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ソニーのBluetoothイヤフォン「WI-1000X」はひとつ到達点といえる完成度

2017年10月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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強い消音効果を生むフィードバック方式

 まずノイズキャンセルの仕組みが凝っていて、WI-1000Xは「フィードフォワード」方式と「フィードバック」方式を併用する。ソニーはこれを「デュアルセンサーテクノロジー」と呼んでいるが、要するに集音用のマイクが2つ入っているのだ。特にフィードバック方式を採用したのが見どころ。

 ハウジングの外側に集音マイクを置くフィードフォワード方式に対し、フィードバック方式はドライバーユニットと耳の間にマイクを置く。集音する位置が耳に近いので効果も高いが、今まではイヤーカップの大きなオーバーヘッドバンド型のヘッドフォンでしか見られなかった。

 なぜなら、カナル型イヤフォンでやろうとすれば、ドライバーからノズル先端までの間の、わずかな空間にマイクを仕掛けなければならないからだ。素人考えでも、それは相当に難しいことはわかる。結果としてのノイズキャンセルシステムの性能がどれくらいかというと、これにはまったく文句がない。

ソニーが公開しているカットモデルによれば、フィードバックマイクは右側膨らみの中に収まっているらしい

 密閉カナル型は耳栓のパッシブな遮音が効く。なぜノイズキャンセルが必要なのかと思われるかもしれないが、どう密閉しても、低域の雑音は透過してしまう。そこをバッサリやってくれるところにノイズキャンセルのメリットがある。

 ノイズが増したり、音質に不自然なところがあればいらないということになるが、WI-1000Xがいいのは、そうした雑なところが感じられないところ。加えておもしろいのが、咀嚼音や血流音のような生体ノイズも低減されること。結果として耳栓をしているという閉塞感が薄く、長時間使っても快適なイヤフォンに仕上がっている。消音効果の高さはもちろんだが、特に騒音環境下でなくても使いたいくらいだ。

リスナーの状態を検知し自動制御

 快適性をさらに後押しするのが「アダプティブサウンドコントロール」と呼ばれる自動制御機能だ。「止まっている」「歩いている」「走っている」「乗り物に乗っている」の4パターンでリスナーの状態を認識し、それぞれに合わせたモードへ自動で切り替わる。

 以前からソニーのノイズキャンセル搭載機には、環境音を解析して最適な効果に切り替える「フルオートAIノイズキャンセリング機能」が付いていたが、加えてユーザーの動きまでも検知するようになったわけである。

 要となるのが「Headphones Connect」というスマートフォン用のアプリ。これでアダプティブサウンドコントロールのモードや、細かい設定を調整できる。また、気圧やリスナーの装着状態によって効果を最適化する「NCオプティマイザー」も、アプリから操作できる。

iOS版Headphones Connectの画面。リスナーの状態はスマートフォンの加速度センサーで検知する

アンビエントサウンドのオンオフはイヤフォン本体側でも可能

 具体的にアダプティブサウンドコントロールがやるのは、再生音に外音をミックスする「アンビエントサウンドモード」の設定を切り替えること。乗り物に乗っている場合は、外音を完全に遮断するが、止まっていたり歩いていたり走っていたりする場合は、各々の状況に合わせた音量で積極的に外音を取り込む。

 取り込む外音の特性も、状況によって切り替わる。おそらくオフィスで座っているケースを想定しているのだろう、「止まっている」場合は、人の声が聞こえやすい特性に調整した「ボイスフォーカス」モードに切り替わるのは芸が細かい。

 「せっかくノイキャンで相殺した外音を取り込んでは意味ないではないか」と思われるかもしれないが、周囲への注意が必要な状況では、今までノイズキャンセルをオフにしたり、ヘッドフォンを外したりしてきた。そうした余計な操作を省いて快適性を増すと同時に、音を途切れなく聞き続けられるという点で、モバイルオーディオの領域を拡張する技術とも言える。

アプリの同時機能もある。「5バンドEQ」、サラウンドエフェクトの「VPT」、音場のセンターを設定する「サウンドポジションコントロール」、接続コーデックを切り替える「音質モード」、「DSEE HX」の設定、そして着信バイブレーションのオンオフの切り替えができる

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