x86系プロセッサーに切り替え
これが不評でついに倒産
ここまで再編しても業績は回復しなかった。ちょうど1993年から2004年までの同社の有価証券報告書が見つかったので、ここから数字をピックアップすると下表のような具合だ。
SGIの1993年から2004年の収支 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
会計年度 | 売上 | 営業利益 | 純利益 | 従業員数 | ||
1993年 | 11億3290万ドル | 1億1200万ドル | 7350万ドル | 4023人 | ||
1994年 | 15億3780万ドル | 1億9380万ドル | 1億4180万ドル | 4707人 | ||
1995年 | 22億2830万ドル | 3億730万ドル | 2億2490万ドル | 6308人 | ||
1996年 | 29億2130万ドル | 1億7440万ドル | 1億1500万ドル | 1万485人 | ||
1997年 | 36億6260万ドル | 1億1190万ドル | 7860万ドル | 1万930人 | ||
1998年 | 31億60万ドル | -5億9610万ドル | -4億5960万ドル | 1万286人 | ||
1999年 | 27億4900万ドル | -1億2710万ドル | 5380万ドル | 9191人 | ||
2000年 | 23億3110万ドル | -3億6170万ドル | -8億2950万ドル | 6726人 | ||
2001年 | 18億5450万ドル | -4億4810万ドル | -4億9300万ドル | 5956人 | ||
2002年 | 13億4140万ドル | -1億70万ドル | -4630万ドル | 4443人 | ||
2003年 | 8億9660万ドル | -1億3720万ドル | -1億2970万ドル | 3714人 | ||
2004年 | 8億4200万ドル | -6520万ドル | -4580万ドル | 2655人 |
金額は大雑把に100万ドル=1億円と換算するとなんとなくわかりやすいと思う。1997年をピークに確実に毎年売上が落ち、しかも赤字をバンバン垂れ流し、かつ従業員も順調(?)に減るという、見事な負のスパイラルに落ち込んでいるのがわかる。
CRAYを売却し、再び従来の1万~100万ドルの製品ラインに戻ったとはいえ、MIPSの切り離しなどもあって弱体化は否めない。これもありSGIはまずローエンドをIA-32に置き換える。
Visual Workstationと名づけられたこのシリーズは、1~4PのPentium II/IIIを搭載した構成で、ただしチップセットなどは独自の構成で、ここにCobaltというグラフィックチップを組み合わせていた。
画像の出典は、“Dadga's Web”
OSはLinuxのほか、マイクロソフトと共同でWindows NT for Visual Workstationというスペシャル版のWindows NTが提供されている。問題はハイエンド向けで、SGIはここにItaniumを採用したAltixシリーズを2003年から投入した。
このAltixシリーズは、同社が2000年から投入してきたOriginシリーズの後継となるものだったが、Originシリーズは最大512プロセッサー構成が可能なNUMA方式のシステムで、現実問題として当時のx86ではまだこれを構築するのは大変難しかった。そもそも64bit対応になってなかったわけで、このAltixシリーズが同社にとどめを刺したとまで言われるほど評判が悪かった。
1990年代には画期的だった同社のグラフィックスも、2000年に入るとPC向けGPUの急速な高性能化や高機能化が進んだことでそれほど優位性がなくなっており、またIris Graphicsを前提にしたさまざまツール類も、この頃にはマルチプラットフォーム化して、MacintoshやWindows上で動くものが少なくなかった。
そう考えると、Itanium「だけ」が悪いわけではないとは思うのだが、弱った体力にとどめを刺した感は否めない。このあと同社はXeonベースに切り替えるが、残念ながらその頃にはOriginシリーズで得ていたシェアを大きく失っていた。
もっともSGIの直接的な衰退は、エントリー向けのO2/O2+の投入が遅れたことだという議論もある。180~350MHz駆動のR5000/RM7000を搭載したO2は1996年末に投入されたが、本来これは1995年上旬頃を予定していた製品で、18ヵ月近く遅れている。
これが遅れている間にPCが低価格向け市場を席巻してしまい、シェアを落としたというものだ。ただ筆者からすると、O2が予定通り投入されていたとしても、結末はあまり変わらなかった気がする。
SGIは2005年11月、ニューヨーク証券取引所から上場廃止処分を受ける。そして2006年2月には、年内に同社の現金が底を付く可能性があることを発表。最終的に2006年5月に会社更生法の適用を受ける。
ここからさらに3年ほど同社は再建に向け奔走する。主な市場はHPC向けであったが、2008年には可視化システムの市場に再参入を試みる。ただこうした努力は結果に結びつかず、2009年4月1日に再び会社更生法を申請。同社及び子会社のすべての資産は、Rackable Systemsが買収した。買収金額は当初2500万ドルとされたが、最終的には4250万ドルで決着している。
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