので、距離を知りたいときは距離=1/sin(1ミル)となります。
このsin(1ミル)は度に直すとsin(0.05625度)で、電卓で計算すると約0.000982です。その時の距離は1/0.000982=1018.3m。誤差はあるもののほぼ1000mで、つまり1ミルは1000m先の1mの大きさということになります。人や戦車の大きさはだいたいわかっているので、双眼鏡などで見たときに目標までの距離がわかるというわけです。また砲撃の際の方向決めにも使われます。ちなみに1ミリラジアンで計算すると当然さらに正確になって、sinθは約0.00099999983、距離約1000.00017mです。
三角関数やsin、cos、tanを習ったとき、これで教えてくれたらもうちょっと楽に理解できたのになぁ。πとか三角関数とかってなんだか不思議ですね。
バックライトは暗視ゴーグル対応
難しい話になってしまったので、次の機能は見た目でわかる超簡単なモノ。ライトです。
腕時計のバックライトといえば普通は白いんですが、このALPHAでは白と赤が選べ、赤がデフォルトになっています。白い光だと時計は見やすいですが、眩しいぶんそのあと目が暗さに慣れるのに時間がかかってしまうので、すぐに行動できるようになっているみたいです。星を見るときなんかも便利ですね。
明るさの調節は5~100%の範囲ででき、初期設定は50%。マニュアルに、赤で10%まで落とすと暗視ゴーグルを通しても画面を見ることができると書かれているあたりがミリオタ心をくすぐります。古い暗視ゴーグルで明るい光を見ると増幅管に残像が残ってしまったりするし、新し目なやつでは自動的に感度が下げられて見えなくなってしまうので、それを避けるための機能です。ライトボタンを長押しすると白い光を100%で照射するフラッシュライトになったりもします。
自動発砲検知といういかにもミリタリーなニオイのする機能があるんですが、これはハンティング用でした。アクティビティーデータの記録中に発砲すると射撃位置と総射撃数が記録されます。どこらへんに獲物がいたっていうのがわかるというわけですが、ハンティングなんてしないんで使い道がありません。もしかしてサバゲーで使えるかもと思ってエアガンを撃ってみましたが反応しませんでした。加速度センサーでチェックしてるんですが、まぁエアガン程度の反動に反応してたら誤動作しまくっちゃいますよね。
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