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パイロットウォッチに求められる「厳しい環境」とはどんな意味?

レッドブル・エアレース世界一、室屋義秀パイロットに聞く最大負荷10Gの世界

2017年11月03日 15時00分更新

文● 中山 智 編集●飯島恵里子/ASCII

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室屋氏が優勝したレッドブル・エアレース 2017第8戦インディアナポリス大会の模様。撮影:Chris Tedesco/Red Bull Content Pool

重力加速度 最大負荷10Gってどんな環境?

 飛行機を使った大会は、大きく分けて「正確な操縦とタイム」を競うエアレースと、「審判が操作技術を判定」するエアロバティックスの2種類がある。まったく同じというわけではないが、スケート競技にスピードスケートとフィギュアスケートのふたつがあるのと近い。室屋義秀氏が2017年の総合優勝を勝ち取ったレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは前者のレース形式。このレースのどこに室屋氏が魅力を感じているか質問したところ「タイムで勝敗が決まるのでわかりやすくシンプル」と答えている。

 室屋氏がパイロットを目指したきっかけは「純粋に飛行機に乗りたいという気持ちがあったが、さらに空は広いのになんで飛行機はまっすぐ飛んでいるんだろうと。もっと自由に飛べるのでは?」という思いから、操縦技術世界一を目指して訓練をスタートしている。

 タイムレースと曲技飛行ではかなり性格が違うようにも思えるが、室屋氏は「飛行機の操縦技術世界一を競うという点では同じ」とのこと。あくまで自分の技術を高めるためのひとつの方法がレッドブル・エアレースでの参戦であり、その技術の追求の結果のひとつが今回の年間優勝というわけだ。

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ 2017 第7戦 ラウジッツ大会のゴースト映像。室屋氏が50.451秒でゴールし3勝目を記録した。垂直ターンの重力加速度最大負荷は10Gにもなるという

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップとは?

 レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップは「空のF-1」とも言われる、レース専用の単発プロペラ機を使ったレース。コースは全長5〜6kmで、レースエリア上に配置された高さ25mのエアゲート(空気で膨らませたパイロン)を規定の順番で通過し、最大速度は時速370km、重力加速度の最大負荷は10Gにもなる。

どんなスピードで操縦しているのか、EXTRA 300L内で操縦桿を握る室屋氏に話を聞いた。「Gをかけないと曲がっていかないが、エネルギーロスを防ぐために無駄なGはかけない」と室屋氏

 数字だけ聞いてもピンとこないが、10Gがかかると重さは約10倍にもなる。人間の頭部が約5kgとしても10Gがかかると、約50kgの重さになる計算だ。さすがに規定で10Gを超える時間が0.6秒以上になると、そのレースは無効となるが操縦中はすべてが5倍から10倍近い重さになる計算だ。

 その厳しい操縦環境で、時速300kmを越えるスピードのまま規定のエアゲートを通過するが、エアゲートとエアゲートの幅は13mしかない。使用する機体は翼長7.44mだが、タイム短縮のために時には斜めから進入する場合もあり、翼とエアゲートの間がわずか数センチになることも。すべてがギリギリのところでレースを行う、まさに室屋氏が言う「操縦技術世界一」を決めるレースだ。

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